国土交通省はこのほど、各地方運輸局鉄道部長に宛てて、「軌道の整備基準値の緊急点検について」と題する9月25日付の文書を、鉄道局施設課長名で送った。

軌間の整備基準値の適用に誤りがなかったかどうか、点検するように指導する内容の文書だという(写真はイメージ)

文書では、9月19日にJR函館本線大沼駅構内での貨物列車脱線事故にて、「実施基準で定めた整備基準値を超える軌間変位があった事実が確認された」と指摘。本線・副線で基準値を超えた軌間変位(レール幅の広がり)がありながら、必要な補修が行われていなかった箇所についてJR北海道に報告させた際、整備基準値の誤認が判明したとしている。

これは、国鉄時代の1985(昭和60)年に行われたスラック縮小にともない、整備基準値が変更されたのを正しく理解していなかったことによるもの。スラックとは、カーブにおいて車両の走行をスムーズにするために軌間を拡大する設定値のことで、軌間の変位量は、実際のレール幅の測定値からスラックを差し引いて算出され、これが整備基準値(判定値)を上回っていた場合に補修が必要になるという。

国鉄時代に設置した区間(スラックの設定が広い区間)では本来、いまより狭い旧基準値を適用しなければならない。ところがJR北海道では、誤ってスラック縮小後の整備基準値(旧基準値より広い値)を適用して判定していた例が多く、結果として本来は基準値を超えているのに基準値以内と判定された箇所が170カ所にのぼることが判明した。

同文書では、JR各社をはじめ、「スラック縮小によって整備基準値を変更した鉄道事業者」を対象に、整備基準値の誤用がなかったかどうかを点検をするようにと指導。誤用により、実際には整備基準値を超えているものについては補修を行い、その箇所数を報告するように、誤用がなかった場合にもその旨の報告を義務付けている。報告期限は9月30日。