ペンタブレットの分野で圧倒的なシェアを誇るワコムから、2種類の新製品がリリースされた。ひとつは、タブレット端末用の筆圧検知ペン「Intuos Creative Stylus」。そしてもうひとつは「OSを搭載した液晶タブレット」という全く新しいジャンルのペンタブレット、「Cintiq Companion」である。このたび新製品を実際に試用する機会を頂くことができたので、使い心地や、想定される使用シーンに関する所見などをお届けしたいと思う。

「Cintiq Companion」シリーズ

思い通りの線を実現するスタイラスペン「Intuos Creative Stylus」

「Intuos Creative Stylus」

まずは、「Intuos Creative Stylus」について簡単に説明すると、この製品は第3世代以降のiPadとiPad miniで、2048段階の筆圧検知ありのペン入力を可能にするスタイラスペンだ。ペン先のゴムの弾力がある部分を押しこめば、太い線が描けるようになっている。ペンへの力の入れ具合と描ける線の太さの感覚は、普段PhotoshopとIntuos5でブラシツールを使用した感覚に近いもので、違和感なく思い通りの線を描くことができた。

また、iPad側へはBluetooth4.0で筆圧情報を伝える仕組みとなっているようで、アプリ側の対応が必要となる。対応アプリ情報はIntuos Creative Stylusの記事をご覧いただきたい。iPadで時と場所を選ばず描いたスケッチは、クラウドサービス経由でPCへ転送することが可能なので、イラストを描く方が出先でアイディアを即座に形にするような用途にピッタリだと思う。

Windows8搭載機「Cintiq Companion」利用シーンを想定する

「Cintiq Companion」シリーズは、液晶ペンタブレットにOSを搭載し、プロクリエイターの作業環境を持ち運ぶために開発されたという全く新しいコンセプトの製品だ。この製品によって、一体何が可能になるのか。当日得られた情報を元に、考察してみたいと思う。

まず、「Cintiq Companion」には、Windows8 Proベースの「Cintiq Companion」と、Androidベースの「Cintiq Companion Hybrid」の2種類がある。それぞれどんな性格を持ったデバイスであるかを理解しながら、利用シーンを想定してみよう。

今回はAndroidベースの「Cintiq Companion Hybrid」の実機を検証

まず、「Cintiq Companion」は、どんな製品だろうか。誤解を恐れずズバリ言い切ると、Windows8タブレットに、ハイエンドペン入力が一体となった製品と考えられると思う。Windows8を搭載したタブレットPCを1台持ち運ぶだけで、プロ仕様の高性能ペン入力を活かしたレタッチを、どこでも行うことができる感覚を持った。

タブレットPCのような「Cintiq Companion」シリーズの外観

残念ながら、開発の都合上、Windows8版「Cintiq Companion」の実機にはお目にかかることができなかった。そのため、ツメの部分が未確認であるのが申し訳ないのだが、Photoshopのデスクトップアプリをインストールした「Cintiq Companion」を用意することで、レタッチ作業の自由度を広げることは大いに可能で、未来への可能性を感じるデバイスだと思う。反面、新しいジャンルのデバイスにはつきものの、注意すべき点も少々挙げておきたい。

まず、Windows8版の「Cintiq Companion」は、PC接続して「Cintiq13HDのような液晶タブレットとして使うこと」はできない、ということだ。あくまで、「自宅でも外出先でも変わらぬ環境で作業できるスタンドアローン製品」という方向性となる。そして、実機を見ていないのではっきりと言えない部分はあるが、実機に触ることのできた「Cintiq Companion Hybrid」を見た限りでは、モニターの見え方に若干注意が必要と思えた。モニター表面が、デフォルトで保護シートを貼ったような仕上げとなっていることで、モニター専用機器とは見え方がほんの少々異なる印象だ。

そのため、自宅PCと同一の完璧なモニター表示を求めるというよりは、機動力重視のデバイスと考えたほうがよいかもしれない。これらの条件を踏まえた上で、「タブレットデバイスひとつ持ち歩けば、高性能ペン入力でクリエイティブワークができる」という他のデバイスにないメリットをユーザーがどう評価するか、といったところだと思う。

「Cintiq Companion」シリーズ付属のペン

他に判断の助けとなりそうな情報に言及しておく。「Cintiq Companion Hybrid」を触った限りでは、ペンの入力感は安心のワコムクオリティ。いつも通り素晴らしいものであった。そして、インテルCore i7搭載、8GBのメモリ、SSDで256GBと512GBの2種類というスペックは、使用用途にもよるがモバイルデバイスとしては十分と考えられる。バッテリーの駆動時間が約7時間(スペック上はSurfaceよりは長く、iPadよりは短い)、重さが約1.8kg、というのは賛否が分かれる部分だろうか。外形寸法は375mm×248mm×17mmなので、片手で持って作業する感じのデバイスではない。スタンドが付属していることからも分かる通り、基本キッチリと設置して使用する場合が想定されていると思う。

「Cintiq Companion」シリーズ付属のスタンド