外貨建て資産投資の意義

外貨建て資産を保有する理由としては、1,000兆円を超える国家債務によるインフレの可能性、原発事故や地震に対するリスクヘッジが挙げられる。

しかしながら、2013年3月末の個人金融資産1,570兆円の内、外貨預金は6兆円に過ぎない。

その理由は、ドル・円相場チャートで示されるように長期的な円高トレンドであり、ドル建て資産を保有することは、円預金よりも相対的に高い金利を享受できるものの、為替ヘッジをしない場合、為替差損を被る可能性が高かったからである。

しかしながら、アベノミクスの3本の矢(財政出動策・金融緩和策・成長戦略)に第4の矢とも言える2020年夏季東京オリンピックに向けて、ドル・円相場が上昇トレンドを描く可能性が高まりつつある。

ドル・円相場チャート(※2013年10月以降のトレンドは、筆者の個人的予想)

パラダイムの転換:「ドル安・円高」から「ドル高・円安」へ

ドル安・円高の時代

ドル・円相場は1971年のニクソンショックの360円の時代から、2011年の75円32銭まで、40年間かけて約5分の1まで下落した。

その要因としては、貿易為替面からは1971年の「ニクソンショック」、1985年の「プラザ合意」に象徴される日米貿易不均衡是正であり、資本為替面からは相対的に高インフレ通貨ドルが、低インフレ通貨円に対しての減価、がある。

米国は世界最大規模の貿易赤字国であり、20世紀後半までは世界最大規模の貿易黒字国の日本に対して、ドル安・円高の圧力をかけてきた。

また日本がバブル崩壊以降、低インフレからデフレに埋没したこと、米国が住宅バブル崩壊以降、量的金融緩和でドルの流動性を供給したことで、100円を割り込むドル安・円高局面となった。

ドル高・円安の時代

21世紀の米国は、シェールガス革命により世界最大規模の原油輸出大国になる可能性が高まっていることで、貿易赤字の減少が予想されている。

日本は、原発の稼動低下を受けた原油輸入の急増や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加により、貿易赤字の継続が予想されている。

米国の貿易赤字減少の可能性、日本の貿易赤字継続の可能性は、ドル高・円安を指向する。

米国は住宅バブル崩壊を受けたリセッション(景気後退)から脱却し、量的緩和の出口戦略を模索する状況となりつつある。

日本は、デフレ脱却に向けた異次元の量的・質的金融緩和により、量的緩和の入口に入りつつある。

米国連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の出口戦略を受けた低インフレ予想、日本銀行のデフレ脱却に向けた量的緩和は、ドル高・円安を指向する。

テクニカル分析

ドル・円相場のテクニカル分析では、中期的には「斜行三角形」を形成しており、2007年(安倍第一次政権)の高値124円14銭を、2014-15年頃までに目指す上昇トレンドが予想される。

また長期的には、ダブルボトム(79円75銭-75円32銭)を形成しつつあるので、2022-23年頃、160円処を目指す上昇トレンドが予想される。

参考までに日経平均株価のテクニカル分析では、中期的には2007年(安倍第一次政権)の高値18,297円を目指す上昇トレンド、長期的にはダブルボトム(7603円-6994円)を形成しつつあるので、25,000円処を目指す上昇トレンドが予想される。

消費税引き上げ

国家の税制の変更は、当該国の景気変動と外国資本の流出入に影響を及ぼすので、為替変動要因となる。

ドル・円は、過去2回の消費税引き上げを受けて、円安に反応している。

1989年4月、竹下内閣は消費税(3.0%)を導入した。

ドル・円は、翌年1990年4月にかけて、160円35銭まで上昇した。

1997年4月、橋本内閣は消費税を3.0%から5.0%へ引き上げた。

ドル・円は、翌年1998年8月にかけて、147円64銭まで上昇した。

安倍内閣は2014年4月に消費増税8.0%、2015年10月に10%を予定していることで、ドル高・円安の可能性が高まりつつある。