カシオ計算機は10日、誰でも手軽にオリジナルスタンプを作成できるスタンプメーカー「pomrie(ポムリエ)」を発表した。11月8日より発売する。同日、都内では記者会見が開催され、製品の概要とデモンストレーション、狙いについて説明があった。pomrieの概要や消耗品、価格などについては、別記事『カシオ、手軽にオリジナルスタンプが作れるスタンプメーカー「pomrie」』を参照いただきたい。
冒頭で、カシオ計算機 執行役員 コンシューマ事業部 事業部長の持永信之氏が簡単にスピーチ。ペーパークラフトや折り紙、手作り年賀状、ビーズ、フェルト手芸などに代表される「手作りホビー」は、女性の愛好者を中心に根強い人気がある。カシオ計算機では、そうした手作りホビー市場に着目したという。
持永氏は「スタンプは気軽に始めやすい趣味。ここ最近はSNSにおいても、言葉に代わって気持ちを代弁するコミュニケーションツールとして親しまれている」と話す。こうしたスタンプの魅力をより身近にするものとして、pomrieの開発に至ったという。
女性デザイナーの提案をきっかけにして、女性メンバーを中心に製品化が進められた。記者会見では、企画提案を行った村田史奈氏、マーケットを担当してプロジェクトの中心となった尾澤慶子氏、ショップのpomrieコーナーなどを担当した山崎祐佳氏が、開発秘話や活用方法などを語った。
開発メンバーが語る苦労話
「通常は開発部が新しい製品を発案し、デザイナーは後から企画に加わります。一方で、カシオ計算機には、デザイナーからも定期的に新しい製品を提案して、製品化する仕組みがあります」と話すのは、カシオ計算機 デザインセンター プロダクトデザイン部の村田史奈氏。自身、身の回りのアイテムを手作りする「クラフト女子」だという。
その経験をpomrieの開発に活かし、「この絵柄はこんなシーンに使える」「アプリと連携すればこんなことができる」など、アイデアを膨らませながら形にしていった。「ただ、社内の男性からの反応はイマイチでした。それでも『女性には絶対に響く』という想いで、企画を練り上げていきました」と、苦労の過程を笑顔で振り返った。
pomrieには、Wi-Fi/USB接続に対応した「STC-W10」と、USB接続に対応した「STC-U10」がある。消耗品は、スタンプキットや交換用シートホルダー、インクなどだ。製品名は、スタンプを押すときの「ポン」という擬音と、工房を意味する「アトリエ」を掛け合わせた。村田氏は「作る楽しみだけでなく、使えること、誰かに喜んでもらうこと、人にプレゼントできることもクラフトの醍醐味。クラフトファンに向けて、ここまで世界観を込めた製品は初めてです」と力強く話す。
カシオ計算機 営業本部 コンシューマ戦略部の尾澤慶子氏は「このスタンプメーカーは、新しいジャンルの製品。そのため、会社の事業として成り立つことを示す必要があった」と話し、開発を行う前段階で、社内外でのアンケート調査や流通関係者へのヒアリングを綿密に行ったことを明かした。pomrieでは、PCやスマートフォン向けに提供される専用アプリによって、シンプルな操作でスタンプを作成できる。尾澤氏は、壇上でPCとpomrie用のアプリケーションを使いながら、実際にデモを行った。
カシオ計算機の尾澤氏(写真左)。PC(Windows XP / Vista / 7 / 8用)のアプリケーションは製品に同梱。スマートフォン用の無料アプリは、iOS 6.0以降、Android 2.3.3以降に対応する。App Store、Google Playからダウンロード。なお、Mac OS Xに対応する予定は当面ないという。残念… |
アプリケーションでスタンプデータを作成し、STC-W10/STC-U10で出力。STC-W10/STC-U10に本体に差し込んだシートホルダーに図柄が出力されてくる(写真左)。できた印面をスタンプベースに貼り付けて完成(写真右) |
細かい気泡が無数に存在するスタンプシートを部分的に加熱することで、インクが染み込まない部分を作る。これをスタンプ版として利用する仕組みだという。インクは、ブラック / レッド / ブルー / グリーン / ブラウン / ピンク / パープル / イエローの全8色。1つのスタンプで複数色を使うことも可能だ。
「好きな写真をスタンプにできる点が、pomrieの新しさだと思います」と語るのは、カシオ計算機 営業本部 コンシューマ推進部の山崎祐佳氏。実際に、自分の顔写真スタンプを作り、名刺の背面に押して使用しているそうだ。これにより、取引先で和んだ空気になったり、顔を覚えてもらいやすくなるという。
山崎氏は、このほかにも「付箋やメモに押せば、自分印のかわいい伝言メモになります。アドレスや郵便番号のスタンプも作れます。例えばお店では、印刷とは違う、温かみのあるメニューやポイントカードなどを作成することも可能です」と語り、アイデア次第で多彩に活用できることを説明した。
pomrieの発売に合わせ、年賀状で利用できるデザインの絵柄もダウンロード提供する予定だ。「pomrieだけで、心のこもった年賀状を作ることができます」と山崎氏。また、オプションの布転写シートを使えば、スタンプを布製品にも転写できる。年が明けて4月の入学・進学・進級シーズンになれば、子どもの持ち物に「オリジナルの名前スタンプ」を押すというニーズも高まるだろう。
また、pomrieを贈る、pomrieで作成したオリジナルスタンプを贈る、といったギフトにも喜ばれそうだ。「おみやげやプチギフトとしても、心温まるものになる」と山崎氏。pomrieは、雑貨専門店などではスタンプコーナーに、家電量販店などでは年賀状コーナーに置かれるという。いくつかの消耗品やインクがセットにした、パッケージ製品の提供も予定している。
カシオ計算機では、全国の女性営業社員が「使い方から売り場の提案に至るまで」アイデアを練り上げているという。実際に「こんな風に使ってる」という様子を随時、カシオ計算機のWebサイトに掲載していくとのことなので、興味を持たれた方はチェックしてみるとよいだろう。また、2013年10月12日/13日に東京都・浅草で開催される「スタンプカーニバル」にも出展する予定だ。
会見の最後に質疑応答の時間が設けられ、報道陣からの質問を受け付けた。「女性が主導となって開発したとのことですが、開発期間と部署の規模などを教えてください」との質問に、尾澤氏は「オフィシャルなプロジェクトチームが組まれたわけではありませんでした。2011年の秋に企画が持ち上がり、年末にかけて開発部と営業部の承認を得て、製品化が決まりました」と回答した。
開発当初、社内の男性陣からの反応が冷ややかだった点について聞かれると、村田氏は「最初は『スタンプの何が楽しいの』と言われることもありました。でも実際にアプリができあがって、写真がスタンプになる面白さが伝わると、理解してもらえました。デザインを担当する部署のお父さん方からは、子どものスタンプを作りたいと言ってもらえています」と話した。
実勢価格は、USBモデルの「STC-U10」が6,000円弱、Wi-Fi/USBモデルの「STC-W10」が8,000円弱になる見込み。製品にはスタンプ作成の基本キットとインク(900円程度の品)が同梱される。
日本ホビー協会によれば、手作りホビー市場は出荷ベースで約2,000億円規模とされている。カシオとしても、pomrieをはじめとする製品を伸ばしていきたい考えだ。さらに新しい製品の企画も進行しているという。尾澤氏は「さまざまなショップ様ともお話しさせていただいております。今後の製品にも、ぜひご期待いただければと思います」と締めくくった。