会社の中で猫と触れ合うことができる…。そんな会社に勤めることができたらどんなに幸せなことであろうか。今回は、東京都・目黒にあるマース ジャパン リミテッド社を取材した。ペットフードの輸入と販売を行う同社には、社内にキャットルームがあるとのことだ。
マース ジャパン リミテッドとは
マース ジャパン リミテッドとは、米国マースインコーポレイテッド(1911年設立)の日本の拠点として、1976年に設立された会社である。「ペディグリー」や「カルカン」、「シーバ」などの著名なペットフードや、「M&M’SR」や「スニッカーズ」などのチョコレートやスナック菓子、世界初の「Brew-by-Pack(一杯取り)システム」のドリンク製品などで有名である。世界74カ国以上で事業を展開しており、本社は米国のバージニア州にある。
最近では柴犬やトイプードル専用のドッグフードを開発するなど、日本の市場に合った様々な製品に力を入れているとのことだ。
キャットルームを見学!
早速社内に案内してもらうと、実に広々としたキャットルームが。同社のペット事業における理念は、"A Better World for Pets"(ペットのためのより良い世界)で、お客様たちの大切な家族であるペットと同様に、自分たちのペットも大切にしようという考えが根幹にあるという。
しかしながら、同社の社員さんの中にも様々な事情からペットを飼うことができない人が存在する。そういった人たちのためにも、犬や猫と触れ合う機会を持ってもらおうという目的の元、このキャットルームが設置されたとのこと。
キャットルームで暮らしている猫は2匹。アメリカンショートヘアの「ウィスカー」君と、日本猫の「権之助」君。二人とも男の子で、年齢は共に8歳だ。
実際にキャットルームに入室させてもらうと、ウィスカー君は社交的な性格なのか、わざわざこちらまで挨拶に来てくれた。去勢手術が終わっている男の子は太りやすい体質になるが、同社では栄養管理をしっかりと行っているため、ウィスカー君はとてもスリムで健康的な体格をしていた。
権之助君はキャットタワーでくつろいでいた。キジトラ模様が美しい男の子で、動物の愛護センターからゆずりうけた猫ちゃんとのこと。猫らしいのんびりとした性格なのか、キャットタワーのてっぺんでのんびりしていた。
キャットルームの内部は実に広々としていて、猫たちが快適に過ごすことができる設備が完璧に整っていた。空気清浄機や清潔なトイレ、それぞれに用意されたキャットボックスやタワーなどなど。ウィスカー君も権之助君も、実にのびのびと生活していた。
また、隣接している会議室へ猫が自由に移動できる通路も作られていた。会議室の中を見せてもらうと、そこにはなんと立派なキャットウォークが。高いところが大好きな猫にとっては垂涎ものであろう。
ペット同伴制度がある
また、同社にはペットを飼っている人たちのための「ペット同伴制度」というものもあるという。全体の社員の約2割が何らかのペットを飼っており、犬や猫はもちろん、モルモットやモモンガ、カメやウサギなど、その種類は多岐にわたる。この日、同伴出勤していたペットたちを早速取材してみた。
木村福助君
まずご挨拶ができたのは、豆柴の福助君だ。とても小柄な男の子で、小さなボールをパフパフとならしながら元気よく遊んでいた。人見知りしない性格のようで、取材班に対しても人懐っこく挨拶してくれた。
会社につれてくる際は、車を使い、きちんとケージに入れて出勤するとのこと。同社のビルには、他の階などに別の会社が入っているため、他社の職員さんたちに迷惑がかからないような配慮も当然のことながらなされていた。
今井姫ちゃん
また、小柄な女の子も出勤していた。今井姫ちゃんというワンちゃんで、お母さんに抱っこされてうっとりした表情を見せてくれた。
お家には姫ちゃんの他にビーグル犬の「クー」ちゃんという子がいるそうだが、とても元気いっぱいであるため、今回はおとなしい性格の姫ちゃんを連れてきてくれたとのことだ。
長谷川ブランちゃん
そして大きな美人ワンコも登場。長谷川ブランちゃんという名前で、体重は23キロある大型のワンちゃんだ。ブランちゃんもとても人懐っこい性格で、ご挨拶しようとかがむとカメラのにおいを一生懸命かいでいた。
「触っていいですか?」とそっと体に触れてみると、まるでシルクのような手触りで、素人目にもかなりしっかりとした手入れがされていることがわかった。
ペットカレンダーを作成するといった試みも
このように、社員が飼っているペットをとても大切にする会社であることがわかるが、同伴出勤以外にもカレンダーを作成するといった試みをしているそうだ。
年に一度、社員が飼っているペットの写真を集め、ペットカレンダーを作成するとのこと。実際に見せていただくと、一カ月ごとに10~12枚の愛情あふれる写真が紹介されている。写真の下には社員の苗字とペットの名前が書かれており、飼い主にだけ見せる安心しきった表情のペットを見ているだけで癒やされることであろう。
社員さんにインタビュー
このように、ペットのための様々な試みを行っているマース ジャパン リミテッド。今回の取材で、同社の社員さんにインタビューを行うことができた。応じてくれたのは、同社学術部マネージャー・獣医師の川重結子さんと、広報室広報主任の曲山博子さんだ。
――御社の商品といえば、「ペディグリー」や「カルカン」など、犬猫の飼い主さんにとっては「定番」ともいえるフードが多いですが、こうした定番商品を生み出すにはどのような努力が必要だったのでしょうか?
「これらのブランドは80年代から販売されており、お客様の信用と期待を裏切らない良質な製品を作り出し続けることで、今も「定番」商品として、ご愛顧いただけているのだと考えております。
また、当然のことながら、おいしく食べてもらうために味にもこだわっております。専門の調査会社に依頼し、たくさんの猫ちゃんに試食してもらい、その実験結果を製品に反映させています。また、弊社の拠点は世界中にあるため、海外支社からもらうデータやイギリスにある研究所のデータも使用しています」(川重さん)
――おいしさにこだわったとのことですが、例えば定番商品の「カルカン」を、猫ちゃんたちにより一層おいしく食べてもらうための工夫などあったら教えてください。
「よりおいしく食べてもらうには、やはり温めることが大切です。例えば、カルカンのウェットフードを与える際、半分だけ残してあとは冷蔵庫で保管する飼い主さんが多いかと思われます。でも、その残ったものを与える時、フードの温度は0℃前後。猫ちゃんは、そのくらいの冷たいものはあまり食べてくれないのです。
猫ちゃんが一番ガッツリ食べてくれるのは、フードが38~40℃くらいの温度のとき。これ以上の温度になると、冷たいフードのときと同様に食いつきが悪くなります。
その理由には、獲物の体温と関係しているという説があります。つまり、例えば猫の獲物であるネズミが病気で高熱を出している場合、猫がそのネズミを食べてしまっては体に毒なわけです。そのため、食べるものの温度が38~40℃よりも高いとフードへの食いつきが悪くなるのでは、と言われています(諸説あります)」(同)
――ありがとうございます。最後に、これまでマース ジャパン リミテッド社で働いてきてやりがいがあったことや、うれしかったことを教えてください。
「会社のイベントで、お客様から"毛づやがよくなったよ"とか"よく食べるようになったよ"といったお声をいただくとやはりうれしいですね」(同)
「私達は被災したペットたちのためのボランティア活動をしているのですが、福島のとあるシェルターで、スタッフさんがうちの製品であるシーバを猫たちにあげているのを見たときがうれしかったですね。こういう時に、特にやりがいを感じます」(曲山さん)
「お客様にも、お客様の家族であるペットにも満足してもらえる製品を、今後も作り続けていきたいと考えております」(川重さん)
――ありがとうございました。