iPhoneを始めとしたスマートフォンが急速に普及し、シニア層と言われる世代にも浸透しつつある。MMD研究所が2013年9月に発表した調査結果によると、シニア層のスマートフォン所有率は23.2%で、1年前の10.9%から倍増している。読者の中にも「最近、両親がスマートフォンを使い始めた」という人も多いだろう。
そこで今回、マイナビニュースでは50代の一般iPhoneユーザー3名にお集まり頂き、実際にスマホを使ってみて感じたことなどを率直に話し合ってもらった。また、スマホデビューを果たした親をもつ20代の若者3名に親世代が使いこなせているか、どんなトラブルがあったかなども聞いてみた。本稿では、両世代の意見を踏まえ、シニア世代のスマートフォン利用について考えてみたい。
初スマホで遭遇したトラブルとは? シニア世代に聞いてみた
今回、50代のシニア層として、出版社勤務の石川さん、メーカー勤務の八木さん、会社経営者の戸田さんの3名に話を聞いた。
石川さんはiPhone 5cを使用している51歳の男性。これまでフィーチャーフォンを使用してきたが、1カ月前に初めてスマートフォンを手にした。家族割引が利用できるスマホを探していたところ、iPhoneの発売が重なったために購入に至ったとのこと。しかし、まだ使いこなせていないという。「電車の中で電話が鳴ったときに出方が分からず、焦って電源を落としました」と石川さん。ほかの参加者も思い当たるふしがあるらしく、一同に笑いが起こった。どうやら3名ともに従来型の携帯電話とは異なる「電話の受け方」に戸惑いを覚えた経験があるようだ。
八木さんはiPhone 4Sを使用している51歳の男性。iPhoneを3GSの時代から使用しているそうで、スマホ歴は4年と、参加者の中で利用歴が一番長い。普段は天気予報アプリやスケジュール管理アプリ、Evernoteなどを利用しているという。一方で、個人情報の流出が心配なので、LINEなどのSNSは使用していないとのこと。
戸田さんはiPhone 5を使用している53歳の女性。スマホ歴は1年半になる。先にiPadを購入しており、使用感に慣れたところでiPhone 5を手にしたという。数あるスマホの中でiPhoneに決めた理由は「可愛いカバーやアクセサリーなどが充実していること」。SNSやアプリの利用に積極的で、Facebook、SnapDish(スナップディッシュ)、英語のリスニングアプリなどを愛用。最近はKindleアプリで電子書籍も利用しているという。
今回お集まり頂いた3名にお話を聞き、共通していたのがスマートフォンを使い始めて、「従来の携帯電話では起こらなかったトラブルに遭遇した」という点だ。
石川さんは、前述の音声着信に出られなかったことに加え、「IDとパスワードを入れなくてはいけない場面が多いので大変」と苦笑い。Yahoo!メールはパスワードを忘れたために使えず、Gmailもパスワード管理が面倒に感じたのでアカウントを取得していない。普段はキャリアメールで用を済ませているとのことだ。八木さんも、Apple IDとパスワードを忘れてしまったことがある。平日は仕事があるのでキャリアショップに行くこともできず、結局、週末にキャリアショップで話を聞くまで設定が何も行えない状態だったという。戸田さんは「Apple IDとパスワードの情報が人に漏れたのか、身に覚えのない請求がきた経験がある」とのこと。この一件以来、キャリアが提供するセキュアなサービスに関心を示すようになったという。
子供に聞く? サポートサービスを使う? シニア世代のトラブルの解決方法とは
このように3名ともにスマホを利用し始めトラブルに遭遇している。その際にどのように問題を解決しているのか聞いてみた。
戸田さんは海外へ旅行する前、国際ローミングについて疑問をもったことがあった。そこで初めてユーザーサポートに電話してみたが、オペレーターに電話がつながるまで電子音声の誘導が延々と続く状況に辟易したという。「シャープや数字をいくつ押したのかが、途中で分からなくなった。すぐにオペレーターと喋ることができないのがしんどい」と戸田さんは語る。しかし外国で国際電話をかけてしまい何万円も請求がくる、という事態を避けるのがモチベーションになったという。「逆に、それくらいのきっかけがなかったら面倒なのでサポートセンターには電話をかけない」と、当時を思い出しながら話す。効率的で便利と思われるサービスであっても、全ての層にとってユーザーフレンドリーであるとは限らない。そんな好例だ。
石川さんは「スマートフォンの購入時に、量販店で1時間くらいかけて色々と説明をしてもらったが、その大半が契約の約款やオプションサービスについての説明。困ったときにどうしたら良い、というようなことは教えてくれない」と不満を漏らす。八木さんは「トラブルが起こったときに頼りになるのは息子」と話した。いつでも気軽に、連絡したらすぐに回答してもらえる。そんな親身になって面倒をみてくれるサポートがあったら、お金を出しても利用したい。それが参加者全員の思いのようだった。
石川さんは、自身の体験をふまえてこう付け加える。「疑問点によっては量販店か、キャリアか、アップルか、どこに聞けば良いのか分からないことがある。その結果、聞く前に躊躇してしまう」。例えば、問い合わせが他社の提供するサービスであった場合、「他社のサポートセンターへお電話ください」と"たらい回し"にされることがある。過去にそういう落胆した記憶があると、結局は聞かず終いになってしまうものだ。スマートフォンを提供するキャリアには、目先の損得にとらわれないサポートが求められていると言えるだろう。
親は子を頼りにする? スマホを使うシニアを親に持つ若者に聞いてみた
続いて、スマホデビューを果たした親をもつ20代の若者3名に話を聞いた。3名ともに、両親がスマホを使い始めてから「使い方について質問された」とのこと。さっそくその内容を紹介しよう。
IT企業勤務の喜友名さんは28歳の男性。沖縄にいる母親がiPhoneを使っているという。「分からないことがあるとiPhoneで電話してくるんですが、口頭では説明しにくいことも多い。なので、1年に1回帰省する度に、教えることがたくさんあります」と話す。
周さんは23歳の女性。実家の母親が半年ほど前にiPhoneを購入した。購入に踏み切ったきっかけは、主婦仲間がiPhoneでLINEを使い連絡を取り合っていたためだという。クックパッドなどのアプリも使用しているが、まだあまり使い慣れてはいないとのこと。「かつて母親が祖母にフィーチャーフォンの使い方を教えていたが、いまは私が母親にスマートフォンの使い方を教えている。それを考えると、母も歳をとったのかな、と思う」と話す。
稲田さんは26歳の男性。母親がスマートフォンを、祖母がらくらくスマートフォンを使っている。活動的な祖母は、固定型ゲーム機なども所持しているという。「おばあちゃんにiPad miniをプレゼントしたら、とても満足していた。次は、らくらくスマートフォンからiPhoneに機種変更したいと言っている」とのこと。また、実家に帰った際にWi-Fi(無線LAN)について聞かれ、解説に手間取ったと経験があるという。
今回、3名全員が両親にスマホの使い方を教えたことがあると語った。確かに、子どもが親にスマホの使い方を教える、これはどこの家庭にも起こりうるシチュエーションだ。「スマートフォンで困ったとき、まず頼りにするは息子や娘」というシニア層は多そうだ。
実家暮らしの周さんは「分からないことがあるとすぐに聞いてくる。気軽に聞ける環境があると、自分でどうにかしよう、覚えようという気持ちがなくなってしまうんですよね」と少しだけ困った表情を見せる。稲田さんも前述のWi-Fiについて質問された際の感想として、「自分が当たり前だと思っていることは、教えづらい。Wi-Fiという概念を教えるのに2時間くらいかかった。テクニカルなことに関しては、電話では伝わらないと思う」と語る。喜友名さんも「分かっていることでも、人に説明するとなると次元が違う難しさがありますよね」と同意する。
これらの意見を受け、シニア層に話しを聞いた際にも話題となったサポートサービスを両親が利用するとしたらどう思うか聞いてみた。
喜友名さんは「そこまで料金が高くないのであれば、利用すると良いと思う」とコメント。その理由を「平日の昼間に電話されても、応答できない。でも、自分が帰宅する時間帯にはすでに寝ている。生活のリズムが違うため、タイムリーな対応ができない」ためと説明する。周さんも「私が母に教えることができる知識には、あいまいなものもある。そんなときにはキャリアサービスを利用して欲しいと思う」と語る。稲田さんは「キャリアのサポートサービスと同等のことを、手間と時間をかけて自分がしてあげている状況。キャリアが提供している遠隔サポートなどで解決できるのであれば積極的に利用したい」と話す。3名ともに、両親がサポートサービスを利用することについて前向きな意見を持っているようだ。
キャリアのサポートサービスはシニアの需要に対応できる?
各世代の座談会を通じて浮かび上がってきたのは、「キャリアのサポートサービスの重要性」だ。シニア世代は「気兼ねなく聞けて、聞いたらすぐに回答が得られるサービス」を求めていた。また、若者世代は「生活する時間帯が違うために即座に回答できない」あるいは「正確で的確なアドバイスをすることが難しい」ために、親がサポートサービスを活用することに肯定的だった。
現在、各キャリアが提供するスマートフォン向けのサポートサービスは、こうした需要にどの程度まで応えてくれるのだろうか? 比較してみたので紹介しよう。
NTTドコモでは、月額630円の「あんしんパック」を提供している。これはスマートフォンが故障・紛失した際に補償するサービスやセキュリティ対策などをまとめたパックだ。電話サポートは「あんしんパック」には含まれず、従来と同様に総合窓口の「151」に問い合わせるかたち。無料かつ年中無休だが、受付時間は午前9時から午後8時までと時間が決まっている。しかし、iPhoneではあんしんパックを提供しておらず、困った時には従来のお客様サポートしか利用できない。
KDDIでは、会員制サポートサービスの「auスマートサポート」を提供している。電話サポートは専用の窓口が用意され、スマートフォンの知識豊富なアドバイザーが24時間体制で対応する。電話をすると直接アドバイザーに繋がるようになっており、音声ガイダンスが延々と続く、という煩わしさがない。加えて、1ユーザーに専門の担当チームが付き、アドバイザーの指名もできるようになっているのが大きな特長だ。利用料金は、最初の3カ月分として3,150円、4カ月目以降は月額399円となる。さらに追加費用として1回あたり8,925円を支払うことで、ユーザーの自宅にスタッフが直接訪れ、スマートフォンの設定方法や使い方を説明してくれる「スマホ訪問サポート」を受けることが可能だ。
ソフトバンクでは、月額498円の「iPhone基本パック」「スマートフォン基本パック」を提供。留守番電話などの通話サービスに加えて、紛失・盗難に遭ったスマートフォンの位置情報を検索できるサービスとなる。基本パックとは別に、電話サポートとして問い合わせ窓口「iPhoneテクニカルサポートセンター」「スマートフォンテクニカルサポートセンター」を用意。操作に関する問い合わせは平日は午前9時から午後7時まで、土日祝日は午前9時から午後5時まで利用可能となっており、NTTドコモ同様に時間制限がある。このほか、月額525円で「ケータイなんでもサポート」も提供。同サービスは、スマホのほかパソコンやデジカメなどデジタル機器の使い方などを相談できるというもの。電話や遠隔でのサポートのほか、auスマートサポートと同様に「出張サポート」(出張基本料3,150円に加えサポート内容に合わせて別途料金が発生)も利用可能。ただし、問い合わせ対応時間は午前9時から午後8時まで(年中無休)となる。
ユーザーサポートという観点から見たとき、現状で最も厚いサポートを用意しているのは24時間体制の電話サポートを提供しているKDDI(au)ということになるだろう。ガイダンスがなくてアドバイザーに気軽に問い合わせできる点も魅力だ。ちなみにKDDIでは10月2日から、新たに「auスマートサポート ご利用チケット」の提供を開始している。これはauスマートサポートというサービスをギフトとして贈ることができるというもの。スマートフォンとサポートチケットをセットにして、親にプレゼントしてあげる、という親孝行の形もありえるだろう。
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今回、2世代、計6名に話を聞き、シニア世代にもマートフォンが普及していることを実感できた。またシニア層への普及に伴い、従来型の携帯電話とは異なるスマートフォンにおけるサポートサービスの重要性が改めて示された。今後、シニア層のスマートフォンユーザーが拡大していくにあたり、本稿で紹介したようなサポートサービスの違いが大きな差別化要素になってくるのではないだろうか。