東京商工リサーチは8日、2013年度上半期の「コンプライアンス違反」関連倒産の調査結果を発表した。
同調査は、建設業法、貸金業法などの業法違反や金融商品取引法などの法令違反、粉飾決算、脱税、詐欺・横領、不正受給などが倒産の一因となった事例を対象にしたもの。
2013年度上半期にコンプライアンス違反を一因にした倒産は前年同期比28件(40.0%)増の98件。なお、2013年1~9月累計は同5件増の139件で、このうち1~3月累計は同23件減の41件と前年同期を下回っていたものの、4月以降に急増したことがわかった。
同社は急増した背景として、中小企業の業績回復の遅れを指摘。倒産抑制に効果を発揮した中小企業金融円滑化法の下で、企業の経営内容が以前より表面化しやすくなったという事情も重なり、「コンプライアンス違反の発覚が金融支援に影響を及ぼした」と分析している。
倒産98件の負債総額は799億2,800万円で、前年同期の642億2,400万円を24.4%上回った。負債額別に見ると、負債1億円以上5億円未満が前年同期比13件増の37件で最多、次は負債1億円未満で同9件増の32件と、小・零細企業の増加が目立った。一方、負債10億円以上の大型倒産は前年同期比4件増の18件だった。
主な倒産事例としては、個人から預託金を集めて不動産開発分譲を行っていたが、トラブル発生から多数の訴訟を抱えていたZKR(大阪府・負債197億円)、循環取引などで粉飾決算に手を染めたアクロス(埼玉県・同70億円)、10年以上前から粉飾決算を続けていた宮野(岡山県・同38億円)などがある。
違反内容別では、脱税や滞納など「税金関連」が28件で最多。次いで、不正な会計処理を行い虚偽の決算報告を作成するなどの「粉飾」が17件と前年同期(6件)の約3倍に急増した。このほか、「詐欺・横領」が6件、診療報酬や助成金などの「不正受給」が5件、公共事業などの競争入札で事前に業者間で入札価格や落札者などを決める独占禁止法違反の「談合」が2件、業務違反などの「その他」が36件となった。
産業別に見ると、サービス業他が27件でトップ。以下、建設業20件、卸売業16件、製造業13件、運輸業9件、小売業5件、不動産業3件、情報通信業2件、金融・保険業2件、農・林・漁・鉱業1件と続いた。トップのサービス業他の内訳は、飲食店5件、診療所などの医療業4件、持ち帰り・配達飲食サービス業3件、ホテル・旅館などの宿泊業が2件となった。
東京商工リサーチは、2013年度上半期の特徴として粉飾決算など不正な会計処理の急増を挙げ、「コンプライアンス違反関連倒産の増加は、業績改善が遅れた企業の苦悩を映す『鏡』でもある」と指摘している。