初等教育で1人1台の初事例
日本マイクロソフトと立命館小学校は5日、記者会見を開き、2013年11月から立命館小学校の4年生と5年生の全員(クラス30名×4クラス×2学年、合計240台)のSurface RTを導入し、ICT(Information and Communication Technology)授業に役立てると発表した。全学年ではないものの「日本で1人1台のSurfaceを小学校で導入」したのは初の取り組みとなる。
導入したのは2013年10月発表の新型「Surface 2」ではなく、2013年3月に日本で発売されている初代「Surface RT」だ。
もともと立命館小学校では、21世紀型スキルの育成に向けて「Tools for Woiking」というスローガンを掲げ、「情報を使いこなす力と情報通信リテラシーの育成」を行っている。また、全教室に電子黒板やプロジェクターを設置するロボティックス学習などの取り組みも、2006年の開校から行ってきた。同校の浮田恭子校長は「ICT教育によって、子どもたちの未来を生きる力を育成したい」と話す。
そのICT教育をさらに進めるため、4年生と5年生の全員が、Surface RTを教材として購入して利用する(費用は保護者が支払う)。導入が11月になったのは、検討上の理由と納入完了・取り組みスタートがずれ込んだだけとのことだが、事前に学内ネットワーク環境の強化も行っている。6年生に関しては、すでに学校で購入しているタブレットPCなどで補完するという。
「1年生の時点で、小学校で使うすべての教材が入っている機器を」という「野望」があり、今回の取り組みで一歩前進ということらしい。この野望は数年前から聞いていたが、当時はまだ「デジタル教科書教材協議会」(DiTT:Digital Textbook & Teaching)もなく、夢物語と思っていた |
「Surface RTは安く、キーボードがあり、かつOffice入り」が選考理由
なぜSurface RTかというと、1つは安いこと。具体的な価格は明示しなかったものの、この価格でなければ保護者の理解は得られなかっただろうという。
2つ目は単なるタブレットではなく、いわゆる2in1でキーボードが脱着できること。キーボードで入力することに学習面でもこだわりがあり、タッチカバーではなくタイプカバーでの導入となっている(タッチカバーとタイプカバーはSurfaceシリーズのオプション)。
そして3つ目が、Officeが入っているということ。現在の社会ではOfficeアプリが広く使われているだけでなく、立命館小学校の電子黒板や生徒の発表でもPowerPointを利用している。その教材を手元の端末で閲覧するためにOfficeは不可欠で「PowerPointだけでなく、他のアプリも活用できると広がりがある」(陰山氏)という。一例として、作文にWordを使わせたところ、小学生から「(原稿用紙で)30枚程度の文章を書かせてほしい」といわれたエピソードを紹介していた。
日本マイクロソフトとしても、「小学生の段階からWindowsに慣れ親しんでもらうことで、将来にもつながる」(樋口社長)という考えで、同社からの支援策の1つとして「マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)資格の取得支援」が挙げられた。小学生のMOS取得者はすでに数名いるので、「立命館小学校なら多くの児童がMOSを取得していただけるのではないか」(日本マイクロソフト 業務執行役員 文教ソリューション本部長 中川哲氏)と期待する。
「小学生にも『ハマる、タブレット』」とはいわなかったが、キーボード付でかつ軽量なSurface RTは初等教育に向いているだろう。以前、青山小学校にThinkPad Tabletが贈呈されたことがあるが、当時の校長も「小学生には軽量であることが重要で、かつて導入されたThinkPad X60 Tabletよりもだんぜん軽量でうれしい」と語っていたのを思い出す |
立命館小学校に対する日本マイクロソフトの独自支援が紹介されていたが、もちろんパブリックセクター向けの支援策もある。初等教育課程でのICT学習はまだまだこれからのところがあり、こうした支援は強化、継続してほしいものだ。ちなみに、立命館小学校でのプレゼンテーション講習は、日本マイクロソフトで活躍する「エバンジェリストのトップ」が行うそうだ |