10月16日(現地時間)、Microsoftは公式ブログ「Blogging Windows」でWindows 8.1と統合する同社の検索サービス「Bing(ビング)」に関するアピールを行った。昨日紹介したSkyDrive開発チームメンバーの記事と同じく、マーケティンググループのシニアマーケティングコミュニケーションマネージャーであるBrandon LeBlanc(ブランドン・ルブラン)氏の名前で投稿。内容はBingユーザーエクスペリエンスチームのグループプログラムマネージャーであるKieran Snyder(キーラン ・ スナイダー)氏が独白した形で掲載されている。

Bingユーザーエクスペリエンスチームでは、Windows 8.1を担当するWindows開発チームと共にBingの「スマート検索」の融合を担当し、見た目やクールな検索結果を引き出すための改善を行ったという。Windows 8にはWindowsストアアプリベースの「Bing」が用意されていたが、その時点で両チームの共同開発は始まっていたそうだ。

Snyder氏によると両チームによるアプローチは異なる目標を持ち、Bingチームは専門知識を含むマルチメディアコンテンツや、実験と状況に応じて柔軟な対応を主目的とするアジャイル開発、機械学習を実現したいと考えていた。その一方でWindowsチームは、モダンデザインを利用する世界中の10億人にも及ぶユーザーに対して職人的な注意を払いたいという。さらに、この時点で同氏はWindowsチームのグループプログラムマネージャーを勤めていたそうだ。

BingユーザーエクスペリエンスチームのKieran Snyder氏(公式ブログより)

Windows 8.1の開発スタート直後から、前述した目標を盛り込みたいと考えていた両チームだが、簡単なものではなかったという。Bingチームは多種多様な専門知識が必要となるスマート検索を実現するために新たなチームを編成し、開発者だけでなく同社各種ソフトウェアに携わってきたデザイナーや研究者、マーケット担当者が参画。

ちなみにSnyder氏は以前にWindowsインターナショナルグループのプログラムマネージャーを勤め、さまざまな各国語のロードマップに携わっていたため、同氏のルーツである自然言語処理に関する作業は楽しいものだったと述べている。さらに同氏の言葉を借りれば、"米国産黒サクランボ"を意味するBingのように小さなチームだったが、最終的には約千人にも及ぶスタッフがスマート検索の開発に貢献したという。

Web検索では[Enter]キーによる文字列の確定を必要とする(公式ブログより)

Bingチームでは検索経験に関して再考を行い、「なぜ何かを保存した場所を覚えておく必要があるのか?」「忘れられたメモや画像は役立つのか?」「Windows OSはそれら全てを探し出す際に役立っているか?」など自問自答したそうだ。その結果として生み出されたのがスマート検索だ。

通常であればWeb上で検索を実行する際、[Enter]キーを押して入力した文字列を検索キーワードとしている。例えば「Sky」と入力した際、Windows 8.1では同文字列を検索したいのか、「Skype」を起動したいのか判断しなければならない。そこで検索結果の正確性を維持するため、途中から予測文字や補足情報を表示するサジェスト機能で補完した文字を浮かび上がらせるなど、ユーザーの目に触れるような通知を追加したという。

Windows 8.1のスマート検索実行例。Web検索も同時に列挙する

さらに各チームの目標に掲げられていたのが、伝統的なテキストボックスによる検索結果と大きく異なる、新たな検索経験を提供する「Search Heroes(以下、ヒーローアンサー)」だ。そもそもBingは検索結果から数多くの情報を知り得ることを目標とした「Satori(悟り)」に注力している。例えば歴史上の人物を検索すると、その人のプロフィールや関連する人物など数多くの情報を提供するシステムだ。現時点で日本のBingは未搭載の機能だが、この結果をWindows 8.1のスマートサーチに組み込むことで、ヒーローアンサーの検索結果を作り出している。Snyder氏は、これらの検索結果が、最高かつ最新のWindowsストアアプリと同等と見なすことができると述べた。

検索キーワードが歴史上の人物や都市などの場合、ヒーローアンサーが有効になる

スマート検索の開発にあたってはXboxチームとも協力し、近いうちにXbox Musicカタログで蓄積したポピュラーソングを再生することも可能にする予定だとSnyder氏は述べた。Xbox Musicは、3,000万曲以上のサブスクリプション再生やストリーミングラジオなどをまとめた音楽サービスだが、2013年時点で日本国内の展開は未定のため、同サービスを享受することはできな。だが、スマート検索による検索結果の利便性が高まることは改めて述べるまでもないだろう。

画像検索にもスマートサーチ経験を反映させ、Web上だけでなくローカルファイルやWindowsストアアプリ、SkyDrive上の個人的な画像ファイルも検索対象に含めている。しかし同社がもっとも注力しているのは検索の高速化だという。その結果、Web上のBingによる検索結果と共に、Windows 8.1の検索経験も向上する、とSnyder氏は述べている。同氏によるとBingの改善は同社最大の投資であり、今後数年内には新たな検索経験を提供できると自信を見せた。

最後にSnyder氏は、Microsoftのような大企業で共同開発を行うことの難しさを吐露しつつ、スマート検索開発に携わった15カ月間の日々を振り返り、研究及び開発結果を社内全体で共有していることを明かした。その結果、同社のあらゆる分野に効果をもたらしていると同氏は述べ、「One Microsoft」のキーワードを実現しつつあることを強調している。なお、Windows 8.1は本日10月17日20時からリリースされる予定だが、事前にスマート検索を体験するためのサイトを公開したことを明かした。

Web上でWindows 8.1のスマート検索を体験できるデモサイト