NTTドコモでは、学生の生活圏内におけるエリア改善にも力を入れている。早稲田大学(東京都新宿区)を例にとると、9月に大学構内の複数カ所に同社のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」の電波を増強させる屋内基地局を設置したという。また、11月2日および3日に開催された「早稲田祭2013」では、電波の輻輳(ふくそう)対策として移動基地局車が稼働。12月からは、早稲田大学の最寄り駅のひとつである高田馬場駅周辺エリアを受信時最大150Mbpsに対応させるとしている。本稿では、こうしたNTTドコモのネットワークへの取り組みをレポートするとともに、早稲田大学キャンパス内で計測した通信速度の実測値なども合わせて紹介していきたい。
移動基地局車がフル稼働
筆者は3日、早稲田祭2013を訪れた。早稲田祭は、都内でも有数の規模を誇る学園祭である。公式ホームページによれば、来場者は2日間で約16万人に上るという。NTTドコモでは今回、会期中最も人で混雑すると思われる大隈講堂の正面に移動基地局車を設置し、2日間フル稼働させた。これにより、来場したドコモユーザーは快適なLTEネットワークでスマホを利用することができた。また、臨時Wi-Fiスポットを設け、無料でdocomo Wi-Fiスポットを利用できるようにした。
現地では、NTTドコモ新宿支店 ネットワーク部のスタッフに話をうかがうことができた。今回、設置された移動基地局車は半径30m相当のエリアをカバーできるもの。スペックとしては街中に設置されている大型の固定基地局と同等だという。移動基地局車には光ケーブル回線を引いて使用。最長で10m以上になる2本のアンテナを伸ばし、1本は大隈講堂方面に、もう1本は逆の方角にある大隈重信の銅像方面に向けて電波を吹かせたとのこと。
NTTドコモとしても、学園祭に移動基地局車を設置するのは今回が初めての試みだった。きっかけは、早稲田大学の学生からの要望に応えるためだという。大隈講堂前で行われているイベントの盛り上がりが最高潮に達する頃、手持ちのスマートフォンで通信速度を計測してみた。するとLTEでは下り25~30Mbps、Wi-Fiでは下り15Mbps前後の実測値が確認できた。また、同じ時間帯に大隈重信の銅像前でも計測。その結果、LTEでは下りが30Mbps弱、Wi-Fiでは下りが30Mbps超だった。
数多くの利用者が集中的にトラフィックを利用することで、通常行えるはずの通信が行えなくなることがある。これが輻輳と呼ばれる状態だ。今回、NTTドコモでは移動基地局車を稼働させることにより、LTEを利用できるユーザーの数を増やすとともに、臨時Wi-Fiスポット設置により、利用者のトラフィックの一部をWi-Fi回線へ逃すことに成功した。これらの対策により、混雑のピーク時にも関わらずLTE、Wi-Fiともに充分すぎる通信速度が確保できていたわけだ。
今回、こうした取り組みをPRするために、同社ではSNSを活用した。NTTドコモのTwitter公式アカウントでは、ハッシュタグ「#早稲田祭」を付けたツイートでユーザーにdocomo Wi-Fiスポットの利用などを呼びかけた。またFacebook公式アカウントでも同様にアナウンスした。その結果、関係者やイベント参加者などにリツイートされるなどして、効果的に情報を拡散させることができたという。スタッフのひとりは「ユーザー様から、"だから繋がるんだ"といった喜びの声をいただいている」と手応えを語っていた。
校舎内には屋内基地局を設置
NTTドコモでは現在、早稲田大学をはじめ、慶応大学など、日本全国の大学キャンパス内に屋内基地局を設置し、LTEサービス「Xi」エリアを拡大する作業を進めている。LTEが使える大学は本原稿執筆時点で727大学にも及び、早稲田大学においては、9月下旬に屋内基地局の設置工事が完了したという。そこで、実際に校舎内に足を運んで通信速度を確かめてみることにした。すると8号館の1Fラウンジでは下り33Mbps超、15号館の地階では下り44Mbps超の快適すぎるLTE通信が利用できた。
学園祭ではイベントスタッフおよび来場者の多くがスマートフォンを使い、LINEやSkype、Twitterなどのツールをフル活用してリアルタイムで情報のやりとりを行っていた。2日で約16万人が来場するというこの巨大イベントにおいて、利用されるトラフィックの量ははかり知れないものがある。校内にLTEの屋内基地局を設置し、イベントスペース近くには臨時で移動基地局車を出動させた今回のNTTドコモの取り組みは注目に値するものだった。同社では利用者が快適にネットワークを使えるよう、今後ともこうした施策を継続的に続けていく考えだという。