9月20日から日本を含む世界各国で発売された「iPhone 5s」と「iPhone 5c」。ロイター通信などが伝えたところによると、発売から3日間のうちに世界で900万台以上を売り上げ、前モデル「iPhone5」を上回り歴代モデルで最高の滑り出しを見せているという。特に「iPhone 5s」は世界的に品薄状態になっており、注目の高さを伺わせる。

そして、日本でも「iPhone 5s」「iPhone 5c」の人気は過熱しており、発売日の9月20日には各地のApple Storeや販売する通信キャリア各社のショップに長蛇の列ができたほか、人気モデルは瞬く間に売り切れ、予約販売となっている状態だ。家電製品の売上ランキングを発表している「BCN ランキング」が公表したデータによると、「iPhone 5s」「iPhone 5c」の発売後3日間の販売数は前モデル「iPhone5」のおよそ1.5倍を記録し、そのうち83.2%を「iPhone 5s」が占めているとのこと。キャリア別の販売数では、ソフトバンクが好調だという。

ところで、多くの購入検討者にとって「どのキャリアに人気が集まっているか」というデータは、キャリア選択の参考にしたい指標のひとつなのには疑いの余地がないが、この「BCN ランキング」が公表するデータを参考材料にしようとする場合には、慎重に考える必要があると言える。

「BCN ランキング」は家電量販店の実売データに基づいてランキングを作成しており、生活家電やデジタル家電などの人気やトレンドを把握する上で欠かせないデータであるが、スマートフォンの人気を測るのには最適な指標だとは言えない部分がある。なぜなら、「BCN ランキング」のデータには、いわゆる"オフィシャルショップ"のデータが含まれていないのだ。

つまり、今回公表された「iPhone 5s」「iPhone 5c」のランキングに関して言えば、販売する3キャリアのオフィシャルショップ(ドコモショップ、auショップ、ソフトバンクショップ)とメーカーのオフィシャルショップであるApple Storeでの販売数は、ランキングのデータに含まれていない。また、大手家電量販店は大都市、主要都市に店舗を構えていることから、購入者の地域属性も都市圏居住者に集中することが考えられ、地方都市の販売実態などが十分反映されていない可能性も高い。

「iPhone 5s」「iPhone 5c」の販売直後は、多くの購入希望者がApple Storeや全国各地のキャリアオフィシャルショップで購入しているとみられ、量販店のみの販売データに基づいたランキングは、販売実態を忠実に反映させたものとは言い切れないのだ。

Appleや通信各社は端末の販売台数に関する詳細を随時公表することはないため、各キャリアの販売動向などについては今後各社の決算発表などの際に語られると見られるが、現時点において、「BCN ランキング」のデータだけを頼りに販売する各キャリアの勝敗を決してしまうのは時期尚早と言えるのではないだろうか。

今後は各社がネットワーク整備をさらに進め、ドコモはspモードメールの対応を10月1日から開始、ソフトバンクはプラチナバンドのLTE化を2014年に開始するなど、現時点で各社の"弱点"と言われる部分にも対応が進み、各社のサービスは今後さらに拡充する。各社の販売シェア争い、ネットワーク・サービスの品質競争は今後本格化するものとみられ、購入検討者は切磋琢磨する各社の戦略を十分に見極めたうえでキャリア選定をすべきだと言えるだろう。