NTTドコモが9月10日に発表が噂される新型iPhoneの取り扱いを開始するとの報道が流れて話題になっているが、同時期にお隣中国で世界最大の携帯キャリアである中国移動通信(China Mobile)が「廉価版iPhone」の取り扱いを開始するとの話が出ており、NTTドコモのケース同様に世界で大きな注目を集めている。
同件はWall Street Journalが9月5日(現地時間)に報じている。China Mobileは契約ユーザー数で7億を抱える世界最大の携帯キャリアであり、Appleにとっての潜在的可能性は複数国の携帯ユーザーすべてを合わせたものよりはるかに大きい。WSJによれば、iPhone製造を委託しているFoxconnに対して製品の提供キャリア一覧にChina Mobileを加えるよう依頼しているとの関係者の話が伝わっており、さらにその端末は10日発表が噂される「既存のiPhone 5の後継モデル」「廉価版iPhone」のうち、後者の「廉価版iPhone」になるのだという。
特に中国市場においてAppleは、ここ最近になり急速にシェアを落としたことが知られている。最新の調査報告によれば、同社の中国市場における2013年第2四半期における携帯電話のシェアは1年前から14%下落して、わずか5%となっている。2割のシェアを持つSamsung Electronicsを筆頭に、Lenovo GroupやHuawei Technologiesといった地元企業らに大きく遅れをとっており、同市場最大キャリアのChina Mobile攻略は同社の戦略において重要な位置を占めている。
なお、もしChina Mobileが廉価版iPhoneの取り扱いを開始した場合、どのネットワーク規格をサポートするのかが問題となる。一般に、現在のiPhoneはGSM/W-CDMAとCDMA 2000の両規格をサポートしており、LTEの対応周波数に合わせて複数モデルが用意されている状態だ。ただしChina Mobileは多くが知るように、国内の3G展開において「TD-SCDMA」という独自規格を採用しており、これが海外端末を同国に持ち込む際の参入障壁となっている。またLTEについても、日本ではAXGPの名称でサービスが提供されているTDD-LTEでのサービスインが行われている。以前のレポートにもあるように、廉価版iPhoneで「TD-SCDMAのサポートが行われるのか」「FDD-LTEだけでなく、TDD-LTEもサポート」されるのかが、10日の発表会での大きなポイントだろう。またTDD-LTEのサポートがあるかは、日本国内ではAXGP、米国ではSprint経由で子会社となっているClearwireのTDD-LTEネットワークを抱えるソフトバンクの戦略を語るうえで、大きなトピックとなる。