豪華女優陣主演のWOWOW連続ドラマW『鍵のない夢を見る』。若手人気作家・辻村深月氏による第147回直木賞受賞小説を、全5話構成のオムニバスドラマとして完全映像化した同作の第4話「仁志野町の泥棒」(9月22日 22:00~)で主演を務めるのは女優の高梨臨だ。幼少期の友人が犯した罪を、今でも忘れることのできない女教師・ミチルを熱演する。

高梨臨
1988年生まれ。千葉県出身。『GOTH』(2008年)の主役に抜擢される。さらにカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された、イランの名匠アッバス・キアロスタミ監督の『ライク・サムワン・イン・ラブ』(2012年)に主演、国内外から高く評価される。主な出演作は、『生きてるものはいないのか』(2012年)、『カラマーゾフの兄弟』(2013年)、『放課後グルーヴ』(2013年)など。次回作は、『すべては君に逢えたから』(11月22公開)、日本・インドネシア合作の『KILLERS』(2014年)、『醒めながら見る夢』(14)。2014年3月31日より放送予定のNHK連続テレビ小説『花子とアン』にもレギュラー出演する。

「第一に脚本が面白くて、読んでいくうちにどんどん引き込まれてしまいました。特徴的な話ではないけれど、ぞっとするような場面があって、そんな部分にリアリティーを感じました」と高梨が絶賛する物語は、教師になったミチルがとある人物と偶然にも再会するところから始まる。再会相手の律子は、ミチルの小学校時代の友人。転校してきた律子の家庭には謎めいた部分が多く、「律子の母親は泥棒だ」との噂がクラスで広まるようになる。ミチルはそんな噂を気にすることなく律子との仲を深めるのだが、ある出来事をきっかけにその関係性はがらりと変化していく。

ドラマは子供の世界を舞台に、純真であるが故の残酷さやそこから生まれるトラウマ的経験を描き出す。「子供の世界って独特ですよね。たとえば、ランドセルの色や形がほかの子たちと違っただけで、仲間ハズレごっこが始まったりする。そういった意味で今回の物語は、あり得る話として見ることができると思うし、『こういう人っているよね』と視聴者の方には思っていただけるはず」と作品の持つ現実味を強調。ミチルは大人になるまで律子との出来事を引きずることになるが、高梨自身「私自身もふと言われた一言をずっと気にして、引きずってしまうこともある。でもそんな感情こそ、女性ならではのものなのかもしれないですよね」と役柄に共感を寄せる。

今でこそ笑顔の絶えないイメージのある高梨だが、小学校時代はミチル同様に引っ込み思案だったという。そんな当時の彼女を変化させたのは何だったのだろうか?「小学校4年生の時から始めた合唱部ですね。先生が厳しい方で、あいさつの仕方はもちろん、発言の時はビシッと手を挙げろ、という教えでした。朝練に1秒でも遅れたら教室に入れないし、その練習の後には皆の前で謝らなければいけない。でもそんな厳しい教えがあったからこそ、活発で明るい性格になったんだと思います」と振り返る。現在もその学びが根底にあるそうで「幼いころの経験って大人になっても響いてくるから重要ですよね。ミチルにもそんな経験があれば違った行動が起こせたのでは?」と笑う。

共演は木村真那月、川島鈴遥、佐津川愛美ほか

体育会系スタイルの部活経験があったおかげか、現在の高梨は注目の若手女優としてテレビ、映画、舞台と活発に活躍の場を広げている。2012年にはイラン映画界の巨匠アバッス・キアロスタミ監督に見初められ、日仏合作の映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』で堂々の主演を務めた。「撮影に入る前はじっくりと役柄や作品について考えるけれど、撮影当日は余計な邪念は捨てますね。何も考えず現場で感じるままに挑む感じ」と女優としてのスタイルを明かす高梨。これまでたくさんの作品に出演してきたが「体は緊張しているようで、撮影前日に眠れないこともあります。台本をまったく覚えないで現場に行ってしまい『ヤバい! ヤバい!』と言いながら、必死にセリフを覚えるという夢を見ることもあるくらいですから」と惰性が顔を覗かせることもない。

「仁志野町の泥棒」は女優・高梨臨をどのように成長させていくのだろうか。それは見てのお楽しみだが、高梨は「枠にとらわれず、色々な役柄を演じてみたいですね。自分自身、どんな可能性を秘めているかもわからないし、今まで演じたことのないようなキャラクターにも魅力を感じます」と将来のビジョンを語る。目を輝かせながら「新しいことに挑戦したい」という好奇心の旺盛さこそ、高梨を前に進ませていく原動力なのだろう。