IoTのためにBluetoothがいかに使えるのか?
11月6日、Bluetooth SIGは都内で説明会を行い、チーフマーケティングオフィサーのスーク・ジャワンダ氏が「CONNECTING THE INTERNET OF THINGS」という公演を行った。そこでは、Bluetoothの15年間にわたる発展と、これからのIoT(Internet of Things)時代に向けたBluetoothの新しい姿が示された。
最近「モノのインターネット」という用語が多く使われている。これは「Internet of Things」(IoTとも略される)の日本語訳で、インターネットに「識別可能な人」が接続して利用するのではなく、識別可能なデバイスがインターネットに接続されるという概念だ。最近なら、IntelがIoTに向けた新しいプロセッサファミリーのQuarkを発表している。
もともとBlueoothは、「What if………ワイヤレスでコミュニケーションできたら?」という命題をもとにスタート。そのために様々なプロファイルが考案され、当時のBluetooth SIGは7社で構成されていた。1998年から2008年間の10年間で、実に10億台のデバイスが10,000社の加盟会社から出荷されたという。そして現在では累計100億台のデバイスが出荷、2020年には300億台、その3年後の2023年には500億台に達すると予測している。
Bluetoothはワイヤレスコミュニケーションとして成立し、10年間で10億台を出荷。Bluetooth SIG加入も10,000社となった。Bluetoothを牽引してきたのは、主にオーディオ機器と入力デバイスだ |
Bluetooth機器の増大を加速するのが、「What if………全てのモノとコミュニケーションできたら?」という次の命題だ。従来のBluetooth機器は、比較的大きな電池/バッテリで1日程度しか動作しなかったが、これではすべてのモノにコミュニケーションさせるには消費電力が大きすぎる。
そのため、コイン電池1個で1年以上は持たせようと開発されたのが「Bluetooth Low Energy」(以下、BLE)であり、それを規格化したのがBluetooth 4.0やBluetooth Smart / Bluetooth smart deviceだ。従来のBluetoothとは互換性がないので、省電力性が求められるデバイスはBLEのみを使い、これをBluetooth Smartという。
一方、従来のPCやスマートフォンはインターネットへの架け橋となるので、従来モードのBluetoothとBLEを備え、さらに将来への拡張性を担保する。これがBluetooth Smart Readyだ。Bluetooth Smart機器は、ハブとなるPCやスマートフォンのアプリケーションとやり取りをして、アプリケーションがクラウドへとデータを送り出す役割を担っている。
Bluetooth Smartは一定の成功を収めており、現在は主要なモバイルOSのすべてが対応済み。対応製品としても、世界的なブランドから今後を担う新興ベンダーまで、幅広く手がけている。その結果、今年だけで25億デバイス、2014年は30億デバイスの出荷が見込まれており、2013年末にはBluetooth SIGメンバーも20,000社になるという。
次の命題「What if………全てのモノとコミュニケーションできたら?」のためには、省電力性が強く求められる。そこで生まれたのが、省電力性を重視したBluetooth Smartだ。デバイスはデータの入出力に特化し、人とのやり取りはハブデバイスのアプリケーションソフトが行う |
Bluetooth Smartはそれなりの成功を収めている。主要モバイルOSなら最新バージョンでサポートしており、デバイスも世界の名だたるブランドから、これから大きくなる会社でも採用され、今年だけで25億台も出荷される予定だ |
ということで、現在の機器とデータの流れはデバイスからアプリを通じてクラウドへ(写真左)。それを具体的な機器で見せているのが写真右で、左手の腕時計型デバイスは右手のスマートフォンを通じて処理される。この場合、デバイスとスマートフォンで認証を行ってデータを転送 |
さて、その上で、2013年末には「Bluetooth 4.1」を規定する予定だ。「What's next? 全てのモノをインターネットに接続できますか?」という命題の解決のために、現在のBluetooth 4.0を拡張する。ハードウェア側は従来のBLEと同じでプログラムが異なるので、メーカーがBluetooth 4.1対応のファームウェアを提供すれば、アップグレードもできる(すべてのBluetooth機器に当てはまるとは限らないが)。
Bluetooth 4.1はデバイスとハブ機器(PCやスマートフォン)との接続性/柔軟性を向上させる。具体的には、従来はデバイスとアプリが認証してデータ転送を行っていたが、IPv6を使ってデバイスが直接クラウドサービスと通信し、ハブは単にデータを透過させるだけの構成が可能だという。
今回は4.1の予告に過ぎず、あまり詳細な説明はされなかったが、Wi-Fi(無線LAN)ルータ/アクセスポイントにBluetooth 4.1接続機能を持たせるための交渉も…という旨の発言もあった。
Bluetooth 4.1の主な特徴。細かい説明は省略されたが、インターネットに接続するために公共ハブがあれば、データをインターネットに流せるようだ。細かい話は年末の規格発表と、年明け早々のCES 2014で明らかになるのではないだろうか |
「すべてのモノをインターネットに接続」という命題は、IoTそのものといえる。Bluetooth 4.1は、デバイス自体がインターネットに接続する方法を示唆する、IoTに向けたBluetooth SIGからのメッセージでもあるのだろう。