アップルのiPhone 5s/5cが主要3キャリアより発売され、各社がiPhoneという同一の端末を扱うようになったことで、どのキャリアのネットワークがもっとも優れているのかに関心が集まっている。MMD研究所は10月15日、JR山手線上位6駅における各社の新iPhone のパケ詰まり調査の結果を公表した。同調査は6月、7月にそれぞれ実施されたパケ詰まり調査に続く第3弾となり、時間経過と端末の違いによって、パケ詰まりの実態がどのように変化したかを明らかにしている。

パケ詰まり最少はソフトバンク、KDDIは6月調査から改善

今回、MMD研究所が実施した調査は、JR山手線の上位6駅におけるパケ詰まりの実態を調べたもので、9月24日から27日、30日という平日の通勤ラッシュ・帰宅ラッシュ時に調査が行われた。

今回調査に使用したiPhone 5c

調査には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク各社のiPhone 5cを使用。Yahoo! Japanのトップページが完全に開くまでの表示時間を計測して、完全に表示されるまでに30秒を経過したものをパケ詰まりとしてカウントし、各端末について計1200回行った。調査スポットには乗車人員の多いJR山手線の上位6駅として、新宿、池袋、渋谷、東京、品川、新橋の各駅が選定された。

調査結果を見てみると、パケ詰まりがもっとも少なかったのはソフトバンクのiPhone 5cで、パケ詰まり率は1.0%(12/1200回)。次いで、KDDI版iPhone 5cがパケ詰まり率2.3%(28/1200回)で2位となり、ドコモ版iPhone 5cはパケ詰まり率13.4%(161/1200回)ともっともパケ詰まりが多く、ソフトバンクとKDDIに大きく差を開けられる結果となった。

各社iPhone 5cのJR山手線上位6駅におけるパケ詰まり調査結果

なお先述の通り、今回の調査は6月に実施された「JR山手線パケ詰まり調査」、7月に実施された「名古屋・大阪パケ詰まり調査」に続く第3弾にあたる。とくに6月のJR山手線パケ詰まり調査は、今回の調査と同様の駅で実施されており、時間経過や端末の違いによって、パケ詰まりの実態がどのように変化したかの参考になる。

6月の調査では、各社のiPhone 5(KDDIとソフトバンクのみ)、Android端末が使用されたが、iPhone 5の結果ではKDDI版iPhone 5のパケ詰まり率が20.4%、ソフトバンク版iPhone 5のパケ詰まり率は2.3%となっていた。

今回の結果と比較すると、KDDIのパケ詰まり率は20.4%から2.3%と大きく改善している。これにはiPhone 5s/5cが新たに対応し、KDDIが力を入れているプラチナバンドの800MHz帯LTEが大きく影響していると考えられる。しかし、現在も販売が続けられているiPhone 5は800MHz帯LTEに対応していないため、iPhone 5を使用して現時点での調査を行った場合は、結果は大きく違ってくることが予想される。

一方、ソフトバンクの結果を6月と今回で比較すると、パケ詰まり率は2.3%から1.0%とより改善している。ソフトバンクがLTEに利用している周波数帯は2GHz帯と1.7GHz帯であり、いずれもiPhone 5で対応していたことを考えると、端末の違いによる影響は考えにくく、ネットワークの強化がパケ詰まりの減少につながったと見ることができる。ソフトバンクはiPhone 5s/5cの発売に合わせて、2.1GHzとイー・モバイルの1.7GHz帯を利用した「ダブルLTE」をそれぞれ75Mbpsに高速化した「倍速ダブルLTE」の提供を開始しており、同サービスもパケ詰まり減少の一因になったと考えられる。来春にはプラチナLTEのスタートが予定されており、今後更なる強化が期待される。

今回の調査でパケ詰まりがもっとも多く発生したドコモは、6月時点ではiPhoneの取り扱いがなかったため、Android端末のXperia Z SO-02Eとの比較となるが、パケ詰まり率は4.9%から13.4%と悪化している。これには、iPhoneとAndroidという端末の違いに加えて、ドコモがLTEに利用している800MHz・1.5GHz・1.7GHz・2GHz帯という周波数帯のうち、1.5GHz帯にiPhone 5cが対応していないことなどが要因と考えられる。また、パケ詰まり以外でも、MMD研究所が実施・公表したiPhone 5cの通信速度調査においてもドコモは苦戦しており、ネットワーク強化が同社の喫緊の課題となっていると言える。

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MMD研究所が公表した今回のiPhone 5cのパケ詰まり調査は、都市部の混雑した環境でのパケ詰まりの実態を調べたもので、パケ詰まりがもっとも少ないのはソフトバンクのiPhone 5cだった。iPhone 5cという同一の端末を使っていることで、各社のネットワークの実態が直接結果として表れたと見ると興味深い。また、6月に実施された調査と比較すると、とりわけKDDIの結果において、iPhone 5とiPhone 5cという端末の違いが結果に大きく影響していることが読み取れる。しかし、別稿でも紹介している通り、KDDIは800MHzに非対応のiPhone 5の販売を続けており、消費者にとっては注意が必要だ。

iPhone 5の際には、KDDIはLTEエリアの広告誤記で問題を起こしている。スマートフォンの各端末が対応するLTEのエリアや周波数帯については、本来、キャリアや販売店からの十分な説明が必要とされるものだが、消費者自身も端末が対応する周波数帯などをよく考慮し、購入を検討したほうがよいだろう。そのうえで、今回のパケ詰まり調査などが、キャリアを選ぶ判断材料となるはずだ。