『AKIRA』などで知られる漫画家、アニメーション監督の大友克洋氏が10月31日、都内で会見を行い、紫綬褒章を受章したことが明らかになった。
『AKIRA』や『童夢』など、国内外のアーティストに多くの影響を与えた作品を自ら生み出し、『AKIRA』では自らが監督を努めたほか、『スチームボーイ』、今年公開された『ショートピース』といったアニメ作品や『蟲師』といった実写作品の映画監督としても活躍する大友氏。漫画界からは昨年の萩尾望都に続いて2年連続、アニメーション監督として1999年の高畑勲以来となる紫綬褒章の受賞となった。
受賞を受けて大友氏は会見を開き、「自分がそういう対象になっていることにびっくりしました。そんな歳になったのかな」とはにかみながら、これまでの活動を振り返った。今回の受賞は、漫画家、アニメーション監督して長年圧倒的な画力と構図、物語の構成力、鋭い映像カナックで、国際的に高い評価を得た作品を数多く発表し、我が国の芸術・文化の発展に大きく貢献したことが評価され、受賞に至ったという。
多くのヒット作を作り出してきた大友氏は、自身の作品について「一貫したこだわりというのは意識したことがなく、『AKIRA』が終わったら次はこんな作品をやってみたいなと感じたり。この間の『火要鎮』は、短編をやってみたかったので作ってみました。その時にやりたいことをやっている感じです」と語る。今年は画業40周年となるが「まだ現役ということもあり、活動を振り返ったことはない。漫画を書き始めてもすぐにヒットが出るわけでもなく淡々と書き続いているだけ」と自身のスタイルに大きな変化はないという。とはいえ『AKIRA』については「自分で初めて長い連載をやりましたし、国際的にも評価されたし、アニメーションの監督も自分でやったので、アレは大きかったのかなと感じている」と感慨深げに振り返った。
現在の漫画・アニメ業界に話が及ぶと「漫画もアニメーションもピークが過ぎたような感じがします。若い人があんまり出てない感じもしますし、業界に元気がない。大ヒット作品もありますが、作品的に充実したものが出てきても良いと思う」と憂いを感じている様子。また、現在の状況を「昔は、漫画もアニメもどこか日陰者みたいな感じがあったので、自分が好きな事がいっぱい出来たのですが、最近は、大きな産業になったので、新しい人や企画が行いにくくなっている。業界が大きくなったなら、変わったことをする人を起用していかなくては行けない」と業界への閉塞感を吐露していた。
若いクリエイターたちに向けては「いまは、本屋に行けば漫画の描き方もアニメの作り方もみんなわかる時代なので、あとは本人がどうやるか。一人ひとり、やり方も違うと思う。よく学校で教鞭をとってもらいたいという話しを受けるが、俺がこんな風に作ったという話はできるが、それは俺の作り方なので、新しい人は自分で自分の作り方を見つけないといけない。教えようがない。」と持論を展開していた。