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厚生労働省の次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画及び認定制度に係る効果検証研究会は、平成26年度までの時限立法である「次世代育成支援対策推進法」の延長について検討を加えるため、同法の中心的な位置づけである「一般事業主行動計画」および「くるみん認定制度」について施行の効果検証を実施。報告書を取りまとめて発表した。

一般事業主行動計画とくるみん認定とは

次世代法は、日本の急速な少子化の進行、ならびに家庭や地域を取り巻く環境の変化をかんがみ、国、地方公共団体、事業主及び国民の責務を明らかにするもの。推進するために必要な事項を定めることで、迅速かつ重点的に「次世代育成支援対策」を推進し、次代の社会を担う子どもが誕生・育成する社会の形成に資することを目的としているという。

同法第12条第1項では、一定の従業員数を有する事業主に対して、次世代育成支援対策に関する計画を定めた「一般事業主行動計画」を策定し厚生労働大臣に届け出ることを定めている。その具体的な内容は「行動計画策定指針」において定められ、9つの認定基準を満たした場合は、同法に基づく「子育てサポート企業」として認定を受けることができ、子育て応援企業の認定マークである「くるみん」を表示することができる。

くるみん認定により男性の育休取得者が増加

今回の検証で、同法施行前後の代表的関連指標を比較したところ、合計特殊出生率が過去最低の1.26(平成17年度)からやや持ち直し、育児休業取得率も、女性で72.3%(平成17年度)から83.6%(平成24年度)、男性では0.50%(平成17年度)から1.89%(平成24年度)に上昇するなど、全体的に改善がみられたという。

また、くるみん認定取得にともなう効果については、認定の取得を予定して行動計画を実行した企業の人事担当者の方が各種効果を認識している割り合いが高く、特に「男性の育児休業取得者が増えた」(予定有37.8%、予定無9.1%)、「育児休業以外の諸制度の利用が進んだ」(同35.3%、同16.0%)の割り合いに大きな差がみられた。

認定を取得している企業については、認定基準に「男性の育児休業取得者1人以上」という絶対基準が位置づけられていることから、複数の男性が育児休業を取得している割り合い高い。さらに、従業員数300人以上の企業で、認定を取得し行動計画提出回数を重ねている企業においては、一般従業員(女性・子どもあり)が「男性の育児休業取得に積極的であると思う」と評価している割り合いが相対的に高いこともわかった。

そのほか、認定を取得している企業の方が、「育児休業がとりやすい環境にあると思う」(認定企業84.7%、未認定企業76.6%)、「短時間勤務が取りやすい環境にあると思う」(同59.3%、同49.3%)と評価されており、同法の施行により、女性の離職率を2.7%ポイント低下させる効果があることも推計されているという。

認知度の低さや申請の手間、具体的なメリットが今後の課題に

くるみん認定を取得していない企業で、絶対基準とされる「男性の育児休業取得」の推進に取り組んでいる企業は4割弱。また、認定を取得していない企業の7割以上が、男性の育児休業取得者がいない状況だった。

ヒアリングでは、男性の育児休業取得について「収入が減るため希望者がほとんどいない」、「単身者しかいない」、「子育て期の従業員がいない」などを理由に取り組めない企業もあるため、認定基準とするべきなのかという意見や、男性の育児参加をどう意識づけていくかについて、継続的に取り組んでいく時期に入っているという意見が寄せられている。

また、先行して両立支援に取り組んでいる企業からは、成果があらわれているにもかかわらず、後から取り組んでいる企業と全く同じマークでしかないため差別化が図れないという意見があった。大企業では認定を取得している企業が多いため、認定取得のみでは学生の募集にあたっても差別化にならない状況にあり、段階的に評価する仕組みも求められている。

そのほか、くるみんマークの認知度が十分ではないことや、認定取得に係る手続きに人員を割く余裕のある企業しか認定申請できないこと、計画策定や認定の具体的なメリットを増やして欲しいなどが今後の課題としてあげられた。