東京商工リサーチは、3月期決算の「主な上場電機・輸送用機器メーカーの労務費」調査を実施。電機、輸送用機器メーカー98社の製造部門の労務費総額は2010年を底に3年連続で増加したものの、リーマン・ショック前の水準に戻らず抑制が続いていると発表した。
労務費総額は4兆5309億円。リーマン・ショック前の水準に戻らず
同調査は、電機、輸送用機器メーカー98社を対象に、3月期決算の有価証券報告書の製造原価明細書から労務費を抽出し、過去のデータと比較したもの。製造業の従業員の「人件費」については、製造部門が製造原価明細書に労務費として計上され、営業部門や管理部門などの従業員の賃金給料が販管費及び一般管理費に別立てで計上されている。労務費は製造に従事する従業員にかかった費用の総額で、具体的には「給与」、「賞与」、「福利厚生費」などが含まれる。
株式上場する主な電機メーカー62社と輸送用機器メーカー36社、合計98社の総労務費は4兆5,309億3,000万円(前年同期比0.3%増)だった。3年連続で前年同期を上回ったがペースは鈍く、今年の実績をリーマン・ショック前の2008年と比較すると8.9%下回った。また、98社の総売上高(単独決算ベース)は、リーマン・ショック前の2008年3月期の76兆円に対し59兆円に減少。業績低迷が労務費の抑制に働いていることが分かった。
電機62社の6割で労務費が下回る一方、輸送用機器36社が上昇
電機メーカー62社の2013年3月期の総労務費は、2兆126億600万円(前年同期比0.6%減)で、41社(構成比66.1%)の労務費が前年同期を下回った。また、2013年3月期に前年同期より従業員数を削減した企業は37社(構成比59.6%)にのぼり、人員と労務費の削減が電機業界の苦境を示す数値になっている。
一方、輸送用機器メーカー36社の2013年3月期の総労務費は、2兆5,183億2,400万円で前年同期より1.2%増加し、21社(構成比58.3%)で労務費が前年同期を上回った。ピークは2008年の2兆7,334億6,300万円で、リーマン・ショック後の2009年は2兆5,941億7,800万円(前年同期比5.0%減)、と減少。しかし、2011年には2兆4,596億1,200万円(同2.4%増)と増加に転じ、3年連続で労務費が増加した。
同社はこの結果について、「労務費は自動車関連を中心とした輸送用機器メーカーが増加する一方で、電機メーカーは抑制に歯止めがかからず業種間で温度差が広がっている。アベノミクス効果による為替相場の円安で、企業収益の上振れも目立ってきた」と説明。「業績展開より、従業員数や人件費などコスト削減の動きが先行する傾向もあり、業績次第だが当面は抑制が続く可能性がある」と分析している。