今後を意識し始めた年齢・行動や準備を始めた年齢・行動や準備を始めるべきだった年齢

日本経済社は、「定年延長(65歳雇用の完全義務化)」によって変わった、ビジネスパーソンの働く意識や生活などについて調査した「ビジネスパーソン基礎調査 Vol.1/定年延長の影響を探る」を実施した。対象は45歳から59歳までのビジネスパーソン518名、調査期間は7月10日~11日。

意識し始めた年齢と、行動を始めた年齢の差異は0.6歳

定年延長を踏まえ、「今後の働き方や人生の過ごし方を意識し始めた年齢」の平均は全体で「48.0歳」だった。また、定年延長を踏まえた「行動や準備を始めた年齢」の平均は「48.6歳」。「行動や準備を始めるべきだ(始めるべきだった)年齢」の平均は「47.8歳」となっている。

「意識し始めた年齢」と「行動や準備を始めた年齢」の差異は0.6歳と、実際に行動や準備を始めるまでにやや時間がかかっていることがわかった。また、「行動や準備を始めた年齢」と「行動や準備を始めるべきだ(始めるべきだった)年齢」の差異は-0.8歳で、もうすこし早くから意識して準備を始めるべきだったと考えている様子がうかがえる。

年代別では、定年延長の時期に近づく年代ほどその傾向が強くなり、「私は51歳なので、その何年か前から行内でセミナーが開催される。そこでどうしようか皆考え始める(51歳男性)」、「定年のことを考え始めたのはFPの勉強を始めた50歳の頃(58歳男性)」、「30歳くらいの頃に、定年の想定をした。65 歳までは年金をもらえない期間があるので、生命保険の積み立てを開始した(57歳男性)」などの声が寄せられた。

7割が働く意欲を維持。今と近い仕事がしたい人も半数にのぼる

60歳以降の働き方について

60歳以降の働き方を聞いたところ、「60歳以降も働く予定である」が66%と最も高く、次いで「60歳以降も働きたい(64%)」、「今住んでいる都市圏内で働きたい(58%)」、「フルタイムで働きたい(48%)」、「いまの仕事と近い仕事がしたい(47%)」の順となっている。40代後半では「自分の趣味を生かした仕事がしたい(47%)」、「起業・独立したい(17.8%)」、「海外で働きたい(15.1%)」が、50代と比較してスコアが高くなった。

「65歳からしか年金が出ないので、最低でもそこまで働く必要がある。70歳まで現役で働きたいと思い、資格取得を目指している(51歳男性)」や、「子供の学費は来年で終わりだが65歳までは働きたい(53歳男性)」との声もあり、厳しい経済環境の影響なのか、大きな変化を望まない堅実で保守的な傾向がうかがえる。

定年延長で、会社との関係は希薄化。地元・地域とのつながりを重視する傾向に

左から「現在の生活で、大事にしているもの」「定年延長を踏まえて、今後、大事にしたいと思うもの」

「現在の生活で、大事にしているもの」を聞いたところ、全体では「健康」が74.9%と最も高く、次いで「家計(71.6%)」、「配偶者との関係(56.8%)」だった。一方、定年延長を踏まえて「今後、大事にしたいと思うもの」を聞いたところ、「健康」が64.7%と最も高く、次いで「趣味・余暇の過ごし方(46.1%)」、「配偶者との関係(46.1%)」となっている。

「現在の生活で、大事にしているもの」と「今後大事にしたいと思うもの」の順位を比較すると、「趣味・余暇の過ごし方」(4位→2位)、「体力づくり」(7位→5位)、「地域コミュニティ」(15位→7位)について、それぞれ順位が上がっており、特に「地域コミュニティ」が大きく順位を上げていることがわかった。

会社とのつながり

地元・地域とのつながり

反対に、順位が下がったのは、「仕事の内容」(5位→10位)、「職場の人間関係」(8位→13位)、「仕事上の評価」(10位→15位)。そこで、定年延長と聞いて、自分と関わっている人や場とのつながりが今後どうなるかを聞いたところ、「会社とのつながり」が「今後弱くなっていく(弱く+やや弱く)」と答えた人が35.9%、「強くなっていく(強く+やや強く)」と答えた人が8.5%と、弱くなっていく傾向にあると考える人が多いことがわかる。

一方、「自分の地元や地域とのつながり」については、「強くなっていくが」が17.4%、「弱くなっていく」が11.6%で、強くなっていくと考えている人がやや多い傾向にあり、「何もしないと年をとる。趣味もこれから増やしていきたい(53歳男性)」、「会社の中でのつながりはあまり持たないようにしてきたし、会社外のつながりの方が面白い(58歳男性)」との声も聞かれた。

同社では、定年延長を踏まえて「興味関心の対象は仕事から自身の健康や趣味・し好へとシフトしている」とコメント。「会社との関係性が希薄化する一方、地域コミュニティとの関係性が深まるといった意識変化が起こり、これまでのライフスタイルが変化する兆しが見られる」と分析している。