「らせん階段」から降りてくる新郎新婦(イメージ)

ゆるやかな曲線のらせん階段に、白い広々としたエントランス、緑豊かな屋上庭園――。このほど結婚式場として貸し出しを開始したその建物は、なんと区役所の総合庁舎。ユニークな庁舎活用に取り組む目黒区役所(東京都目黒区)を取材した。

「南口エントランス」で祝福を受ける新郎新婦(イメージ)

建築家・村野藤吾氏が設計した庁舎

目黒区の総合庁舎は東急東横線・東京メトロ日比谷線の中目黒駅から徒歩5分のところにある。外から見ると、アルミの鋳物を用いた白い外壁が特徴的だ。日本を代表する建築家・村野藤吾氏(1967年文化勲章受章者)による設計で、旧・千代田生命相互会社の本社ビルとして1966年に完成。同社の破綻後に目黒区が買い取り、2003年から総合庁舎となった。

アルミの外壁が特徴的な目黒区役所

天窓がある大理石のエントランスホール

結婚式に使用できる施設は、「南口エントランス」「らせん階段」「目黒十五庭(屋上庭園)」。現在使っている役所の庁舎を式場として貸し出すのは、全国的にも珍しいとのこと。

広々とした「南口エントランス」

庁舎の本館3階南口から足を踏み入れると、エントランスホール(400m2)が広がっている。床も壁も大理石張りの広々とした空間だ。左右でデザインの異なる窓から光がさす。高い天井には、ガラスモザイクで"春夏秋冬"を表したという天窓がある。

ゆるやかな曲線のらせん階段

エントランスを抜けると、奥にらせん階段が見えてくる。フリーハンドで描かれたという階段のゆるやかな曲線が美しい。新郎新婦が降りてくる演出や、写真撮影にもよさそうだ。

美しい曲線の「らせん階段」

中目黒の街を望む、緑豊かな屋上庭園

同館の屋上(6階の上)にあるのが、中目黒の街を望む緑豊かな目黒十五庭(屋上庭園)。木々や草花の緑色が、庁舎のアルミの白い壁とブラウンの地面に映える。庭園内にある鉢やイス、タイル、ブロックなど細部のデザインも一つひとつが味わい深い。

ちなみにこの場所はAKB48の20thシングル「桜の木になろう」(2011年)のミュージックビデオ(是枝裕和監督)の撮影場所としても使用されたという。

中目黒の街を望む目黒十五庭(屋上庭園)

なお、フォトウェディングについては、区の業務に支障のない範囲でこれら以外の場所も利用可能とのこと。

「すばらしい建築を活用できないか」若手職員らが企画

「目黒区総合庁舎ウェディング事業」を企画した(左から)藤懸大也さん、平林いづみさん、角田亜紀彦さん、小野剛さん

この庁舎での結婚式を企画したのは、20代~30代の若手職員たち。区の税収以外の収入を確保するために既存の考えに縛られない若い発想が採用されたという。メンバーは庁舎管理課の平林いづみさん(32歳)、行革推進課の小野剛さん(29歳)、高齢福祉課の藤懸大也さん(26歳)、教育指導課の角田亜紀彦さん(25歳)。

「庁舎のすばらしい建築を何かに活用できないか」と企画が進められた。アイデアのきっかけの一つは、平林さんが映画『SEX and the CITY』で見た市民会館を会場にしたささやかな結婚式だった。「ゴージャスな結婚式もいいけれど、役所のようなところでシンプルに挙げるのもいいかも」と庁舎を結婚式場としての活用することを思いついたのだそうだ。

「結婚式で婚姻届を直接その場で提出できるのは、区役所ならでは」と小野さん。式の中で事前に提出した婚姻届の受理証明書の受け取るセレモニーもできるという(実施には条件あり)。

結婚式の運営は民間3事業者に委託

結婚式に利用できるのは土日祝日。午前(9時~13時)、午後(13時~17時)の4時間が1枠となっている。来賓は最大60人。目黒区民以外の結婚式でも利用できる。

ウエディングの運営は区が選定した3事業者(ビットマップ、みすゞ建設、ユニゾン)が行う。費用は15万円~30万円代となる予定とのこと。

経費やプランは事業者によって異なる。問い合わせ先など詳細は目黒区ホームページ内で確認できる。