ICT総研は全国100駅300地点において、携帯電話各社のスマートフォンの電波状況を調査し、その結果を8月27日に公開した。同調査は鉄道の「駅」に焦点を当てたもので、全国のJR・私鉄・地下鉄の乗降客数上位100駅でLTE(4G)エリア比率、通信速度を計測。 KDDI(au)のAndroid端末がLTE比率、下り/上り速度と全ての調査項目でトップであることがわかった。
今回の調査は、通信速度測定アプリ「RBB TODAY スピードテスト」を利用し、1地点あたり下り/上りの通信速度を各3回ずつ測定し、その平均値を算出した。調査地点は全国100駅300地点で、期間は8月5日~20日。調査に使用したスマートフォンは次のとおり。NTTドコモはAndroid端末「Xperia A(SO-04E)」、auはAndroid端末「HTC J One(HTL22)」と「iPhone 5」、ソフトバンクモバイルはAndroid端末「AQUOS PHONE Xx(206SH)」と「iPhone 5」。
auのAndroidがLTE比率は下り/上り速度と全ての項目でトップに
今回の調査では、LTEエリア比率、下り通信速度、上り通信速度の3つの調査項目全てで、auのAndroid端末がトップとなった。LTE比率は99.3%を記録し、300地点中298地点でLTEを受信した。特に「駅ホーム」および「駅前広場」ではLTE比率100%を記録。最も端末ごとの差が付いた「駅改札内通路」においても98.0%という結果だった。
また、下り/上りの通信速度についても21.23Mbps/8.90Mbpsを記録し、他の端末の測定結果を上回った。特に下りで19.35Mbpsを記録した「駅改札内通路」については、次点のソフトバンクのAndroid端末(206SH)の下り12.90Mbpsを大きく引き離している。
ドコモ、ソフトバンクはともに上り速度で苦戦
NTTドコモの「Xi」(クロッシィ)は、LTEエリア比率が93.0%で5端末中4位、下り通信速度が13.50Mbpsで3位、上り通信速度が3.58Mbpsで4位という結果となった。「駅前広場」や「地上駅」などでは、40Mbps超の測定地点も散見された。一方で「駅改札内通路」ではLTEエリア比率が85.0%と低く、これが影響して全体では他端末を下回る通信速度となった。 ソフトバンクのAndroidの端末については、次のような結果となった。LTEエリア比率は78.7%で最下位、上り速度についても3.43Mbpsで最下位。ただし、下り速度は17.02Mbpsで2位となった。具体的には、「駅前広場」のLTEエリア比率では100%を記録したが、「駅ホーム」では75.0%、「駅改札内通路」では61.0%と計測地点で差がついた。また、上り速度についても「駅改札内通路」が1.88Mbpsと低く全体の数値に影響した。
同調査では、このソフトバンクの結果について、「LTEエリア比率が他端末に大きく離されており、これが弱みとなった」と分析。一方で、「下り60Mbps超の地点が見られるなど、電波感度が良好な地点では、いわゆる『爆速』を記録。これが全体の下り通信速度を押し上げている」としている。
au版iPhone 5はLTE比率で善戦、ソフトバンク版は上りで安定した結果に
au版iPhone 5については、LTEエリア比率が97.0%で5端末中2位だった。課題とされていたau版iPhone 5のLTEエリアだが、300地点中291地点でLTEを受信。この結果について同調査では「善戦した」と表現し、「ユーザーの利用頻度が高い『駅』だけに、優先してLTEエリア化している様子」と分析している。下り/上りの速度については、下りが10.22Mbpsで最下位、上りが4.63Mbpsで3位だった。これについては、「著しく速度が遅い地点も少ないものの、20Mbps超の地点が少ないことが、全体の通信速度が低調に終わった要因」としている。
一方、ソフトバンク版iPhone 5は、LTEエリア比率が95.7%で5端末中3位、下り速度は13.18Mbpsで4位、上り速度は7.35Mbpsで2位という結果だった。他端末がスコアを落とした「駅改札内通路」での落ち込みを最小限に防いだことで、同社のAndroid端末と比較し、比較的安定した結果を残している。
両社のiPhone 5を比較すると、通信速度ではソフトバンク版、LTEカバー比率ではau版に分があると言える。
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同調査では、鉄道の「駅」と限られたエリアだが、3つの調査項目でauのAndroid端末がトップとなった。加えて、LTEカバーエリアの誤記で行政措置を受けていたau版iPhone 5についても、ほとんどの駅でLTEを捉えており、同調査の言うとおり善戦している。これらの結果のひとつに、KDDIが「プラチナLTE」と呼ばれる800MHz帯に注力している点が挙げられる。
KDDIは800MHz・1.5GHz・2GHz帯という3つの周波数帯をLTEネットワークに利用しており、800MHz帯をメインにエリア展開している(800MHz帯を利用できるのは現時点でAndroid端末のみ)。同周波数帯の下り最大75Mbps対応エリアの実人口カバー率は2013年5月末時点で99%。ドコモも800MHz帯でLTEサービスを開始しているが、、2GHz帯を主力として展開してきた。今回、3つの調査項目でauのAndroid端末がトップとなった要因としては、800MHz帯の強み(=エリアが広いこと)がLTE比率を押し上げ、また、LTEの強み(=高速なこと)が下り/上り速度上昇につながった、要はKDDIの「プラチナLTE」が勝利の要因ではないかと考えられる。各社のLTEに利用する周波数帯や「プラチナLTE」ついては、マイナビニュースの別稿で詳しく紹介しているので、こちらもあわせて一読いただきたい。
近日中の発表が噂される新iPhone。au版の新iPhoneが800MHz帯のLTE通信に対応するのか、ドコモがついに販売を開始するかなど話題は絶えない。今回の調査結果を踏まえると、au版の新iPhoneが800MHz帯に対応した場合、LTE比率の向上や、下り/上り速度の上昇に寄与するのではないか、と推測される。今後も各社のスマートフォン、LTE展開について注目したい。