Nexus 7を紹介するHugo Barra氏

28日に、GoogleのAndroid製品管理担当副社長のHugo Barra氏が同社を離れて、中国の携帯電話・家電メーカーXiaomi (小米科技)の副社長に就任することをGoogle+で明かした。同氏はここ数年、Android関連の製品発表会やキーノートのスピーカーを担当していた。Androidチームのキーパーソンの1人であり、米国では今年3月に"Androidの父"と呼ばれたAndy Rubin氏がAndroidの開発責任者を離れた時と同じようにBarra氏の退職も大きく報じられた。同時に話題になったのがXiaomiという企業だ。GoogleのAndroid担当幹部が移籍する企業でありながら、米国では製品が販売されていないし、名前もほとんど知られていない。

安物の携帯電話を作る中国企業ではない

Xiaomiの設立は2010年4月。2011年に最初のAndroidスマートフォン製品を発売し、2012年には販売台数が700万台を突破、2013年は倍以上になる見通しだという。現在、中国、香港、台湾などでスマートフォンを販売している。

今年6月にNew York Timesが「In China, an Empire Built by Aping Apple」というXiaomiに関する記事を公開した。その中で「中国のメディアはXiaomiを"東洋のApple"と呼んでいる」と紹介している。記事には、黒いシャツにジーンズを着て製品を発表するXiaomi CEOのLei Jun氏の写真が掲載されている。まるで、Apple創設者Steve Jobs氏のキーノートを模しているようである。XiaomiはAppleを強く意識した企業であり、それは上辺だけではなく、企業戦略にも現れている。

New York Timesのインタビューに対してJun氏は「われわれは安物の携帯電話を作るチープな中国企業ではない」「われわれはFortune 500企業を目指す」と述べている。低価格競争に参戦するのではなく、スマートフォンを好み、スマートフォンの活用に出費を厭わない消費者層にターゲットを絞り込んで、そうしたユーザーが満足できる製品・サービスを提供するという。

MIUI V5を導入したXiaomi MI-2

現在のコアユーザーは学生とギークである。高機能・高性能な製品を手頃な価格で提供している。All Things DのDカンファレンスにおいて、共同創設者のBin Lin氏は「(フラッグシップ製品のXiaomi MI-2は) SamsungがGALAXY S4に採用しているのと同じプロセッサを搭載している。それでいて価格はほぼ半分だ。われわれは部品構成表(Bills of materials)のままの価格を携帯電話に付けている」と述べた。またXiaomiは、Android向けカスタムROM「MIUI」を提供している。MIUI V5を導入すると、Android端末のホーム画面がiOSに近いものに変わり、豊富なカスタマイズ機能、200以上の機能を使えるようになる。Android端末メーカーの中にあって独自性も打ち出している。

Androidスマートフォンのライバルメーカーに比べると、Xiaomiは新モデルを投入するまでの期間が長い(最長18カ月)。新興メーカーであるため製品開発に限りがあるというのも理由の1つだが、ハードウエアデザインが長く維持されれば、対応アクセサリ市場が成長する。注文時にバックプレートやバッテリーを選べるなど、充実したカスタマイズサービスも提供している。

Dカンファレンスにおいて、Lin氏は「モバイルインターネットの未来はサービスだと考えている」と述べている。収益源として端末販売に軸足を置くのではなく、エコシステムの形成を企業の成長戦略としている。Appleを意識し、それを中国市場向けにアレンジして成功したXiaomi。Lin氏は、Xiaomiを立ち上げる前にGoogleのAndroidチームに属していたそうだ。端末を普及させ、サービスから収益を上げる戦略はGoogle的とも言える。次のステップはグローバル市場への対応であり、だからこそサービス企業であるGoogleにおいてAndroidハードウエア製品の責任者だったBarra氏を迎え入れたのだろう。