今、ちまたを騒がせている"エクストリーム出社"という言葉を聞いたことがあるだろうか。日本エクストリーム出社協会のサイトによると、「早朝から観光、海水浴、登山などのアクティビティをこなしたのち、定刻までに出社をするエクストリームスポーツ」だという。同協会を運営するあまやんさん、しーなねこさんはこれまで出社前に「海水浴」「箱根湯本で温泉」「高尾山登山」などのアクティビティをキメているという。
これは毎日のワークライフバランスを考える上で新しい視点になるかもしれない…ということであまやんさん、しーなねこさんのエクストリーム出社に同行し、話を伺ってみた。
5時20分開店のパン屋さんを目指す
8月29日5:03、亀戸駅に集合。
意外にも、駅は人が行き交っている。集合場所に現れたのはスーツ姿のしーなねこさん。今日は西大島で早朝からやっているパン屋で朝食をとり、東京の河川をカヌーで巡った後に出社…というなかなか過酷な予定だ。このパン屋は5時20分に開店、7時半には売り切れてしまうことも多いそう。
--どうしてこの"エクストリーム出社"を始めたんですか?
しーなねこさん「もともとあまやんさんとは"リアル桃鉄"というイベントを一緒にやっていたんです。それで2人で飲んでいるときに、出社前に海水浴に行きたいねという話になりやってみました。一時期あまやんさんが会社に行きたくなくて、出社前に街をうろうろしていたという話を元に…」
--トラウマから生まれたエクストリーム出社だったんですね…。"朝活"とは違うんですか?
しーなねこさん「朝活だとやっぱり、仕事のためになることをすると思うんですが、あくまで"出社前に遊ぶ"ことを主眼においています」
--今度、大会をするそうですが。
しーなねこさん「9月2日に、エクストリーム出社大会を予定しています。それぞれがエクストリーム出社をキメ、Twitterの投稿をまとめてもらいます。最優秀出社ニストには賞金5万円が贈られます」
--大会を主催して、スポンサーまでつけてしまうとは。
しーなねこさん「リアル桃鉄で培ったノウハウがあったので、良かったですね」
まさかの出会い
5:40、パン屋さん着。
聞けば、現在問い合わせが殺到しており、この週は毎日取材に対応しているとのこと。ラジオ出演も数本こなしているそうで、少しお疲れ気味だ。そんな中、30分ほど歩いて件のパン屋に到着すると、シャッターが降りていた。いやな予感がする。
しーなねこさん「…貼り紙がありますね」
貼り紙には「毎週木曜、日曜は定休日です」との文字があった。ネットで調べた定休日と違うことにぼうぜんとする。店の前で合流したあまやんさんも絶句。誰もが出鼻をくじかれた…と思ったとき、ミラクルが起きた。
しーなねこさん「あまやんさん、カマキリついてませんか?」
あまやんさん「えっ…!?」
なんと、あまやんさんの肩にカマキリがくっついていた。どこから来たのかはわからないが、合流するまでの間、まるでブローチのようにカマキリをつけていたこととなる。大都会東京の朝、あまやんさんの肩についていたカマキリに夏の残り香を感じ、落胆ムードだったその場に笑顔が戻った。
ふだん陸から見る東京を、水路から
6:15 大島小松川公園着。
今回お世話になったのは「Outdoor Sports Club ZAC」の深澤さん。こちらの「TOKYOカヌーツアー」では自分たちで漕(こ)いだカヌーで、水路からスカイツリーを見ることができるという。
簡単に講習を受けると、カヌーに乗りこむ2人。初めての経験ということで、おぼつかない手つきながらも、息の良さを見せて進み始める。優雅な見た目とは違い全身を動かす、予想以上にハードな体験だ。まさにエクストリーム。
進んでいくと、ひときわ高くそびえるスカイツリーが見え始めた。川にツリーの姿が映りこむので、「逆さツリー」を鑑賞するにも絶好の場所。総武線や東武亀戸線を橋の下から見ることができるので、鉄道好きにもおすすめかもしれない。最近の雷雨で川が汚れてしまったと言うが、下が透けて見えるところもあり、30cmほどの魚がカヌーの横を悠々と追い越していった。
遊びと仕事、しっかり切り替えて出社
8:10、カヌー終了。
2時間弱のカヌー体験を終えて、陸路に戻ってくる。慣れない筋肉を使ったので、全身がガタガタだ。
--今回のエクストリーム出社はいかがでしたか?
あまやんさん「いやー、ガチでしたね…後半、いつも冷静なしーなさんが『ううううう』とうなり声をあげながら漕いでいました。初めて見ました」
しーなねこさん「眠っていた野性が目覚めてしまいました。あまやんさんが重すぎるんですよ…」
あまやんさん「スピード出し始めると止まらなかったですもんね…。でも何か一心不乱に漕いでいると、目の前の心配ごととか、すべてなくなるようでした。面白かったですね」
東大島駅に着くと、先ほどの非日常感は一気に消えて通勤モードに切り替わった。そう、会社に定刻で着くまでがエクストリーム出社。たとえ一仕事終えた感におそわれビールを飲みたくなっても、これから出社なのだから…と理性が働く。しっかりと区切りをつけて遊び、頭を切り替えて勤務につくことができる。頭も体も起きているので、ギリギリに起きて会社に行くよりもスムーズに業務に入れる。これは、新しいワークスタイルかもしれない。
「全国一斉エクストリーム出社大会」は9月2日開催。詳しい内容は日本エクストリーム出社協会の特設ページを参照のこと。