産業革新機構(以下INCJ)とみずほ銀行は8日、日本発の医療機器技術の商業化成功モデルの構築を目的とするMedVenture Partners(以下MPI)を設立し、同該会社が運営する医療機器インキュベーションファンド(「MPI-1号投資事業有限責任組合」)に60億円を上限とする出資を行うことを決定した。

現状の日本においては、臨床ニーズ及び市場ニーズを踏まえ事業化に向けて早期に案件を絞り込んでいくプロセスを担う事業主体及び経営人材が極めて少なく、かかるプロセスに必要な資金が不足している状況が存在しているという。また、医療機器に関する優れた技術シーズがあっても臨床ニーズ及び市場ニーズを把握できず事業化できないベンチャー企業や初期の段階で資金の不足により事業化が断念された事例などが存在していて、アイデアが生まれる大学、研究機関と医療機器メーカーが期待する医療機器ニーズ及び事業ステージにギャップが存在しているという。

このように医療機器分野における日本の大学及び中小企業等が保有する技術シーズを、臨床ニーズ及び市場ニーズを踏まえ、事業性評価、事業化デザイン、初期開発等の医療機器インキュベーションを行い、国内外のインキュベーション機関を活用して商業化の道筋を整え、医療機器メーカー等に売却することは我が国の医療機器産業の競争力を高めていく上で重要な課題としている。

こうした課題を踏まえMPIでは、医療機器開発プロジェクトを選定し、同該選定した各開発プロジェクトのプロジェクトマネジメントを行い、開発プロジェクトごとに医療機器メーカーや医療機器ベンチャーへ売却することを想定しているという。また、プロジェクトごとに知財、薬事、試作品製作、非臨床試験などにおいて国内外の外部専門家を活用するとともに、プロジェクトによっては国内外のインキュベーション機関(大学などの付属機関、民間企業または研究機関)と連携していく予定としている。

同投資は、我が国の産・学・官が密接に連携し医療機器分野における日本の大学・研究機関及び中小企業等が保有する技術シーズを、医療機器メーカーへ橋渡しを行い、商業化の道筋を整えることを目指すという。短期的には日本発の医療機器技術の商業化成功モデルの構築に注力し、中期的には日本における医療機器のインキュベーション環境の整備、そして長期的には日本の医療機器の産業基盤の発展に寄与する効果も狙うとしている。

INCJは、MPI及び同該ファンドに対して出資を行うとともに、MPIに対して社外取締役などの派遣を通じたサポートを行うという。また、日本の医療機器産業に対する資金供給の呼び水としての資金提供にとどまらず、同該ファンドを通じて革新的な医療機器技術の事業化を促進する事業環境の整備など日本のライフサイエンス産業の活性化に貢献していくとしている。

みずほ銀行は、同該ファンドを通じて医療機器開発にリスクマネーを供給し、次世代の成長産業である医療機器産業の育成に貢献していくとしている。