スタジオジブリ最新作で、11月23日に公開されるアニメーション映画『かぐや姫の物語』の中間報告会見が17日、都内で行われ、女優の朝倉あき、鈴木敏夫プロデューサー、西村義明プロデューサーが出席した。
高畑勲監督による『かぐや姫の物語』は、"姫の犯した罪と罰"という印象的なキャッチコピーがつけられ、日本最古の文学『竹取物語』をベースに、かぐや姫の心情と謎めいた運命を丁寧に描いているという。作画は筆で描いたような主線と水彩のような色使いで、これまでのアニメにはなかったタッチとなっており、躍動感にあふれる映像も見どころとなっている。今回の会見では主要キャストとして、主人公・かぐや姫役に朝倉、育ての親・翁役に地井武男さん、かぐや姫の幼なじみである捨丸役に高良健吾、媼役に宮本信子が起用されたことも明らかになった。本作では、先に声を収録してその後に画を作っていくという「プレスコ」という手法が採用され、2011年夏に声を収録。昨年6月にこの世を去った地井さんにとっては、本作が遺作となった。
西村プロデューサーによれば、かぐや姫役のオーディションが行われたのは2011年。制作開始からかなりの時間が経過していたが絵コンテの進捗が思わしくなく、高畑監督や作画チームの中にあるかぐや姫のイメージを明確にするために、まず声を選ぶことに。数百人を見て首を縦に振らなかった高畑監督が、「彼女は可能性がある」と選んだのが朝倉だったという。朝倉自身は「オーディション当日は全然うまくできなくて、泣いて帰ったんです。だから今日、オーディションの時のことを聞いてすごく意外でした」と驚いていた。
スタジオジブリといえば、先日宮崎駿監督が引退を発表したばかり。『かぐや姫の物語』が、宮崎監督の創作魂に火をつけた可能性について話が及ぶと、鈴木プロデューサーは「『かぐや姫の物語』の映像の一部を宮さんに見せた時、彼が『すごい作品だ』と口にしたんです。人の作品についてそういう評価はなかなかしない人だったので、(宮崎監督は)大人になったんだなと思いました」と振り返っていた。
続けて鈴木プロデューサーは「『かぐや姫の物語』の、原作の短いエピソードの"事実"はそのままに、その中でのキャラクターの感情を描いて長い作品にしていくのは『アルプスの少女ハイジ』の手法そのもの。実は宮さんにも、『かぐや姫の物語』はハイジだね、と言われたんです」と秘話を明かした。西村プロデューサーは、宮崎監督の引退について高畑監督が、「宮さんは区切るのが好きだからああ言ったけど、また作りたくなるだろうから、そしたら作ったらいい」と語っていたエピソードもつけ加えた。
そして『かぐや姫の物語』は、地井さんの遺作でもある。地井さんと共演した朝倉は、「とても暖かくて、全てを受け止めてくれる方でした。読み合わせの時の地井さんの演技が翁そのもので、伝わってくる気持ちに思わず(朝倉が)泣き崩れてしまったのを覚えています」と思い出を語っていた。
制作状況については、あと2週間ほどの制作スケジュールで、約1/3の彩色作業が残っているため、高畑監督も睡眠時間を削り、急ピッチで作業が行われているという。高畑監督と現場をともにしている西村プロデューサーは、「10年後にアニメーションのひとつのエポックになる作品、77歳の高畑勲が全く新しいアニメを作っていると思います」と自信をのぞかせていた。
なお、会見では役柄は明かされていないものの、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪功、朝丘雪路、仲代達矢らの出演も発表されている。