映像コーデックの1つDivXであるが、歴史を紐解けば独自の開発をしたバージョン4がリリースされた当初、2時間程度の動画を非常にきれいな状態で、CD1枚に収めるレベルに圧縮できると、人気を集めた。バージョン5や6では、フリー版と機能制限のない有償のDivX Pro版が提供されていた。しかし、記念日やイベントなどで、ライセンスが無料で配布されることもあり、実質的にはフリーともいえる状態であった。一方、DivXに対応したDVDプレーヤーなども登場し、現在でも対応する製品は多い。その後、バージョン7ではH.264へ対応(音声コーデックはAAC、コンテナはmkv)、バージョン9ではMP4への変換機能などがサポートされた。現在の動画では、動画のコーデックとして、H.264/AVCが一般的になっている。2013年9月、最新となるバージョン10をリリースするにいたる。このバージョンでは、最新のコーデックとなるH.265がサポートされた。

H.265とは?

さて、ここでH.265についても簡単に説明しておきたい。一言でいってしまえば、H.264/AVCの後継となるものだ。圧縮時に、ブロックサイズの適正化などを行うことで、MPEG-2(H.262)の約4倍、H.264/AVCの約2倍という高い圧縮率が得られる。H.264のAVCに対し、HEVC(High Efficiency Video Coding)とも呼ばれる。すでに市場などでは4Kテレビなども登場している。当然のことながら、情報量も4倍となるわけで、放送ではビットレートの低減も求められる。そんなニーズに応えるのがH.265である。

しかし、問題もある。計算複雑性の増加である。エンコード・デコートのいずれにおいても、非常に多くの計算が必要になるということである。ちなみに、H.264が登場した際にも同様のことがいわれた。事実、PCの再生では一定以上のCPUが必要となった。その後、CPUは性能向上が進み、現在の一般的なCPUでは特に問題はない。PC以外では、専用チップによるハードウェア支援も行われた。今回のDivX 10では、ユーザーレベルでH.265を体験できるものといえる。このあたりがどうなのか、実際に紹介してみたいと思う。

DivX 10のインストール

まずは、DivX 10のインストールである。公式ページからダウンロードする。

[DOWNLOAD NOW]をクリックし、インストーラをダウンロードする。ダウンロードしたインストーラを起動すると、図2となる。

図2 DivX 10のセットアップ開始

途中、インストール製品の選択となるが、インストールオプションの[DivX HEVCプラグインを有効にする]にチェックを入れる。

図3 インストールオプション

図3を見てもわかるように、

・DivXコーデックパック
・DivXコンバータ
・DivXプレーヤー
・DivX Webプレーヤー

の4つがインストールされる。図4でインストールは完了となる。

図4 DivX 10のインストール完了

DivXコンバータを使ってみる

実際に、H.265の動画を作成したい。元になる動画は、MPEG-2 TSの1920x1080の動画を用意した(時間は1分8秒)。この動画をH.264やH.265の1280x720(ハーフHD)の動画に変換してみる。また、音声データは、同じ圧縮方法、ビットレートを設定する。DivXコンバータを起動すると、図5のようになる。

図5 DivXコンバータを起動

中央に変換したい動画をドラッグ&ドロップする。変換は、上のプロファイルから選択する(図6)。

図6 変換可能なプロファイル

まずは、H.264の動画を作成しよう。ここでは、DivX PLUS HDを選び、図7のように動画のプロファイルをデフォルトのままにする。

図7 H.264のプロファイル

ビットレートは、デフォルトの5400kbpsにした。音声は、AACで196kbpsにした(こちらもデフォルトのままだ)。あとは、左上の開始ボタンを押すだけだ。変換には、4分21秒かかった。次にH.265である。プロファイルは、DivX HEVC 720pを選ぶ。さらに、こちらでもプロファイルをデフォルトのままとする(図8)。

図8 H.265のプロファイル

ここでもビットレートはデフォルトの2400kbpsのままとした。あとは、変換である。たった1分8秒の動画であるが、なんと34分20秒もかかってしまった。ファイルサイズは、冒頭にふれたように、H.264の半分以下となっている(図9)。

図9 ファイルサイズの比較

ビットレートについては、検討の余地もあるかもしれない(経験も必要だろう)。いずれもデフォルトでは、やや高めという印象である。再生は、DivXプレーヤーで行う。

図10 再生は問題なし

しかし、再生はほとんどストレスを感じることはなかった。さらに画質的にも、H.264とそんなに差があるとは感じられなかった。当然ながら、DivXプレーヤ以外の再生環境はまだ一般的ではない。実際に、コーデックなどの情報を表示してみると、図11のようになる。

図11 コーデックなどの情報を表示

「Unknown CodecID」となっている。現時点では、ソフトエンコーディングに関しては、やや実用上は厳しいというところだろう。今後、CPUに対する最適化などで改善する可能性も期待できる。しかし、ハードエンコードが当面の手段になるかと思われる。一足先にH.265を体験するには、DivX 10は最適であろう。しかし、計算量の多さには、本当に驚かされた。今後にも注目していきたい。