高性能なスマートフォンが普及したことで、いまや写真を撮影するツールの中心はデジタルカメラからスマートフォンへと移行しつつある。同時に、スマートフォンはいつでも持ち歩き、手軽にカメラで撮影できることから、写真を撮る機会が以前より増え、保管する画像データの量が多くなったという人も多いだろう。このように、スマートフォンやタブレットなど、デジタルデバイスの普及によって、個人の扱うデータ量は飛躍的に増大しており、どこにデータを保管するかなどが問題となっている。
増大したデータをどこに保管するかという問題のソリューションとなるのが、個人向けのクラウドサービス「パーソナルクラウド」だ。インターネット上にデータを保管できるパーソナルクラウドは、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、複数の端末から利用して同じデータを扱えるのが特長。1人が複数の端末を使い分けるようになった今日のニーズにマッチしたものであり、さまざまなサービスが登場し、人気を集めている。
生活者の意識・実態に関する調査を行なっているトレンド総研は8月20日、20代から40代の男女500名を対象に実施した「クラウドサービスに関する意識・実態調査」のレポートを発表した。クラウドサービスの利用経験やデータにまつわる悩みについて調査したもので、調査期間は7月3日から5日まで。
調査では、まず現在所有しているデバイスを複数回答で聞いた。結果はノートパソコン(68%)、スマートフォン(60%)、デジタルカメラ(55%)などが上位となり、2台以上のデバイスを所有している人は全体の83%となった。続いて、「クラウド」を用いたサービスの利用経験を聞いたところ、83%が「クラウドの利用経験がある」と回答した。具体的な利用内容としては、「ウェブメール」(81%)、「ファイル共有サービス」(33%)、「パーソナルクラウド」(22%)が挙げられた。また、「クラウドが身近なものになったと思うか?」という質問に対しては、全体の58%が「そう思う」と回答した。20代から40代の8割以上がクラウドを利用しており、クラウドが身近になったと感じている人も約6割と多数を占めていることが明らかになった。
一方で、「クラウドを十分に活用できていると思うか?」という質問に対しては、「そう思う」と回答した人は全体の26%にとどまり、多くの人がまだクラウドを十分に活用できていない実態が明らかになった。また、日常のデータにまつわる悩みを聞いたところ、「端末を機種変更する際にデータの移行が面倒」「端末にデータを多く保存したことで残りの容量が気になる」などの声が寄せられた。トレンド総研では、こうした悩みを解決する上でクラウドは有効な手段であり、「サービスや活用法に関する情報が広がっていくことで、今後ますます一般化していくと予想される」としている。
同レポートでは、トレンドに詳しい商品ジャーナリスト・北村 森氏に、パーソナルクラウドの活用法や最新トレンドについて聞いている。
北村氏は、スマートフォンの普及により、撮影した写真や動画、パソコンから受信したファイルなど、個人で扱うデータの量がここ数年で大きく増えていると指摘。同時に、この状況を背景としてデータの扱いに関するさまざまな問題が生じていると述べ、代表的な3つの問題を紹介している。1つ目は、端末を買い替えたもののデータの移行がスムーズに行かず、古い端末にデータが入りっぱなしというデータの「行き止まり」問題。2つ目は、保管したデータが多すぎて必要なデータを見つけ出せないというデータの「行方不明」問題。3つ目は、端末を紛失・破損してデータを二度と取り出せなくなるというデータの「紛失」問題であるという。
そして、北村氏はこれらの問題を解決するのがパーソナルクラウドであると指摘。パーソナルクラウドにデータを保存する設定や習慣を取り入れることで、スムーズなデータの移行や整理のほか、紛失時のリスクヘッジが可能になるとしている。
また、同レポートは注目のパーソナルクラウドサービスとして、「マイポケット」「au スマートパス」「Evernote」の3つを紹介している。
NTTコミュニケーションズが提供する「マイポケット」は、月額315円で64GBの大容量クラウドが利用できるサービス。写真・動画・文書ファイルなど、さまざまなデータを安全に保管でき、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットでも利用可能。さらに、iPhone、Androidスマートフォン向けに自動バックアップアプリも提供されており、機種やキャリアを変更してもスムーズなデータ移行ができるのが特長。また、アプリを使った写真のデコレーションも可能で、可愛いフレームやスタンプを使って、プリクラ感覚でデコレーションを楽しめるのも魅力。名前・日時・ファイルの種類など、多彩な方法でファイルを検索することもできる。
KDDIが同社のスマートフォン向けに提供している「auスマートパス」では、機能の1つとしてパーソナルクラウドを提供している。月額390円でauスマートパスに加入すれば、50GBの大容量クラウドを利用可能。スマートフォンで撮影した写真や動画を自動バックアップするアプリも提供されている。また、連携するアプリを使って写真のデコレーション・加工ができるほか、写真のネットプリント注文なども行える。
「Evernote」は、スマートフォンでは定番のパーソナルクラウドサービスのアプリだ。写真や動画など個別のファイルのほか、テキストデータを保管することができ、スマートフォンアプリやパソコンのWebブラウザでテキストの閲覧・編集が可能。また、保管したデータは自動でインデックスが作成され、全文検索ができるほか、独自の"タグ"を付けてデータをわかりやすく整理することができる。無料のスタンダード会員の場合、月間にアップロードできる容量は60MBまでと少ないが、月額450円または年額4,000円のプレミアム会員になることで、月間1GBの大容量データのアップロードが可能となる。
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今回のトレンド総研のレポートでは、20代から40代の8割以上がクラウドを利用しており、クラウドが身近になったと感じている人も約6割と多いことが明らかになった。また、スマートフォンの普及により個人が扱うデータの量が増大したことで、さまざまな問題が生じているが、これらの問題はパーソナルクラウドを導入することで解決可能になるという。多種多様なパーソナルクラウドサービスが提供されているが、とりわけスマートフォンで利用する場合は、安心してデータを保管できるか、機種や携帯キャリアを変更しても利用を続けられるかなどが、サービスを選択する際の決め手になるだろう。