レノボ・ジャパンは、モータースポーツの現場で同社のPCがどのように活用されているかを紹介する、記者向け説明会を開催した。場所は御殿場市の「ホシノレーシング」のラボ。当日は、ホシノレーシングのチーム総監督である星野一義氏、レーシングドライバーの松田次生選手がラボを訪れ、現場の目線からレノボのThinkPadのレースにおける使用シーンと、その使用感を紹介した。

チーム総監督 星野一義氏とレーシングドライバーの松田次生選手

ホシノレーシングのラボのスタッフ

フォーミュラの現場で活躍するThinkPad

レノボ・ジャパンは、「スーパーフォーミュラシリーズ 2013年」でTEAM IMPULとのメインスポンサーシップ契約を発表している。以前よりTEAM IMPULでもノートブックPCをレースやセッティングの現場において活用していたが、ThinkPadと、それ以前のノートブックPCではいくつか使用感で異なる点があったという。大きな違いとして挙げたのは、雨天時の運用だ。ThinkPadは防水仕様ではないが、その他のノートブックPCと比べると多少の雨でも気にせず使えると言う。以前のノートブックPCでは、ビニールを被せるといった対処をしていたが、ThinkPadに変わってからはそのようなことが無くなったのことだ。また、整備を行うラボ内においては、粉塵にも注意しなければいけなかったが、そうした点でもThinkPadは、多少ラフに扱っても問題のないところが気に入っているとのことだ。

スーパーフォーミュラに参戦するLenovo TEAM IMPULのマシン

オープンホイール・フォーミュラカー。写真は松田次生選手が駆る20号車

サイドポッドにはメインスポンサーのレノボのロゴ

こちらは2013年 SUPER GTシリーズ GT500クラスに参戦しているカルソニック IMPUL GT-R。レノボ・ジャパンもスポンサードしている

また、どのような用途で用いられているかと言うと、ラボ内においてはエンジンのベンチレーションやサスペンションの設定などでその都度データを取り、PCにて解析を行ったり、コース上においても、走行のたびにデータを取り、そのデータを次回の走行に活かすといったことが行われているとのことだ。

サスペンションのセッティングなどでもデータ、そしてPCによる解析を行っている

こうした走行データの取得とPCによる解析は、スーパーフォーミュラのみならず、様々なレースで行われている。星野一義氏曰く、「今やPCでデータを取らないということでは成り立たない」のがレースの現場だ。ピットに入る毎に即座にデータが解析され、グラフ化され、ホシノレーシングには松田次生、そしてジョアオ・パオロ・デ・オリベイラという2名のドライバーがいるが、2人の走行データを重ねることで、個々のドライヴィングスタイルの確認するといった作業を行いながら、Q1、Q2と進んでいく。

写真はデモデータ。各種センサーから得た情報をグラフにプロット。2人のドライバーのデータを重ね合わせることで、ドライバーのクセやラップを詰めるポイントを検討していくのだそうだ

走行データの取得の際に用いるセンサーは、現在のスーパーフォーミュラマシンの場合、シャシーだけで20~30個、エンジンその他を含めればおよそ100個のセンサーが、刻々と変わるレーシングマシンの状況を記録していくのだと言う。松田次生選手や監督は、「ごまかしが効かない」と笑うが、実際にそうしたところを振り返り、ラップタイムを詰めていくのが現代のレースの現場なのだろう。

F1などではワイヤレスでリアルタイムにデータを取得する場合もあるが、スーパーフォーミュラの場合は有線接続が用いられている。そのため、走行中は車体に搭載されたフラッシュメモリに蓄積し、走行後にそのデータをPCにダウンロードする作業が生じる。インターフェースは、コックピットの右後方に用意されており、車体側は専用の端子、PC側はイーサネットとなっていた。データ量は、取得するデータの種類にもよるが、およそ50~60MBと小さいものの、グラフ化のために、以前の非力なノートブックPCでは処理が重く感じていたそうだ。これも最新のThinkPad(当日はX230が用いられていた)なら素早く処理できるようになったと言う。

コックピット後方にあるインターフェースからPCと接続し、車内に蓄積されたセンサー情報をダウンロード

また、実際のレースで用いられるチームトレーラーも見ることができた。1階の内部はミーティングスペース、レーサーのプライベートスペース、そして作業スペースといったように分かれており、そこで用いられているディスプレイなどもレノボの製品で統一されている。ほか、事務所のPCもレノボ製品が利用されており、デスクトップでは一体型のThinkCenter、ノートブックではXシリーズやTシリーズなど、パフォーマンスの高いモデルが置かれていた。

星野一義氏自らチームトレーラーを紹介。そこで用いられているノートPCや情報を表示するディスプレイもレノボ製品

レーシングドライバーが走行の合間にリラックスするためのスペースもある

事務所のパソコンも、デスクトップ、ノートブックともレノボ製品

プロの現場ではWindows用のソフトウェアが動くタブレットが求められる

ThinkPadを実際に使っての印象も聞けた。まず、ThinkPadのクラムシェル型モデルでは液晶ディスプレイが180°開けることが、立った状態で複数人で画面を覗きこむような場合に便利だったり、レーシングカーのコックピット内でデータを確認する際に快適とのことだ。とくに後者、レーシングカーのコックピットは「速く走るためだけのクルマ」であり、想像以上に狭く、開閉角度が限られるノートブックPCの場合、かなり窮屈になるとのことだ。その点、ThinkPadを180°開けば、目とディスプレイの位置をドライバーが調節できるだけのスペースが空く。そのうえで、ThinkPad Helixを愛用するレーシングドライバーの松田次生選手は、Helixがキーボードを取り外してタブレットになる点で、さらに快適であると評価していた。

クラムシェル型ThinkPadをコックピットで用いたイメージ。180°開くため、窮屈な感じはないとのこと

Helixのタブレットモードではタッチ操作も可能になって快適に

実戦で用いるのがThinkPad Tablet 2に防滴カバーを付けたモデル

また、データの解析に用いるソフトウェアがWindows用のソフトウェアである点から、Windows + IAタブレットである点も重要視されていた。コンシューマ向けにはAndroidやiOSが普及してるが、専用のソフトウェアを要するプロフェッショナルの現場ではWindowsが動きつつ、タブレットのように可搬性が高いことが求められるようだ。