NEC(日本電気)、田中化学研究所、積水化学工業は1日、独立行政法人産業技術総合研究所と共同で、新規鉄マンガン系正極を使った次世代リチウムイオン電池を開発したことを発表した。2020年ごろの実用化を目指して研究開発を進めていくとしている。
今回の次世代リチウムイオン電池は、現在実用化されているマンガンスピネル系正極を使ったリチウムイオン電池と比べて、約1.7倍のエネルギー密度(271Wh/kg)を持つという。これにより、リチウムイオン電池の低コスト化、環境対応自動車のさらなる航続距離延伸、定置用蓄電システムの小型軽量化などに貢献するとしている。研究開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」の支援を受けて行われたもの。
研究では、層状岩塩構造のリチウム鉄ニッケルマンガン酸化物を新たに開発。原料として、安価な炭酸リチウムを使用する独自の合成手法により、kgスケールの合成に成功。この正極材料で、従来のマンガンスピネル正極材料(容量110mAh/g)の約2.2倍となる、容量密度247mAh/gを実証した。
NECでは、開発した新規鉄マンガン系正極の性能を引き出す負極として、導電剤に炭素系材料のカーボンナノホーンなどを使用した酸化シリコン系負極を開発。さらに積水化学工業と共同で、高電圧耐性の高いフッ素化エーテルを含む電解液を開発し、鉄マンガン系正極を使ったリチウムイオン電池を最高4.5Vまで充電、安定動作を確認したという。
そして上記の鉄マンガン系正極、酸化シリコン系負極、耐高電圧電解液を使って、8Ah級のラミネートセルを試作。マンガンスピネル系正極を使用したリチウムイオン電池の、約1.7倍となるエネルギー密度271Wh/kgを実証した。