日本総合研究所は2日、中国のシャドーバンキング問題についてまとめたレポート「シャドーバンキングが映しだす中国の構造問題-消費主導型経済への転換を阻害する地方の権益構造-」を発表した。

同レポートによると、中国では現在、「影子銀行」と呼ばれるシャドーバンキングの規模が急速に広がっているという。シャドーバンキングとは、一般的な銀行とは別の金融機関が販売する「理財商品」や「信託商品」などを購入して、取引を行うことを指す。

シャドーバンキング拡大の背景には、リーマンショックに伴い実施された4兆元の景気刺激策がある。これにより、地方ではインフラ整備や都市開発が加速したものの、投資効率の低下を懸念した中央政府は、準備率の引き上げなどを通じて金融引き締めに転じた。その結果、規制の緩いシャドーバンキングが、地方における資金の需給ギャップを埋める新たな資金調達手段として活用されるようになったという。

現在、中国の実質GDP成長率は5四半期連続で8%を下回っており、2013年後半も7%台で推移すると見られる。経済成長が減速する中、シャドーバンキングが中国の金融システムに悪影響を与える事態に発展するのではとの懸念が拡大。世界第2位の経済大国である中国で金融危機が発生した場合、世界経済に与える影響は必然的に大きくなる。しかし、IMFや格付け機関のシャドーバンキングのリスクに対する評価は一致していないという。

シャドーバンキングのリスク評価(出典:日本総合研究所Webサイト)

その理由としては、中国政府自体がシャドーバンキングの全容を把握していない点にある。人民銀行は、シャドーバンキングの急増を受け、2011年から金融機関の簿外(バランスシート外)取引を「社会融資」の一部として把握。一方、IMFは、2013年1~3月期の社会融資残高はGDP比194%に達し、うち55%が簿外と推計した。

しかし、社会融資は、国民経済計算上の「固定資本投資」および国家統計局が投資主体に対する調査を通じて取りまとめる「全社会固定資産投資」を下回っている。また、社会融資は、全社会固定資産投資と近似する曲線を描き、これを部分的に説明するものの、全社会固定資産投資全体の半分に満たないという。

スウェーデンの金融グループNordeaの推計によると、シャドーバンキングの規模はGDPの93.8%(2012年末)に当たる48.7兆元に上ると見られている。

中国政府は現在、シャドーバンキングを通じた地方政府による過度な資金調達を禁止するなど、規制強化に取り組んでいる。しかし、規制官庁が多岐にわたることから、同レポートでは「規制相互の整合性が保たれ、期待した効果があがるか否かは、李克強首相の指導力によるところが大」と分析している。