宇都宮餃子といえばご当地グルメブームの元祖ともいうべき人気メニュー。なんと宇都宮市内には約30店舗の餃子専門店があるそうなのだ。そんな宇都宮を訪れ、餃子店に座って気づいたこと。それは、焼餃子だけではなく、水餃子や揚餃子も人気があること。そして、水餃子の食べ方にある特徴があることだ。今回はそんな水餃子に迫りたい。
創業当初は1人前50円
宇都宮駅に到着すると、もうそこは餃子ワールド。駅構内にも餃子店が並ぶ一角があり、駅東口を降りれば駅前に餃子店がそろっている。その中にある「宇都宮みんみん」は、遠方からも多くの人が訪れる人気の老舗。昭和33年(1958)7月17日に開店した店だ。
こちらの店の餃子は、創業者が戦時中に北京で習得した味を、帰国後、日本人好みに改良して生まれたという。当時は1人前50円だったとか。現在も創業当時と変わらず、メニューには焼餃子、揚餃子、水餃子(各1人前240円)の3種類をそろえている。ちなみに日本人は焼餃子が好きだが、中国では水餃子が主流なのだそうだ。
まるでスープ餃子のよう
今回は、「宇都宮市民の水餃子の食べ方は、ひと味違う」に着目し、水餃子を食してみることにした。店内をざっと見渡すとやはり焼餃子の人気が高いようだが、水餃子、揚餃子を好んで食べる人の姿も。焼餃子1人前、水餃子1人前を頼み、ご飯とともに楽しむ人も見られる。さてその水餃子、普通にタレにつけて食べてもOKだそうだが、宇都宮っ子が好むという食べ方をお店の方に教えてもらった。
まずは小皿に醤油、酢、ラー油(店オリジナルのタレ)を入れるところまでは普通の餃子と同じ。その調味料を混ぜた後、何と餃子と湯の入ったどんぶりに一気に注いだのだ。「こうするとスープ餃子のようになっておいしいんです」(駅東口店・宮田店長代理)。
そこでまずはスープを飲んでみたところ、ほんのり辛みが効いて確かにうまい。その後に水餃子を食べたが、つるっとスープとともに喉ごしよく、ヌードル感覚でいただくことができるのがいい。冬ならばたっぷりと温まるし、食欲の落ちる夏にもうれしい食べ方だ。
ただし、もちろんこのようにして食べなくてはいけないというものでもないらしい。「特にきまりはないので、お好きなように食べて下さい。当店の餃子はそれ自体にほんのりと味がありますので、最初は何もつけずに食べてみて、そこから薬味をいろいろ調整して好きな味を作っていくのがいいかと思います」(宮田さん)。
ラー油でお店の違いが出る
ちなみに、餃子につけるラー油(タレ)だが、宇都宮では各店がそれぞれ異なったものを使用している。宇都宮みんみんのようにオリジナルダレを用意していることもあり、その味によっても好みが分かれる。また、宇都宮みんみんでは甘みのある“ツンとこない”オリジナルの酢を使用。この酢とラー油(タレ)を水餃子のスープに入れると、スパイシーでありながら角が立ち過ぎない、絶妙な味に仕上がるのだ。
より辛い状態で食べたい人は、ラー油(タレ)の底にある唐がらしの粉を多めに入れるといい。餃子そのものは、ニンニクのうまみは感じるのに、臭いはないよう工夫して作られているので、女性を誘っても安心。
ちなみに、宇都宮みんみんは昭和33年創業だが、その前身として「ハウザー」という栄養食品店を営業していた。当時の中華料理店では、メニューに餃子を取り入れる店が少なかったが、創業者一家はこのころから店で餃子を取り扱い、大衆に普及させることに成功したという。
薬膳水餃子はにんにく醤油と黒酢で
さて、次に訪れたのがこれまた創業約40年の老舗「正嗣」。全て国産の材料を使って作っているというこだわりの店。正嗣の水餃子は、皮は薄めで具がぎっしり。その皮はぷるっとしている。そしてやはりどんぶりに直接、醤油、酢、タレ(ラー油)を入れているお客さんが多い。ピリ辛に仕上がったスープが食欲を誘う。
一風変わった水餃子もある。それが「和の中」の薬膳水餃子だ。和の中は中国の茶館を思わせる落ち着いた造りの店で、ゆったりと食事ができる。モンゴル出身のご主人による料理は、モンゴル岩塩ラーメンなどのメニューを取りそろえているが、やはり忘れてはならないのが餃子だ。その名も“本場中国式 薬膳水餃子”(焼餃子もあり)で、その名の通り薬膳が入っている。手作りの皮はもちっとして、具もジューシー。自家製のにんにく醤油と黒酢につけていただくのがポイントだ。
●information
和の中
栃木県宇都宮市駒生町1296-33
市内にはまだまだ沢山の餃子屋があり、その店ならではの味がある。餃子といえば焼餃子を注文したくなるだろうが、宇都宮ならではの味・食べ方ができる水餃子も忘れずに堪能していただきたい。