エプソンは21日、サーバーアプリケーション「メールプリント for エンタープライズ」を発表した。文書や画像をメールに添付して送信すれば、社内の任意のプリンタ/複合機で印刷可能となる。家庭や個人向けプリンタ/複合機「カラリオ」シリーズで提供してきた「メールプリント」機能をビジネス領域に拡大するものだ。

セキュリティ基準の厳しいビジネス環境下でも導入でき、提供開始は2014年2月以降を予定している。同日、都内で開かれた記者発表会では新サービスの概要や販売戦略が語られた。

「メールプリント for エンタープライズ」の概要

記者発表会の冒頭、エプソン販売 取締役 販売推進本部長の中野修義氏が登壇し、「メールプリント for エンタープライズ」投入の背景などを述べた。

エプソン販売の中野氏(写真左)。エプソンではEpson Connectを通じて、様々な製品やサービスを結びつける取り組みを進めている(写真右)

エプソンでは、各種ネットワークサービスの集合体である「Epson Connect」を通じて、ビジネス向けおよび消費者向けの様々な製品、サービスを結びつける取り組みを進めている。2011年8月には、クラウドを利用したプリントソリューション「メールプリント」を提供開始。PCやモバイル端末などメールを送信できる機器から、対応プリンタ/複合機にメールを送ると「Epson Connect サーバー」を経由して、本文や添付ファイルを印刷できるというもの。

FAXを代用できるサービスとして、FAXを利用した業務フローの改善を望むビジネスユーザーからも支持を得てきた。しかし、セキュリティ基準が厳しいオフィスでは導入できないという課題があったという。

今回の「メールプリント for エンタープライズ」は、社内ネットワーク環境に構築できる法人向けオンプレミス型「Windowsサーバーアプリケーション」だ。自社で用意した設備で利用できるため、「自社の都合に合わせてサーバーのメンテナンスを実施したい」「自社の情報システム部門で運用・管理したい」といった要望に応えられる。中野氏は「これにより、企業様のEpson Connect利用が一気に増えると期待している」と手応えを語った。

「メールプリント for エンタープライズ」は、ビジネス利用に特化したサービス。ユーザー自身でサービスレベル、セキュリティを確保できる

多彩な機能を用意

セイコーエプソン 機器ソフトウェア企画設計部 部長の中村一男氏からは、「メールプリント for エンタープライズ」の概要が紹介された。メールプリントは印刷元となるアプリケーションを必要とせずに利用できるサービス。ビジネスにおいては、例えば本部・店舗間の業務連絡などに活用できる。FAXの場合と比較して、送信元での印刷コストやファクス通信費が不要、といった利点がある。

セイコーエプソンの中村一男氏(写真左)。メールプリントは、固有のメールアドレスを持つプリンタ/複合機にメール送信して利用する(写真右)

中村氏は「新規システム構築時に、セキュリティ重視の観点でオンプレミスを選択する企業が多い」と指摘する。そこで、これまで展開してきたメールプリントのオンプレミス版として、「メールプリントfor エンタープライズ」を提供するにいたったという。オンプレミスとは、企業の管理下にある設備にシステムやサービスを構築し、運用する形態を指す。

メールプリントの業務活用例(写真左)。新規システム構築時に、セキュリティ重視の観点でオンプレミスを選択する企業が多いという(写真右)

機能面では、新たに「プル・プリント」に対応させた。これはメールで受信した文書を、一時的にサーバーで保管でき、ユーザーが必要なときにプリントを引き出す(Pull)ことができるというもの。

「メールプリント for エンタープライズ」サーバーは、社内ネットワークの一部に組み込んで利用(写真左)。新機能としてプル・プリントに対応した(写真右)

このほか、印刷レイアウトでは割り付けや両面印刷に対応。プリンタ/複合機に割り当てるドメイン名もユーザードメインを利用できる。「1つのメールアドレスに複数のプリンタ/複合機を紐付ける」「複数のメールアドレスを1台のプリンタ/複合機で利用する」といった運用にも対応する。

従来のメールプリントと、「メールプリント for エンタープライズ」の比較表

メールアドレスによってプリンタ/複合機を使い分けることができるので、同一企業の違う部署に設置されているプリンタ/複合機で利用したいときなどにも利便性が高い。また、同じ1台のプリンタ/複合機の印刷設定を変更してプリントすることも可能。

営業部にはA4カラー両面で、総務部にはA3カラー片面で印刷したり、同じ出力先でも印刷設定を変えてプリントしたりできる

また、複数の拠点に設置したプリンタ/複合機への同報配信印刷もできる。1つのメールアドレスに複数のプリンタ/複合機を紐付ければ、同じ内容の文書・画像を離れた部署で印刷することが可能だ

複数の拠点に同報配信印刷することが可能

少し話が戻るが、プル・プリント機能では、スマートフォンやタブレットなどのWebブラウザを介してプリントを指示することで、欲しいときに文書や画像を印刷できる。部数の指定や印刷仕様の変更も、こうしたスマートデバイスで行える。

スマートデバイスを使ってプル・プリントが可能

仕様概要

中村氏は、「ビジネスのお客様の声を真摯に受け止め、いかに簡単に使えるかを追求したサービスになっている。是非ともご利用いただければ」と締めくくった。

販売戦略について

エプソン販売 新事業企画部 部長の安川尚昭氏からは、販売戦略について説明があった。「メールプリント for エンタープライズ」は初期導入費として、基本システム(プリンタ/複合機×5台まで)が100,000円、プリンタ/複合機の追加ライセンスパック(5台)が50,000円、同パック(20台)が180,000円、ディレクトリサービス連携オプションが150,000円となっており、2年目以降は年間ライセンスが標準価格の30%に設定されている。提供開始から3年間で1,000システムの販売が目標とした。

エプソン販売の安川氏(写真左)。販売目標は、3年間で1,000システム(写真左)

「メールプリント for エンタープライズ」は、柔軟・安心・便利といったキーワードで訴求していく。ユーザーの業務用件に合わせたサービスレベルで運用でき、セキュリティも強固、スマートデバイスからプリントできることなどがセールスポイントになる。

ターゲットユーザーには、飲食業・小売業(多店舗展開する法人)のほか、文教・官公庁(多拠点管理する機関)、OA(外勤営業)などを想定している。エプソン販売の試算では、FAXや郵便を利用した場合と比較し、通信コストが42.5%ほど削減できるとの結果を得ている(本社から39拠点に向け、1日に2回、1回あたり5枚のFAX通信を利用すると想定)。

柔軟・安心・便利といったキーワードで訴求(写真左)。ターゲットユーザーには、飲食業・小売業などを想定(写真左)

文教・官公庁やOAなどもターゲットユーザーに想定

プロモーションに関しては、Epson Connectのウェブサイトなどで利用シーン、導入効果などの情報を提供するほか、発売に先行して無料の体験版(試用期間制限付き)を配布する。また「Epson Business Forum 2013」(10月24日~12月10日に全国8会場で開催)への出展も予定する。

ウェブサイトや、イベントなどを通じてプロモーション活動を行っていく