Media Agnostic USB

今回の隠し玉というか、全く新しい話がこちら(Photo29)。9月9日にアナウンスされた全く新しい規格である。

Photo29:理論上は別に有線でも良い訳で、意味があるかどうかはともかくUSB over PCIeとかUSB over TCP/IPとかUSB over 糸電話とかも「理論上は」可能である。にも関わらずWireless系ばっかり並んでいるあたりが、いかにもという感じ

これは何か? というと、字面を追うと「メディア非依存USB」である。要するに「USB over WiGig」「USB over Wi-Fi」「USB over WiMedia USB」etc……という話で、既存のネットワークというかインターコネクトの上に論理的にUSBプロトコルを通す事で、USBケーブル以外でもUSBを利用できるようにしよう、という話である。

「何でいきなりこんな物が」という疑問は当然あるわけだが、Ravencraft氏に「Wireless USBが失敗したので、その代替規格と考えて良いのか?」とストレートにお聞きしたところ、「使われる技術は全く異なるものになるが、市場としては同じところに位置することになる」という返事が返ってきた。つまり、WiMedia UWBに固執したのがWireless USBの失敗と位置づけた上で、メディア非依存にすることでより普及を図ろうという意図である。

例えばBluetooth Mouseなんていうのは事実上BluetoothのStackの上にUSBのHIDクラスを通しているわけだが、これまではBluetooshのHID Profileという形で実装されていたために、どこのメーカーが提供するStackかで振る舞いが変わる(というか、動いたり動かなかったりする)事が今も発生していたりする。もしMedia Agnostic USBがうまく実装されると、このあたりの互換性の問題が一掃される可能性もある。

もちろん、それなりの速度が必要なケースでは「何でもOK」という訳にはいかない。IEEE802.11acを持ち込んでも1x1で300Mbps弱、2x2で800Mbps程度としながらも、実際にはこの手の規格の実効速度は半分くらいだから2x2でもUSB 2.0の480Mbpsに及ばない計算になる。

まぁそれゆえWireless USBはUWBの採用を決めた結果として失敗した訳だが、Photo28にもあるようにもともとはWiGigのWSE v1.2がきっかけであり、これならば十分に帯域としてマッチすると考えたのであろう。

ただこれ、WiGig側からすればアプリケーションを増やして普及に弾みを付けたい、一方のUSB-IF側からすればWirelessのUSB規格は欲しいものの、自前でWirelessのPHYの普及をやるのはもうつらい、という双方の利害関係が一致した結果だけに、逆にこのあたりの利害関係が崩れると開発作業そのものが途中で頓挫する可能性もあるだろう。取りあえずMedia Agnostic USBそのものは「これから開発に入る」状態なので、これがある程度形になるまでにはまだちょっと時間が掛かりそうである。

次のページ:SSCIなどその他の話題