オリックス生命の医療保険「キュア」「キュア・レディ」が9月にリニューアルされました。そこで、同社商品開発部の越川直毅部長に、民間医療保険の考え方、「新キュア」「新キュア・レディ」のポイントなどについて伺いました。
「医療保険」に入っていたほうがいい理由とは?
――日本ではすべての人が公的な健康保険に加入していて、医療費の自己負担額は最大で3割ですし、高額療養費制度によって1カ月の負担はどんなに多くても約9万円と、世界の中でも非常に手厚い医療制度を持っています。その中にあって、民間保険会社の医療保険はどのような位置づけになるのでしょうか?
確かに日本の健康保険制度は手厚いのですが、それはいわゆる"保険のきく"範囲に限られます。万一入院ということになると、差額ベッド代(※)や、パジャマ、タオルといった日用品など、さまざまな費用がかかります。また、職業によっては入院中、働けないことで収入が減ることも考えられます。
民間の医療保険は、そうした費用負担や収入減に備えるものといえます。
※ 差額ベッド代がかかるのは、患者が差額ベッドを希望した場合のみ。一般病床に空きがないなど医療機関側の理由で利用した場合は、差額ベッド代はかからない
――医療保険はすべての人に必要なのでしょうか?
入院に伴う支出が預貯金などでまかなえる人には、必要ないかもしれません。逆に、若い人などあまり貯蓄がない人ほど、医療保険の必要性は高いといえます。
だからといって月々の支払保険料が負担になるような保険料では払い続けることはできませんよね。今の医療保険は保険料が1カ月当たり数千円と負担とはなりにくい金額に抑えられています。であれば、入っておいたほうが安心であることは間違いありません。
これまでの「キュア」の特長って?
――では、「キュア」について伺います。これまでの「キュア」が登場したとき、保険料が安い点が注目されましたが、「キュア」の特長は何でしょうか。
それまでの医療保険は、入院1回当たりの入院給付金支払日数の上限が120日でした。しかし、すべての病気に120日は必要ないのではないか、ということから、入院期間が長くなりがちな、がん(悪性新生物・上皮内新生物)、心疾患、脳血管疾患の「三大疾病」に、糖尿病、高血圧性疾患、肝硬変、慢性腎不全を加えた「七大生活習慣病」による入院の場合は120日、それ以外は60日にすることで必要な保障は確保しつつ保険料を抑えたのが最大の特長です。
もう一つは、手術給付金を一律入院日額の20倍にしたことです。それまでは、手術の種類によって10倍・20倍・40倍となっていました。入院給付金日額1万円の場合、10万円、20万円、40万円となるわけです。そうすると、契約者の中には「こんなに大変な手術したのになんで10万円なんだ」という人が出てきます。また保険会社のほうも、お医者さまが手書きされた診断書から、その手術が10倍、20倍、40倍のどれに該当するかを判断するのに時間がかかることもあったんですね。
それを「一律20倍」とシンプルにしたことで、契約者にわかりやすくなりましたし、保険会社の事務コストも軽減され、保険料を下げることにつながっています。
「新キュア」はどこが変わったの?
――そうした点が「キュア」のヒットの要因なのですね。では「新キュア」はどこが変わったのですか。
「キュア」は、「七大生活習慣病」の場合の入院給付金支払限度日数が120日ですが、理想は"無制限"ですよね。ただ、すべての病気で無制限にすると保険料がとても高くなってしまうので、「三大疾病」を無制限にしたのが「新キュア」です。
――ニーズの高い部分を手厚くしたわけですね。
はい。「三大疾病」は無制限、それ以外の4つの生活習慣病は支払日数が60日延長されるタイプをご用意しました。「七大生活習慣病」以外の病気・ケガによる入院は60日型か120日型かを選べます。
(※ 対面による募集の場合、七大疾病による入院給付金支払限度日数を無制限とするプランもお選びいただけます。)
――入院給付金支払日数が無制限というのは、保険会社にとってリスクが高いように思えますが。
今回のリニューアルの最大のポイントである"無制限"については、リスク分析やさまざまな検証を行い、いろいろな議論を重ねてこの仕組みを作りましたのでご安心ください。
――無制限というのは、契約者にとってとても心強いですよね。ところで、長期で入院した場合、入院中でも給付金を請求することはできますか。
もちろん可能です。請求のタイミングも、特に決まっていませんので、いつでもご請求いただけます。
――手術給付金も変わりましたね。
これまでの「キュア」は、約款に書かれた88分類の手術が手術給付金の対象だったのですが、「新キュア」は、公的医療保険制度に連動するようにしました。つまり、健康保険が適用される手術であれば手術給付金が支払われるわけです。これによって、対象となる手術の種類が大きく増え、何が給付金の対象となるかもわかりやすくなりました。
――がん診断治療給付金が特約でつけられますが、これはどういうものですか?
がん診断治療給付金は、初めてがんと診断されたときだけでなく、その後、がんの治療を目的として入院を開始したときに給付される一時金で、入院給付金日額の100倍を限度として設定できます(支払回数無制限。ただし2年に1回を限度とします)。がんにはいろいろな治療法があるので、まとまった金額の治療給付金があれば、お金の心配をせずに納得できる治療法を選ぶことができますし、それが精神的な安定にもつながりますよね。
そのほか、健康保険の適用されない治療や薬、乳房の再建、ホスピスの費用など、自由にお使いいただけます。
――一定の条件に該当したら保険料の支払いが免除される仕組みも導入されました。
がん、急性心筋梗塞、脳卒中で所定の状態に該当された場合、その後の保険料の支払いは免除され、保障は継続するという仕組みは、死亡保険にはついているのですが、死亡保険と医療保険にセットでご加入いただくことが多いので、医療保険にも導入することにしました。
――収入が得られなくなった状態で保険料を払い続けるのは大変ですから、免除されるのはありがたいですね。先進医療特約はいかがでしょうか?
今回、支払限度を1,000万円から2,000万円に引き上げました。また、先進医療特約は10年で更新という商品もありますが、「新キュア」は以前から終身保障です。
女性にとってさらに心強い「新キュア・レディ」
――「キュア・レディ」も同時にリニューアルされました。
「新キュア・レディ」は女性特有の病気やがんによる入院の場合、入院給付金が上乗せされます。女性の病気はデリケートなものが多く、個室を希望されるケースが多いので、それに対応したものです。帝王切開による入院なども対象です。
――これから出産する女性にとっては心強いですね。「新キュア」「新キュア・レディ」がターゲットにしている年齢層などはありますか。
特にありません。今回のリニューアルで「新キュア」も「新キュア・レディ」も保険料をお求めやすくしていますので、どの年齢層の方でも加入しやすいのではないでしょうか。
――「新キュア」「新キュア・レディ」の特長、よく分かりました。ありがとうございました。
執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。
http://www.m-magai.net/