大画面、フルHD、クアッドコアCPUなど、ハイスペックなスマートフォンが登場しているが、各社のスマートフォンの性能も横並びになり、ハイスペック化は一旦落ち着いてきているように見える。そんな中、スマートフォンを快適に使う上で鍵を握るのがメモリーカードの性能だ。スマートフォンの性能にばかり目が行き、見落としがちだが、画像や動画を始めとする大容量データを扱うときには、メモリーカードの性能も重要となる。本稿では、メモリーカードの最新状況を解説するとともに、実際にスタンダードモデルと高性能モデルのメモリーカードを使って、その違いを検証していきたい。
microSDカードの大容量化と高速化
これまでスマートフォン市場でiPhoneとシェア争いを繰り広げてきたAndroidスマートフォンだが、グローバルのOS別出荷台数シェアではAndroidが約8割となるなど、iPhoneを大きく引き離す状況となっている。Androidスマートフォンの特徴のひとつであり、iPhoneと異なる点が、外部メモリの「microSDカード」により容量を増設できることだ。microSDカードを装着することで、本体メモリの残り容量が少なくなっても、画像や動画、音楽ファイルなどの大容量データを保存することができる。
microSDカードは従来型の携帯電話の頃から外部メモリとして使われてきたものだが、ハイスペック化や高速通信サービスへの対応など、スマートフォンの進化とともに個々のユーザーが扱うデータ量も増加しており、需要に応じてmicroSDカードでも大容量化が進んでいる。16GB、32GBといったDVD数枚分の容量のmicroSDHCカードが普及し始め、さらには64GBのmicroSDXCカードも登場している。もちろん、microSDXCカードに対応するスマートフォン機種も次々と発売されている。
また、大容量データを快適に扱う上では、microSDカードの転送速度も重要となる。microSDカードの速度性能の目安としては、製品のパッケージなどに掲載されている30MB/秒や80MB/秒などの最大転送速度に注目したい。この速度が早ければ早いほど快適にデータの転送ができる。CLASS6, CLASS10といった"SDスピードクラス"を性能を見分ける基準として認識している人が多いのではないかと思うが、SDスピードクラスはあくまでも動画撮影に必要な最低転送速度を示す指標であることをご存じだろうか。どのくらい速く書込んだり、読出したりできるかどうかの性能を見比べるにはSDスピードクラスではなく、最大転送速度をチェックする必要がある。SDスピードクラスがCLASS10の製品であっても、最大転送速度が速いものから遅いものまでさまざまな性能の製品があるので注意しよう。
スマートフォンを購入する際には、ついスマートフォン自体のスペックばかりに注目しがちだが、ここまで紹介したようにmicroSDカードも大容量化と高速化が進んでいるのだ。
さまざまな種類のmicroSDカードが登場している現在では、スマートフォンのパフォーマンスを最大限に引き出す上で、どのmicroSDカードを選択するかも重要だ。microSDカードを選ぶ際は、価格だけでなく、容量や速度性能にも注目してみよう。
microSDカードの性能の違いを検証してみた
容量や速度性能により、さまざまなラインナップがあるmicroSDカードだが、本稿では、実際の利用シーンでどのくらい性能に違いがあるのかを検証するために、スマートフォンとmicroSDカードを用いて実験を行った。
実験に使用したのは、メモリーカードで世界・国内ともにトップシェアであるサンディスクのmicroSDカードの4種類。32GBのmicroSDHCカードでは、「サンディスク スタンダード microSDHC カード(32GB)」と「サンディスク エクストリーム microSDHC UHS-I カード(32GB)」を比較。さらに、64GBのmicroSDXCカードでは、「サンディスク ウルトラ microSDXC UHS-I カード(64GB)」と「サンディスク エクストリーム microSDXC UHS-I カード(64GB)」を比較した。スマートフォンには、NTTドコモが提供するサムスン電子製スマートフォン「GALAXY S4 SC-04E」を選択した。
まず、大容量データをインターネット上からmicroSDカードにダウンロードしたときに、完了までの時間に違いがあるかを検証した。Dropboxで友達に共有してもらった写真をダウンロードするシーンを想定し、Dropboxに保存した約30MBの画像群(ZIP)をmicroSDカードにダウンロードして、その所要時間を計測した。なお、ネットワーク環境はWi-Fi接続で、アプリのキャッシュは各ダウンロードを行う前にクリアした。
実験の結果、「サンディスク スタンダード microSDHC カード(32GB)」の所要時間は約2分24秒、「サンディスク エクストリーム microSDHC UHS-I カード(32GB)」は約42秒となり、32GBのmicroSDHCカードではスタンダードモデルとエクストリームモデルで3倍以上の差が開いた。また、「サンディスク ウルトラ microSDXC UHS-I カード(64GB)」の所要時間は約1分58秒、「サンディスク エクストリーム microSDXC UHS-I カード(64GB)」は約33秒となり、64GBのmicroSDXCカードではウルトラモデルとエクストリームモデルで、こちらも3倍以上の差が開いた。
次に、microUSBケーブル経由で大容量データを転送し、microSDカードに保存したときの転送時間の違いを検証した。パソコンで編集した動画をスマートフォンに転送するシーンを想定し、パソコンからmicroUSBケーブル経由で約1GBの動画ファイルをmicroSDカードに転送し、その所要時間を計測した。なお、microUSBケーブルにはGALAXY S4の純正ケーブル、パソコンはMacBook Airを使用している。
実験の結果、「サンディスク スタンダード microSDHC カード(32GB)」の所要時間は約3分26秒、「サンディスク エクストリーム microSDHC UHS-I カード(32GB)」は約59秒となり、32GBのmicroSDHCカードではスタンダードモデルとエクストリームモデルで3倍以上の差が開いた。また、「サンディスク ウルトラ microSDXC UHS-I カード(64GB)」の所要時間は約2分38秒、「サンディスク エクストリーム microSDXC UHS-I カード(64GB)」は約1分38秒となり、64GBのmicroSDXCカードではウルトラモデルとエクストリームモデルで、1.6倍以上の差が開いた。
このように、Dropboxからのダウンロード、microUSBケーブル経由の転送のいずれでも、エクストリームモデルの高性能なmicroSDカードが圧倒的なスピードの違いを見せる結果となった。実際にダウンロードや転送を行う際は、スマートフォンの性能やネットワークの状態、microUSBケーブルの性能など、microSDカードの性能以外にもさまざまな要因によって速度は変化してくるが、スマートフォンを快適に利用する上で、microSDカードの性能がいかに大事かということがおわかりいただけただろう。
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本稿の実験でも検証した通り、ハイスペックなスマートフォンの性能をフルで活かすには、メモリーカードの性能も重要となる。試供品や以前の端末のmicroSDカードをそのまま使っているケースなども多いと思うが、スマートフォンをより快適に使うにはmicroSDカードにもこだわりたい。もっとも、サンディスクのメディア製品は信頼性が高く、スタンダードモデルであっても性能は十分だ。高性能なものほど価格も高いので、予算に応じて自分に最適なmicroSDカードを選択してみてはいかがだろうか。