ラッピングコーディネーター・熊谷洋子氏

美しいラッピングには人を感動させる不思議な力があるもの。例えばプレゼント品やギフト品に心をこめた手作りのラッピングは、贈る人の気持ちを贈られる人の心に温かく伝えてくれます。そこで、「プレゼントにひと工夫したいけれど不器用だからできない」そんな風に思っている人でもできるラッピング術を、ラッピングコーディネーターの熊谷洋子さんに伝授してもらいました。

贈る品に命を吹き込む。それがラッピングの一番のだいご味であり魅力です

――熊谷さんは生活の場でどんなふうにラッピングを楽しまれているのでしょう?

「息子が友達やガールフレンドにプレゼントを贈るときとか、家族からよく『ラッピングして』って頼まれますね。贈る相手はどんな人なのか、誕生日なのか、バレンタインのお返しなのかなど、シチュエーションに合ったラッピングをしてあげて喜ばれています。

インテリア感覚でラッピングを楽しむことも多いよう。玄関飾りを季節感のあるアーティフィシャルフラワーや涼しげなリボンで飾ったり、ホームパーティの折にワインボトルをおしゃれなペーパーで包んでみたり、ラッピングの技術って生活の中にいろいろと応用できるんですよ」

――でも、難しそうですよね……。

「どんな技術でもそうでしょうが、基本を習得しないと満足のいくラッピングは難しいですね。でも、私だって最初は『できるのかしら』って不安だったものです。デパートの店員さんが包装する手順を見て、デパート包みという包み方を覚えようとしたのですが、うまくできなかったくらいです」

――デパート包みですか?

「ラッピングの基本となる包み方には、合わせ包み、斜め包み、ふろしき包みの3つがあります。そのうちの斜め包みがデパート包みとも言われ、私が挑戦してできなかった包み方です。祝儀、不祝儀の区別を包み方でつけられるフォーマルな包み方です。

合わせ包みはキャラメル包みとも言いまして、一番簡単な包み方ですね。ふろしき包みというのは、ふろしきと同じように前後左右から包み上げる方法で、ケーキとかひっくり返すことのできない物を包むのに向いています」

――その3つの基本の包み方を教えてもらうことはできますか?

「言葉だけで説明するのは難しいですね。図や写真があっても簡単ではありません。これらはやはり、誰かに教わって練習をする必要があるかと思います」

――では、不器用な人でも簡単にできる、そんなラッピングってありませんか?

「例えばクラフト封筒やマチのある袋などを利用してラッピングするとかはどうでしょう。封筒の場合は、左右の折れ線部分をつまむように持ち、三角形を作ります。イメージは三角形牛乳の形です。中に品物を入れ、三角形を作った部分以外の残りの封筒は折り曲げてシールなどを貼れば完成です。

袋の場合は、まずは上部を折り曲げます。その曲げ口を半分に折ったレースペーパーで隠すようにホッチキス止めします。これだけでかわいらしいラッピングに変身します。また、折り曲げた上部に穴あけパンチで2カ所の穴を開け、リボンを通したりメッセージカードをぶら下げたりしても素敵ですよ。

お花を差し上げるときのフラワーラッピングなら、今流行の英字新聞などを利用して花全体を包み込むだけで、随分おしゃれになると思います。ポイントは、花の周囲に若干の余裕を持たせること。

最近では、ホームセンターや100均ショップ、インターネットなどで、様々なラッピング用品や材料を求めることができますし、レースペーパーやペーパーナプキン、便箋など身の回りの品も工夫次第で素敵なラッピング材料になります」

――どんな方がラッピングコーディネーターを目指されているのですか?

「まずは、ラッピングに携わるお仕事をされている方ですね。デパートの店員さんや量販店にお勤めの方、書店やネットショップの経営者、スイーツ店の店員さんなど様々です。それから趣味という以上に、何か生きがいを見つけたいという主婦の方、カルチャーセンターの講師や自宅教室の開講を目指されている方もおります。

それぞれ習得したい技術に合わせて、ギフトラッピング、スイーツラッピング、フラワーラッピング、和風ラッピングと4つのコーディネーターのジャンルがあります。

私自身は、共通の趣味を持つ友人ができたらいいな~なんて簡単な思いで始めたのですが、素敵な講師の方に出会い、すっかりのめり込む形になりました。コーディネーター資格を取得後、指導者養成クラスを受講して講師のアシスタントに、そして講師になり、チーフに。というのがおおよその道筋です」

――もはや芸術という感じの、複雑なラッピング術もあるのですか?

「オブジェのようなラッピングを依頼されることもありますが、それは展示スペース用のディスプレイであったり、雑誌、テレビ向けの特別なものですね。テクニックとセンスが必要になります。

でもラッピングの原点は、商品に合った紙選びと包みのテクニック、そして的確なリボン選びだと思います。リボンを選び、カット方法を考え、素敵に結んでいくことでラッピングした品に命が吹き込まれ、贈られた方に感動を与えることができます。それがラッピングの一番のだいご味ですね」

profile
熊谷洋子(くまがやようこ)
2002年にラッピング協会「ギフトラッピング・コーディネーター」資格及び指導者養成クラス修得後、ラッピング協会講師を務める。また、西武そごう、高島屋など大手デパートの社員教育研修講師やラッピングステーションを担当、さらに朝日カルチャースクール、産経学園、読売日本文化センターなどカルチャースクールのラッピング担当講師を務める。その後、ラッピング協会のチーフコーディネーターとして在籍中。「ラッピング・マニュアル」「ラッピング・エレガンス」「スイーツラッピング・マニュアル」など書籍の企画・執筆も多数。