2013年10月の国内主要量販店におけるデジタル製品の販売実績が、2年4カ月ぶりにプラスに転じた。全国23社の大手家電量販店2,397店舗のPOSデータを集計しているBCNによると、デジタル製品の販売実績を示すBCN指数では、2013年10月には、前年同月比0.5%増と、微増ながらも前年実績を上回った。

前回前年実績を上回ったのは、2011年7月のこと。地上デジタル放送への完全移行で、薄型テレビの駆け込み需要があって以来のことだ。

では、なぜ2013年10月に、久しぶりに販売実績がプラスに転じたのだろうか。それにはいくつかの理由がある。

BCN指数の推移。2年4カ月ぶりにプラス

4Kテレビが平均販売単価を底上げ

ひとつは、薄型テレビが販売金額でいよいよ前年実績を上回った点だ。台数ベースでは、前年同月比11.1%減と、依然として2桁台のマイナス成長だったが、販売金額では前年同月比3.3%増となった。

昨年9月以降、平均単価が前年実績を上回る形で推移していたが、それが今年10月まで持続したのが要因だといえよう。平均単価上昇の理由のひとつが、40型以上の構成比が高まり、2013年10月には32.3%とほぼ3分の1を占めたことだ。これは同社が調査を開始して以来、過去最高の構成比になるという。また、大画面化の進展とともに、4Kテレビの需要が拡大。今年6月以降、50型以上の販売金額構成比の20%以上を4Kテレビが占めている。

薄型テレビの販売台数と平均単価の推移

40型以上の構成比が過去最高

4Kテレビ市場が拡大中

2つめは、PCの販売金額が伸びてきた点だ。ノートPCの販売金額は、2012年3月以来のプラス成長となる前年同月比4.0%増の実績となり、マイナス成長のままとなっているデスクトップPCも回復の兆しが見えてきたという。

だが、タブレットの販売実績はプラス成長ではあるものの、それまで2倍以上の成長をみせていたものが、2013年10月には前年同月比18%増に鈍化。「市場の伸びに陰りが見え始めている」としている。

3つめのポイントは、レコーダーが販売金額ベースで、ようやく前年並みまで回復してきたことだ。今年9月までは2桁台の前年割れとなっていたものが、今年10月の販売実績では前年同月比2.2%減まで巻き返している。

レコーダーの販売台数と販売金額の推移

レンズ交換型カメラは販売好調、単価上昇

そして、デジタル市場全体の約10%の市場構成比を持つデジタルカメラの販売金額が回復基調にある点も見逃せない要素だ。

レンズ交換型(一眼カメラ)は、依然として好調な販売実績を維持しており、2013年10月実績で販売実績は27.3%増。販売台数でも19.0%増と2桁増となっている。レンズ交換型の販売台数は、過去最高の水準を維持しており、さらに平均単価も上昇傾向にあるという。

また、レンズ交換型では、ミラーレスカメラの人気も高く、10月実績では販売台数で38.8%、販売金額では28.6%を占めた。BCNでは、販売台数においては、一眼カメラ全体の4割程度を今後もミラーレスが占めるだろうと予測している。

レンズ交換型カメラが好調維持、単価も上昇傾向

レンズ交換型の販売台数・金額におけるミラーレスカメラの構成比

また、これまで低迷していた一体型(コンパクトデジカメ)も回復基調にある。2013年10月の販売実績では、販売金額ベースで前年同月比8.3%減と、依然として前年割れとなっているが、レコーダー同様、今年9月まで2桁台の前年割れであったことに比較すると、明らかに回復基調にある。この背景には、より高い価格帯へと売れ筋モデルがシフトし、平均単価が上昇しているという市場構造の変化がある。

コンパクトデジカメはスマホとの性能差が明確な高級機志向に

このようにそれぞれの製品ごとの動きを俯瞰してみると、販売金額ベースでは、いくつかの分野で、徐々に回復基調に転じるといった動きがみられている。

ただし、レンズ交換式カメラの分野を除いて、どの領域においても販売台数では前年実績を大きく下回っているのが現状であり、今回の動きを捉えて、市場が回復したと断言するにはまだ早いというのが本音といえよう。

だが、長いトンネルの出口は少しずつ見えようとしているのかもしれない。そうした兆しをわずかながらも感じることができる調査結果となった。