厚生労働省はこのほど、社会保障の給付・負担が国民の所得に与える影響などを調べた「2011年 所得再分配調査」の結果を発表した。それによると、当初所得(社会保険料などを支払う前の所得)の「ジニ係数」は前回調査(2008年)より0.0218ポイント悪化して0.5536となり、過去最大を更新した。ジニ係数は1に近いほど所得格差が大きいことを示している。
当初所得のジニ係数は、1984年以降、増加し続けている。同省は、当初所得の格差が拡大している理由について、「世帯主の高齢化や世帯の小規模化などの要因が考えられる」と説明している。
当初所得のジニ係数を世帯別に見ると、一般世帯に当たるその他の世帯は0.4369、高齢者世帯は0.8091、母子世帯は0.4070となった。
年間の平均当初所得額は前回比40万4,000円減の404万7,000円。世帯別では、その他の世帯は528万9,000円、高齢者世帯は92万7,000円、母子世帯は195万7,000円となった。
一方、社会保険料などを支払った後、年金や医療費などの社会保障給付を加えた再分配所得のジニ係数は、前回比0.0033ポイント増の0.3791とほぼ横ばいとなった。給付を受けたことによる格差(ジニ係数)の改善率は、同2.2ポイント増の31.5%と過去最高を記録した。
ジニ係数の改善率のうち、社会保障によるものは28.3%と前回より1.7ポイント増加。それに対して、税による改善度は4.5%にとどまった。同省は、「年金を始めとする社会保障制度により、当初所得での格差の広がりが、所得再分配により大幅に抑制されている」と分析している。
再分配所得のジニ係数と改善率を世帯別に見た場合、その他の世帯はジニ係数0.3590、改善率17.8%、高齢者世帯はジニ係数0.3728、改善率53.9%、母子世帯はジニ係数0.2754、改善率32.3%となった。
再分配後の年間平均所得は前回比31万9,000円減の486万円。世帯別に見ると、その他の世帯は545万円、高齢者世帯は348万円、母子世帯は258万2,000円だった。
全体の再分配係数は20.1%。世帯別では、その他の世帯が3.0%、高齢者世帯が275.4%、母子世帯が31.9%となった。
同調査は3年に1回実施されており、今回は2011年7月14日~8月13日の期間に行われた。調査方法は留置自計方式。対象は44都道府県(岩手県、宮城県、福島県を除く)から無作為抽出した世帯で、有効回答数は5,021世帯。