自分で作る「Maker Party」
Mozilla Japanは、Webの読み書き、コーディングを体験するワークショップを開催した。Mozillaが主催するプロジェクトはさまざまあるが、たんにWebを使うだけでなくWebを活用し創造できるようになるためのプロジェクトとして「Webmaker」がある。今回のワークショップ「Maker Party」もその一環として行われた。今年は、8月4日から開催され、東京のMozilla Japanのオフィス以外にも大阪や横浜で開催される。初心者でも扱いやすいツールを使って動画を作成し、Webページを作るものだ。ワークショップでは、Mozillaのスタッフや学生ボランティアによるサポートも行われ、タイピングさえできれば、参加可能である。このワークショップについて、まずはMozilla Japan代表理事の瀧田佐登子氏にお話しをうかがった。
「Webmakerをテーマにしたワークショップを開催して2年になります。これまではWebを使うだけだった人も、最近では簡単に情報を発信するようになってきました。SNSもそうですが、いろいろな人々が Webでの創作活動や情報発信を始めています。ならば、Webのリテラシーや仕組みもきちんと教えてあげなければならないと考えた次第です。つまり、すべての人々がメーカー(Maker)になっていくと、Mozillaでは考えています。我々はブラウザを作るだけでなく、そうした取り組みも行っています。去年は、Summer Code Partyと題し、中高生の子供たちを対象に行いましたが、"来る者は拒まず"のポリシーでしたので、中高生以外にも80歳近い高齢の方や小学生といった多くの方々に参加していただきました。そこで今年は、すべての方を対象にしました。このように幅広い年齢層が集まるのは、日本の特色かもしれません」
手軽にクリエイトできるツール「Popcorn Maker」と「Thimble」
では、実際の流れに沿って、その内容を紹介しよう。まずは、動画編集を行うためのツールが、Popcorn Makerである(図2)。
ブラウザ上で動作する動画編集ツールである。Popcorn Makerの特徴を一言でいえば、リミックスである。Web上の動画や音声データを使い、簡単にオリジナルの動画を作成できる。動画のリンク先のURLを入力すると、右下の[MEDIA GALLERY]に表示され、ダブルクリックで、貼り付けされる。左下にレイヤーが作成され、動画以外にも音声データや画像、文字などを張り込んでしていく。こうして作成した動画を保存するには、Mozilla Personaアカウントを使う。ワークショップでは、メールが使えない人のために共有アカウントも用意されていた。次は、Thimbleを使って、Webページを作成する(図3)。
この段階でHTMLやJavaScriptなどが登場する。ここは、初めての人には少し難しいかもしれない。でも、心配することない。スタッフやボランティアが丁寧にサポートしてくれる(図4)。
HTMLの構文を覚えるというよりも、ここを変えるとこう変化するといったノリで進む。この感覚も大事なのだ。もし、同様の体験をしたいのであれば、こちらにアクセスしてほしい。
ワークショップでの素材やPopcorn MakerやThimbleの使い方の紹介もある(残念ながらサポートはないが)。さらに、スタッフの1人が、ブログでツール使い方などを紹介しているので、参考にしていただきたい(図6)。
図6 Maker Partyのツール紹介 |
完成した作品をみんなで鑑賞
最後に、こうしてできあがったWebページをみんなで鑑賞する(図7)。
まず作者から、どんな作品にしたかったなどが語られる。そして、作品披露である。笑える作品もあれば、時間がなくて100%完成していない作品もあったりと、さまざまだ。今年のワークショップで作成された作品は、MozillaのWebサイトから見ることができる。
なかには、感心するようなものもある。ぜひ、見ていただきたい。個人的には、西宮市を紹介する作品「西宮へ行こう!」は、動画と写真を絶妙なタイミングで組み合わせ、とてもすばらしいと感じた(図9)。
作品を表示し[Rimix]をクリックすると、Popcorn Makerが起動する。どのように構成されているかを確認でき、さらにリミックスが可能なので、自習するならば参考にするとよいだろう。
2年目を迎えて
今年で2回目となるMaker Partyであるが、瀧田氏は次のように語った。「初日から、去年来られたリピーターの方が参加されたりと、とてもよい雰囲気でした。高齢の方が若い学生に教わる、最初はここで教わった大学生が、今度を教える立場として参加する。全員が学ぶという場をMozilla Japanは提供できたと思います。2年目になって、Webに慣れている人が多いと感じました。モノを作ることに慣れている人が多かったです。去年は、手とり足とりでツールの使い方から教えてあげなくてはいけなかったのが、今年は、ある程度の概要を話すだけで取り組んでくれる。さらにはもっと深いところや仕組みについて知りたいという人が増えてきて、びっくりしました。エンジニアではなく一般の人でもWebに興味を持ち、Webの仕組みについて知りたいという人が増えているのでしょう」
筆者の感想であるが、いわゆる"ゆるく"ということが印象に残った。"ゆるく"というとネガティブなイメージを持つかもしれないが、「マイペースでのんびり」とでもいったほうがよいのかもしれない。ワーショップでは達成課題などはない。あくまでも、参加者自身で立てた目標を、自分のペースで取り組んでいく。
完成するにこしたことはないのだが、完成しなくてもまったく問題ない。それ以上に、興味を持ち、続けたいという気持ちを持つことのほうが重要だろう。帰途につく参加者の笑顔から、きっとそうであったと思う。瀧田氏の言葉にもあるように、いつかは教える立場になることもある。この文化も非常に重要だと思える。Mozilla Japanでは、別のプロジェクトとして、オープンを軸としたモノ作りを学び、実践する場としてMozilla Factoryを開催している(図10)。
図10 Mozilla Factoryの各プロジェクト |
Maker Partyは9月15日でイベント期間を終了するが、興味があればこちらのプロジェクトに参加してみてもよい。Mozillaのオープンな活動を経験するのも、きっと得るものがあるだろう(特に、若い方にはおススメしたい)。最後に、瀧田氏のメッセージで終わりたいと思う。
「これからWebは、気がつかないうちに使っていくようなものになると思います。最近、Webやインターネットの世界が広がるにつれて、危険と指摘する人もいます。しかし、Mozilla Japanとしては、どうやってこれからWebの世界をクリエイトしていくのか?現在、Webのユーザーは20億人といわれます。もちろん、ビギナーからエキスパートまで、さまざまなユーザーがいると思います。それらの人々が満足して使えるWebについて考えています。ソフトウェアを先に考えてしまうことが多いですが、今後はリアルとバーチャルの世界は、より接近してくるでしょう。そこで、いろいろなWebとの関わりあい、新しいWebの世界をクリエイトしていきたいと思っています。ここでは、一般ユーザーとエンジニア、そして我々ともっともっと一緒になって考えていきたいです。Webの世界は技術者だけが考えていたのでは、進化していかないと思います。Webは使っているユーザーが変えてきました。これからもユーザーと一緒にモノ作りをしていけたらと思っています」