矢野経済研究所は、一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の戸建住宅(築10年以上)に居住し、子供が独立した60~75歳の男女823名対して住まいに関するアンケート調査を実施した。
60歳以上のシニア層を対象に行われた今回の調査では、子供の独立前後の部屋の活用度合いの変化(単数回答)が、子供の独立前に「活用しきれていない」と回答したシニア層は33.8%であったのに対し、独立後では81.9%に達しており、子供独立後はマイホーム稼働率(※)が低下し、部屋を活用しきれていないシニア層が多いことがわかった。
そして、将来的に、あるいは現実的には難しいかもしれないが「住み替えも考えたい」などの潜在的な需要を含め、全体の45.3%のシニア層が住み替えの意向(単数回答)を示している。その理由(複数回答)としては、「家の老朽化」や子供の独立による「家が広すぎる」、「バリアフリーの必要性」などが挙げられており、特に子供独立後に部屋の活用度合いが低下している層では、「家が広すぎる」をより強く感じる傾向にあるようだ。
住み替えに対する潜在需要のうち、現実的に住み替えられないとするシニア層では、「新たに購入資金を工面できない」(52.2%)、「住み慣れた地域を離れたくない」(48.9%)などの理由(複数回答)が上位に挙げられており、住み替えの際、購入資金が問題となる一方で、居住している地域についても重視することが示唆されている。
東北大学の特任教授で、エイジング社会研究センターの代表理事を務める村田アソシエイツ代表の村田裕之氏は、「住み替えは、体力的に健康で、判断力があるうちに行うべき。先手の対策をとっておくことが自分のためにも家族のためにもなる」とコメント。「賃貸して住み替えというパターンが多いという事実はある。その一方で、あまり高くない中古マンションを買ってバリアフリーのリフォームをして使うという方法はお勧め」とシニア層の住み替えに対してアドバイスを送っており、特に住宅選びで気をつけるべきポイントとして具体的に、
- 将来の資金を考え、中古マンションのリフォームといった手段をとり「安く」手に入れて「安心」の住まいを選ぶ必要性
- 高齢になって一番困る外出/買い物/通院の問題を軽減するため駅やスーパー、病院に「近い」場所を選ぶ必要性
- 階段や、家の手入れなども高齢になると大きな負担になるため、「コンパクト(小)」な家を選ぶ必要性
などを挙げている。
60代からの住み替えは大きな決断ではあるが、子供の独立後、現実的な問題である資金調達が解決されるサービスがあれば、検討してみる価値は十分にあり、その際は「安(安全・安心)」「近(駅近・住み慣れた地域)」「小(コンパクトな住まい)」をキーワードにするのがベストといえそうだ。
※マイホーム稼働率とは、本調査において自宅にある部屋数について活用度合いをみるための指標であり、現在の全部屋数に対して活用している部屋数の比率を算出し、子供の独立前と後とで比較している。