米Amazon.comの電子書籍リーダー「Kindle」の開発部隊が衛星通信会社のGlobalstarと共同で無線ネットワークの運用テストを行っていたことが報告されている。 詳細は不明ながら、Globalstarが持つ周波数帯域を使って地上アンテナ経由でのデータ通信を行っていたものとみられる。これは、将来的に同社のデバイスとオンラインサイトを使った新たなサービス提供の布石という意見もある。
同件は米Bloombergが8月23日(現地時間)に報じている。関係者の話として、Amazon.comは米カリフォルニア州クパチーノにあるLab126の研究開発部門において、Globalstarの持つ周波数を使った無線通信のトライアルを行っていたという。現在もテストが継続されているかは不明だが、同社の無線ネットワークを使った何らかのサービス実験が行われていたものとみられる。 Globalstarは通信衛星による音声通話/データ通信サービスをアフリカの一部を除く世界中の多くの地域に提供している衛星通信会社だが、同社の持つ周波数帯域の80%を衛星通信ではなく地上アンテナ設備経由でのネットワーク利用に転用したい意向を持っており、昨年2012年末に米連邦通信委員会(FCC)に対してその旨の申請を行っている。現在はまだ裁定待ちの段階だが、もしいったん認可が下りれば、より多くのユーザーをターゲットにした高速通信ネットワークシステムサービスを提供することになるとみられる。
Amazon.com側がどのような意図でGlobalstarのネットワーク上でのテストを行ったのかは不明だが、その鍵の1つはテストを行ったLab126がKindle開発部隊だという点だ。同社では初代Kindleの時代からWhispernetという仕組みを採用しており、3Gネットワークを介したコンテンツ配信やデータ同期、機能制限付きでのインターネット接続サービスを提供している。Whispernetの特徴は3Gネットワーク利用料をユーザーが負担する必要がない点であり、配信コンテンツの容量が少ない一方でユーザーにはこのうえない利便性が提供できるというメリットがあった。Whispernetの無料維持はその後何度かハードルを迎え、ネットワーク事業者も当初のSprintからAT&Tへと移るなど変節を経て、3G機能を搭載しないKindle Fire Wi-Fi版のような製品も登場してきているが、いまだKindleの大きな特徴の1つになっているといえる。もしGlobalstarの回線を借り受ける形で高速ネットワーク対応版Whispernetを準備できれば、より大容量コンテンツの配信にも対応し、Amazon.comにとって新たなビジネスチャンスとなるかもしれない。
(記事提供: AndroWire編集部)