近年、クラヴマガは映画やドラマなどでの導入も増えてきたという

クラヴマガを御存じだろうか。イスラエル軍で開発され、FBIなどでも用いられている護身術のことだが、近年、じわじわとその人気が日本でも広まっており、10月19日から公開となった映画「人類資金」でもクラヴマガのアクションが多数披露されている。その専門ジム「MagaGYM(マガジム)」が10月13日、東京都・六本木にオープンしたので、早速"究極の護身術"の真髄を体験しに行ってみた。

イスラエル発祥の接近格闘術は、女性でも短期間で学べる

10月某日。クラヴマガを体験しようと六本木へと足を運ぶ。地下鉄の六本木駅から地上へ出て、外苑東通りへと進む。休日の午前中にも関わらず、いかつい外国人の姿が目立つ。ビルの軒下には、前夜に終電を逃したのだろうか、倒れこむように寝ている人の姿もある。さすがは不夜城・六本木。この街では、確かに護身術の一つでも身に付けておく必要がありそうだ。

外苑東通りから1本、中へと道を入ると、マガジムが見えてきた。いよいよクラヴマガとの対面だ。

クラヴマガは、1940年代にイスラエル軍で開発された接近格闘術。イスラエルには男女ともに兵役があり、女性兵士でも短期間の訓練で実戦への参加を余儀なくされるという。それゆえ、性別や体格、年齢を問わず短期間で実戦に耐えうる戦闘能力を身につける必要があった。

そういった背景から生まれたのがクラヴマガだ。マガジムを運営するハマーフィストの代表取締役である熊谷篤広さんは、「クラヴマガは極めて実践的で、ルールがありません」と話す。自分が安全に帰還するために相手に勝つ、もしくは相手から逃げて自分の身を守ることを最優先とする。

笑顔のインストラクター(左から徳山さん、西尾さん、奈良さん)が丁寧に教えてくれる

本国イスラエルの最新情報を常に提供

マガジムは、アメリカに本部があり、世界中で100を超えるクラヴマガのトレーニングジムが加盟している国際連盟「クラヴマガ・アライアンス」から、アジアで初めて加盟を認定された団体だという。クラヴマガ・アライアンスは、アメリカのロサンゼルス警察にも格闘術を指南しており、クラヴマガの本場、イスラエルのウィンゲート・インスティテュート(体育大学に相当)ともつながりがある。

「そのため、マガジムでは技術体系のアップデートが頻繁に行われ、常に最新の護身術が学べます」と熊谷氏は話す。

そういった背景もあり、映画「人類資金」では、同ジムのインストラクターである徳山さんと西尾さんが出演者・森山未來さんに技術指導をしたという。

クラヴマガの数々の技を披露してもらう

クラヴマガには「パッシブ」「ニュートラル」「ファイティング」と呼ばれる3つのスタンスがあるが、基本的には「アグレッシブに前へ前への護身」だという。早速、その技術を見せてもらった。

「ストレートパンチ」

まずはストレートパンチ。護身術だけあって、ボクシングにおけるジャブのような概念はなく、一発一発が100%の全力だという。地面をしっかり蹴(け)り上げて、腰を入れて連続で打つのがポイントだ。

「股間蹴(げ)り」

次は急所を蹴り上げる「股間蹴(げ)り」だ。膝から上げて、まっすぐと相手の急所めがけて振りぬく。ヒットさせた後は追加の打撃を見舞う。その所業はまさに電光石火。正面からの相手だけでなく、幅広いエリアにも対応できる。

「チョークディフェンス」

相手が首を絞めてきた際に繰り出すのは「チョークディフェンス」。接合が弱い親指部分から相手の手を払いのけ、股間蹴(げ)りなどで追加打撃をして相手を離し、すぐに逃げることが必要だという。自分の身を守ることが最優先なので、不利な状況では必ずしも闘う必要はないのだ。

「ナイフディフェンス」

相手が素手の場合とは限らない。武器を持って襲ってくる可能性もある。相手が鋭利な刃物を持っている場合は「ナイフディフェンス」が有効だ。刺されないように上半身を「く」の字のように曲げた状態で、相手の突き出してきた腕を内側から外側に払いのけ、そのまま相手の腕をねじ上げることで、武器を使えなくすることができる。

「ガンディフェンス」

銃に対する護身方法もある。銃口から直線状に続くファイアラインに気を付けつつ、手で相手の銃の位置をずらし、そのまま相手の懐に飛び込み、カウンターを一閃(いっせん)。そのまま相手の銃を奪い、相手を見据えながら一定の距離まで後退し、銃を使える状態にして構える。インストラクターによる一連の動きは流れるようだった。

今回紹介してもらったのは、クラヴマガのほんの一例。この他にもまだまだ多くの護身術があるという。

レベルに合わせて7つのトレーニングクラスから選べる

マガジムでは、初心者向けのクラスから武器護身テクニック集中クラスまで、レベルに合わせた7つのトレーニングクラスが用意されている。料金も月会費8,400~1万2,600円の3種類があり、「比較的リーズナブルな値段で多くのクラスが楽しめる」(熊谷氏)という。

既に200名超が入会しているようで、記者が指導を受けている1時間半の間にも、マガジムに入会希望者(男性)が訪問していた。会員は30~40代がメーン層で、意外なことに男女比は男6:女4だという。女性もかなり多いため、女性一人からでも比較的入会しやすそうだ。

激しい動きを伴うため、脱メタボや健康維持という観点からでも楽しめるクラヴマガ。"もしもの時"に備え、一度試してみるのはいかがだろうか。