俳優の山田孝之、リリー・フランキー、ピエール瀧、女優の池脇千鶴らが4日、東京・新宿ピカデリーで行われた映画『凶悪』(9月21日公開)の完成披露試写会に出席した。

映画『凶悪』の完成披露試写会での舞台あいさつ(左から池脇千鶴、リリー・フランキー、山田孝之、ピエール瀧、白石和彌監督)

原作は、『新潮45』編集部の記者が事件の真相から首謀者逮捕までを描き、凶悪事件を白日の下にさらしたノンフィクション犯罪ドキュメント『凶悪 -ある死刑囚の告発-』(新潮文庫)。山田孝之演じるジャーナリスト・藤井は、死刑囚・須藤(ピエール瀧)が3件の余罪とその首謀者を告発したことを受け、事件の真相を暴くために奔走する。首謀者とされる男・木村(リリー・フランキー)は、須藤がかつて「先生」と慕っていた"死の錬金術師"だった。

山田が演じる藤井は、事件を追いかける一方、家庭内でも問題を抱える身。しかし、彼は家庭を顧みることなく、まるで取り憑かれたように取材に没頭しはじめる。「難しくて大変。でもやりがいはあると感じた」とこの役柄を捉えていた山田は、その難役を演じきった上で、「こういう題材ですからバカみたいに大ヒットする映画ではないと思いますが、本当に見てもらいたい」とアピール。さらに、「見なくていいの? という感じはあります」と続け、「暴力とかそういう重たいものを求めていないとかじゃなくて…見る勇気がないのかと。見なさいという感じで。見ろと。見ろコノヤローと。バカヤローと(笑)」と投げかけた。

これに対して、リリーが「たぶん今のところが記事になります」と冷静に分析すると会場は爆笑。山田が「いつもそうなんです…」と困惑の表情を浮かべる中、ピエールも「今の面白かったんで、ここ使うでしょうね」とリリーの意見に賛同していた。また、重い題材ながらも「結構笑いも起きていた現場だった」と振り返る山田。ピエールは「空き時間にはリリーさんと動物の森をやったり、コンビニにおでん鍋をもらいにいったり」と和やかなエピソードを話しながらも、「せめて撮影の時に笑いを共有しないと、ある意味やってられない現場でした」とも明かし、「一番ピークの悪いシーンは、みんなが想像していたものよりも上のものができたという手応えがあって、そういうところに喜びを見出していました」と振り返った。

一方、「俺らで大丈夫なのかと思いながら、監督に形にしていただいた」と語るリリーは、脚本を「すばらしくおもしろかった。すごくドキドキしました」と絶賛。「思ってもいないことがどんどん空気感として出てくる現場でした」と語り、「残虐なシーンがたくさんありますけど、映画を見終わったあとの感想は意外と藤井家のヘビーさの方がきついんじゃないかなと」と藤井の妻を演じた池脇と山田の共演シーンに触れた。池脇は、山田とのシーンはわずか2日間で撮り終えたことを明かし、「私のシーンはみなさんのように和気あいあいとではなくて、地獄の2日間でした」と笑顔を見せていた。

この日は白石和彌監督も出席。「やはりこの映画はいい映画だと思ってます」と自信をのぞかせ、「感情に素直に見てほしい。どんどん自分の中にある感情が思わぬ方向にいって、きっと今まで感じたことのない感情をパスされるはずです。その自分の感情がどこから来てどこに行ったのか。映画を見て楽しんでください」と勧めた。