NECディスプレイソリューションズは24日、グラフィックス用のワイド液晶ディスプレイ3機種を発表した。印刷、写真、アート、DTP、映像など高度なカラーマネージメントが要求される現場向け「PAシリーズ」の新製品で、10月25日より順次出荷を始める。都内では記者説明会が開催された。

NECディスプレイソリューションズから、グラフィックス用プロフェッショナル向けワイド液晶ディスプレイの新モデル3機種が発表された

新モデルは、29.8型の「MultiSync LCD-PA302W/-BK」(2,560×1,600ドット)、27型の「MultiSync LCD-PA272W/-BK」(2,560×1,440ドット)、24.1型の「MultiSync LCD-PA242W/-BK」(1,920×1,200ドット)。いずれもオープン価格で、店頭予想価格はPA302Wが250,000円前後、PA272Wが150,000円前後、PA242Wが120,000円前後となっている。

MultiSync LCD-PA302WとMultiSync LCD-PA272W(写真左)。各モデルとも、ホワイトとブラックの2色で展開する

製品の概要は別記事「NEC、グラフィックスのプロ向けに機能を強化した24.1型/27型/29.8型液晶」を参照いただくとして、ここでは発表会の様子をお伝えしたい。

記者説明会の冒頭、NECディスプレイソリューションズ 商品戦略本部長の中谷久嗣氏が概要を説明。中谷氏はまず、海外におけるNECのデスクトップディスプレイ販売台数シェアに触れ、グラフィックス・アートの分野では2011年の時点で5位(シェア9.1%)の位置につけるなど、事業が堅調に成長していることをアピールした。

NECディスプレイソリューションズ 商品戦略本部長の中谷氏(写真左)。NECディスプレイの製品はグローバル市場でもシェアを伸ばしている(写真右)

同社が展開するPA/Pシリーズは、DTP・Webデザイン、カメラマン・撮影スタジオ、CG・映像・アニメ、設計・開発、宣伝・広報などの業種で広く支持されている。例えば、カラーマネージメント対応なので、コンテンツの制作現場で色調統一が容易になり、印刷現場とのコミュニケーションを円滑に行える。ディスプレイ自体が高画質化したことで、撮影スタジオでも広く使われている。また、紙に印刷しなくてもディスプレイ上で"紙の印刷色"を再現できるため、広告やカタログ商品を扱う企業からも引き合いが強いという。

PA/Pシリーズは、DTP・Webデザイン、カメラマン・撮影スタジオ、CG・映像・アニメ、設計・開発、宣伝・広報などの業種で広く支持されている

従来製品のコンセプトや機能を継承した新製品では、さらなる高画質への機能強化と利便性の向上を図った。特長としては、広色域対応LEDバックライトを採用したことや、「アンチ・スパークリングフィルム」の採用によって、ディスプレイ表面のざらつきを抑えることに成功した。もちろん、高精度で安定した色再現性も実現している。

NEC MultiSync PAシリーズの最新モデルでは、従来製品のコンセプトや機能を継承しつつ、さらなる高画質への機能強化と利便性の向上が図られている

高画質化に対する数々の独自技術

続いて同社モニター開発本部の荒井豊氏が登壇し、機能の詳細について説明。新製品で採用した「GB-R」白色LEDバックライトは、ブルーにイエローを加えて色を表現する従来の白色LEDとは異なり、グリーンとブルーにレッドを加えるタイプ。これにより、従来製品と比べてより純粋な色味が出せるようになったという。荒井氏は「従来の白色LEDでは不可能だった、Adobe RGB相当の色域まで表現できるようになった」と性能をアピールする。

NECディスプレイソリューションズ モニター開発本部の荒井氏(写真左)。新しいタイプの白色LEDであるGB-R LEDなら、Adobe RGB相当の色域が表現できる(写真右)

GB-R LEDを高精度・高効率に用いるため、NEC独自のGB-R LEDバックライトシステムを開発。このシステムにより、長寿命、低発熱を実現できたほか、起動時間も短くなり、経年劣化によるコントラストの低下も回避できるようになっている。

NEC独自のGB-R LEDバックライトシステムにより、長寿命、低発熱、起動時間の短縮、経年劣化の回避などを実現した

また、アンチ・スパークリングフィルムによよって画面のギラつきがなくなり、ディスプレイが見やすくなった。さらにフリッカー低減技術を搭載することで、画面の細かいちらつきも抑えられている。

アンチ・スパークリングフィルムで画面を見やすく、フリッカー低減技術で画面の細かいちらつきを抑制

このほか、従来モデルにも搭載されていた「SelfColorCorrection」機能をアップデートした。ディスプレイは経年変化によるバックライト劣化などが原因で、調整した色味・発色が徐々に変わってくる(正確な発色が求められるディスプレイは、定期的な調整が必須)。従来の製品ではユーザー自身で補正を行う必要があったが、新製品では色の変化をバックグラウンドで自動的に検出して補正できるようになった。荒井氏は「これにより、お客様は常に一定の明るさ・色合いでお使いいただけます」と説明した。キャリブレーション対応の液晶ディスプレイを導入している現場、ユーザーにとって、これはかなり嬉しい仕掛けだ。

経年変化補正技術がバックグラウンドで作動するため、ユーザーは色補正を気にする必要がない

外部USBカラーセンサーにも対応。精度の基本となる「ベースデータ」を手持ちの外部センサーで更新する新方式「ベースキャリブレーション」を搭載しており、ユーザーが独自に基準として設定しているセンサーの色(精度)を製品に反映できる。

外部USBカラーセンサーにも対応。ユーザーの独自基準で製品を運用することができる

ICCプロファイルエミュレーション機能により、離れた場所にある他のディスプレイの色味を再現することも可能。例えば、映像クリエイターとクライアント、グラフィックデザイナーと製版オペレーターなど、離れた場所の異なった環境下にある装置間でも、正確な色のやりとりを行える。また、プリンタや印刷機のICCプロファイルを利用して、印刷後の色イメージをディスプレイ上に忠実に再現することも可能だ。荒井氏は「ICCプロファイルを利用すれば、中間色を合わせることもでき、独自の強みとなっている」と説明した。

実機のデモも

会場には製品の実機を展示。背面には上下150mmで高さ調整できるスタンドを備えており、画面の角度も簡単に変えられた。画面を90度回転させて縦向きに固定する、ピボット機能も持っている。入力端子は、DisplayPort、mini-DisplayPort、DVI-D(デュアルリンク対応)、HDMIの4系統を備える(MultiSync LCD-PA302W/PA272Wの場合)。USBハブ機能はアップストリーム×2ポートを設けているので(ダウンストリーム×3ポート)、ディスプレイにキーボード/マウスなどのUSB機器を接続すれば、Windows・Macなど2台のPCで共有できる。

背面には高さや角度、向きが自由に調整可能なスタンドを備える(写真左)。利用できる入力端子も幅広い(写真右)

カラーマネージメントのデモも行われた。専用ソフトウェア「MultiProfiler」では、設定のエクスポート/インポートを行うことが可能。複数台を調整するときや、遠隔の機器と色合わせを行うときに利用できる。

専用ソフトウェアのMultiProfilerを使えば、設定のエクスポート/インポートが簡単に行える

別売りのセンサーを使ってベースキャリブレーションを設定すれば、外部カラーセンサーの精度でディスプレイを運用可能になる。ディスプレイ側面に配置されたUSB端子に、外部カラーセンサーを直接接続して利用可能。セルフカラーコレクションにより、以降は長期にわたって色の精度を維持できるという。

外部カラーセンサーにより、ディスプレイの色味を測定して設定に反映させることができる