人気アニメ『機動戦士ガンダム』などで知られる富野由悠季監督が、兵庫県のX線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」のスペシャルサイト内で、同施設・石川哲也センター長との対談を行い、そのインタビュー記事が掲載されている。
「SACLA」は、独立行政法人理化学研究所が兵庫県の播磨科学公園に建設した全長約700メートルに及ぶX線自由電子レーザー施設。ミリ(mm)、マイクロ(micro)、ナノ(nano)に続く極小の単位ピコ(pico)の世界を見ることができる巨大な顕微鏡を備えた施設で、7月3日にスペシャルサイトがオープン。各界の著名人をゲストに迎えた「SACLA×GENIUS」の第2回目のゲストとして富野監督と対談が行われ、富野監督は「SACLA」とアニメーション技術をシンクロさせた話題から、スタジオジブリ最新作『風立ちぬ』に描かれたエンジニアリングの現実と宮崎駿監督との共通点、さらに『Gレコ』や『Gのレコンギスタ』と呼ばれている自身の『ガンダム』最新作についても言及している。なお、富野監督と石川センター長の対談は、2011年の漫画雑誌『ガンダムエース』(角川書店刊)以来、2度目。
「僕は基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから」と自ら公言している富野監督は、『ガンダム』がリアルロボットアニメと評されることについて、「その言葉がどれだけ嘘かということです。旧来のロボットアニメにあったような、『天才博士が一人ですべてを作り上げた』という世界観ではなく、メカニックがいて、設計者がいて、という当然のことをやったからそう言われただけで、あれが現実化されるとは思っていませんよ」と説明。そして「『ガンダム』に「SACLA」を登場させるとしたら?」という問いには、「SACLAはあまりにもリアルすぎる技術なので登場することはあり得ません。『ガンダム』のようなロボットアニメはファンタジーですから、魔法を扱うのです。以上」と答えている。
対談の中で、エンジニアリングに対して関心が高い理由について「父親が戦時中に戦闘機や爆撃機の部品を作るエンジニアだった」ことを明かすと、話は映画『風立ちぬ』へ。富野監督は「本当に見事な映画です。映画史上初めて、近代航空史を、そして技術者の苦悩を正面から描いた映画」と称賛し、ラストシーンを語りながら感極まって涙する場面も見受けられたという。
また、富野監督は「SACLA」の取材の中で新作の物語のヒントを見つけたようで、「特にロボットアニメというジャンルは20年後、30年後の未来を担ってくれる子供たちに向けて作るものだから、自慢気に語っちゃいけないと思うんです。だから、そういう考えをすべて捨てて、『これだったら』という物語を見つけた。その考えに至ったことで、次の新作はかなり自信を持って作っています」と、期待の新作について言及している。