続いて屋形船は次の撮影ポイント、海上滑走路「D滑走路」横へ移動。ここでは、D滑走路上の駐機と、頭上上空を大きく横切って左側の滑走路へ着陸する迫力のシーンを狙うことができる。数分間隔で飛来する大型旅客機。そんな中、ひときわ大きな機影が近付いて来るのが見えた。そう、耐用年数を過ぎた機体が次々と退役し、今や希少な機体となってしまったB747、通称「ジャンボジェット」だ。にわかに活気付く船内。参加者のレンズがいっせいに上空を狙う。まさしく対空砲列。やっぱり、みんなジャンボが大好きなのだ。機種の柔らかな膨らみは白鳥のように美しく、大きな翼と2機ずつのパワフルな双発エンジンは、今でも大型旅客機の象徴として、私たちの脳幹に強く刻まれている。
「実はB747の運行があることは知っていて、今回はその時間に合わせてスポットを移動したんです。ただ、機材の運用は変更されることも多いので、みなさんにはあえて黙っていました。でも、飛んでくれて良かった。いいサプライズになりましたね(笑)」と中野氏。
数分おきに機体が飛来するので、シャッターチャンスが豊富で楽しい |
航行灯の点灯はいいアクセントになる。だが、点滅しているため、キャッチするのは難しい |
鈍曇りで光が回らないため、色味に欠けるのが辛いところ |
見よ、B747の雄姿! しかし残念なことに、2014年3月10日で運用終了の予定 |
屋形船での撮影を終えた後は、再びバスに乗り込んで羽田空港へ。ここで遅めの昼食をとった後、夕刻の展望デッキ撮影に臨む。この日は曇天ということもあり、16時頃にはすっかりブルーアワー。滑走路のビーコンや旅客機の夜間航行灯が、次第に色付いていく。レンズを支える手は冷たいけれど、そのぶん雰囲気のある画が期待できそうだ。
参加者の力作を中野氏が講評
かくして、撮影会は無事終了。
各自が本日の自信作を各2点を選出、プロジェクターに投影しながらの中野氏の講評が行われた。中野氏は作品1点1点につき、丁寧に良い点と改善点を指摘。特に飛行機のフォルムが美しく見えるシャッターチャンスを待つこと、そして、より効果的なフレーミング(構図)を考えることというアドバイスが多かった(筆者も同様の指摘をいただいた)。しかしながら、参加者の約半数が初めて飛行機を撮ったとはとても思えない力作揃いであったことを書き添えておきたい。
「迫力のある構図。ただ、主翼と垂直尾翼が交差しているのが惜しい。もう数秒待てば、主翼と垂直尾翼が分離します」(中野氏) |
「鵜にピントを持ってきましたね。でも、フレーミングのせいで主張が弱い。そこで…」(中野氏) |
「こうトリミングした方がいい。欲をいえば、鵜がもうちょっと後ろだといいですね」(中野氏) |
参加された方に感想を伺った。
「初めてカメラを買って応募したら、運良く当たりました。このツアーを選んだのは、まさか当たると思っていなかったので、好きな飛行機がいいなと軽い気持ちで(笑)。でも、屋形船で沖に停まってデッキで撮影なんて機会がないので楽しかったです!」(女性・新潟から参加)
「伊丹空港の近くで育ったので、ずっと飛行機が身近な存在でした。また中野先生の写真も好きで、先生に飛行機のちゃんとした撮り方を教えてほしかったので、来てよかった。今日教えていただいたことを、また伊丹空港で活かしたいと思います」(女性・大阪から参加)
「飛行機が好きで、旅客機メインで撮影しています。ホームグラウンドは新千歳空港。自衛隊があるので戦闘機も撮れるのですが、やっぱり旅客機が好きですね。今回は北海道では撮れない機種がたくさん撮れて楽しかったです」(男性・北海道から参加)
ファインダーからはみ出るほどの大きさで頭上を通り過ぎる飛行機の迫力、船体の揺れを踏んばって切ったシャッター、薄暮の展望デッキから眺めた美しい航空灯火、中野先生とニコンスタッフの丁寧なアドバイス。そのどれもが、すべての参加者にとってかけがえのない経験となったに違いない。
では最後に、今回私たちと一緒に撮影した中野氏の作品をご紹介しよう。計算された構図と適確なシャッタータイミング、精緻なピントなど見どころが満載。大いに唸っていただきたい。