iPadからSurface RTへの乗り換えキャンペーンを期間限定で実施し、iPadとSurface RTの比較映像をYouTubeで公開するなど、さらなる販売台数の増加を目指すMicrosoft。その一方で今後のタブレット型コンピューターを利用する場面で欠かせないオンラインストレージサービスに対し、注力しているのは記憶に新しい。

日本マイクロソフトにSkyDrive担当シニアディレクターであるDharmesh Mehta(ダルミッシュ・メタ)氏が来日し、7月末に更新された新SkyDriveの機能に関して説明を行った。データ管理のトレンドはローカルストレージからオンラインストレージに移行しつつあると述べる同氏の発言や、同グループのプログラムマネージャーであるMona Akmal (モナ・アクマル)氏が投稿した記事を中心に、今週のレポートをお送りする。

新たな標準ストレージとなる「SkyDrive.com」

Microsoftが運営するオンラインストレージサービス「SkyDrive」の更新は本誌でも既報のとおり、同社公式ブログの一つ「Inside SkyDrive」の記事で明らかにされた。今年後半リリース予定のWindows 8.1では、SkyDrive.comとの連動機能が標準で組み込まれる予定のため、同社がさらに注力するのは推して知るべしである。

もっともSkyDrive.comはクラウドサービスであり、Windows OSに限らず、iOSやAndroidなど、OSやデバイスと問わずに利用できるのが好ましい。そのため、クライアント機能もさることながらサービス本体であるSkyDrive.comの機能強化を推し進めているのだ。

図01 来日したSkyDrive担当シニアディレクターのDharmesh Mehta氏

SkyDrive.comの機能更新は日本時間で7月末に行われたが、8月6日に本社SkyDriveチームの担当者が来日し、メディア向けに新しいSkyDrive.comの説明を行っている。新機能について詳しく述べたのは、OutlookおよびSkyDriveのプロダクトマネージメント&プロダクトマーケティングを以前から勤めていた、SkyDrive担当シニアディレクターのDharmesh Mehta(ダルミッシュ・メタ)氏(図01)。

同氏は「利用するデバイスがコンピューター1台だった時代は、ファイルをローカルに保存しておけば問題はなかった。しかし、現代のように複数のデバイスを併用するようになると、ローカルではなくクラウドの保存領域を利用することで、デバイスや利用場所による制限から解放される」と述べ、GoogleドライブやDropboxなど各社オンラインストレージサービスがエンドユーザーレベルにまで普及している現状を説明している(図02)。

図02 現在SkyDrive.comが利用可能なデバイスおよびアプリケーション。主要なOSで動作していることが示されている

さらに「オンラインストレージを利用するには、ネットワークアクセス環境が必須。最近では飛行機の中でもネットワークアクセスが可能になったが、すべての場所で利用できるとは限らない。この問題を解決するには、オンラインストレージとローカルストレージの同期が必要だが、スマートフォンなどストレージ容量が乏しいデバイスで利用するのは現実的ではない」と説明。

この解決作がWindows 8.1搭載予定の「Placeholder(プレースホルダー)」だ。以前のレポート記事でも述べたように、オンラインストレージ上に存在するファイルのプロパティとサムネイル情報を持つPlaceholderファイルを、SkyDriveフォルダー(%USERPROFILE%\SkyDrive)に格納。これによりWindows 8.1のエクスプローラーで同フォルダーを参照する際は、高速なサムネイル表示を実現している。

さらに必要に応じて実体をダウンロードし、閲覧や視聴、編集を可能にしている。Mehta氏のデモンストレーションでは、自身のSkyDrive.comは140ギガバイトのデータを保存しているが、ローカルストレージの消費容量は1.29ギガバイト程度に収まっていることを示した。筆者の環境では5.10ギガバイトのファイルをSkyDrive.comにアップロードしているが、Windows 8.1プレビューをインストールしたコンピューターで確認すると、859メガバイトで収まっている(図03~04)。

図03 SkyDriveフォルダーを確認すると、ファイルサイズが括弧で囲まれている。これがメタデータのみを保持した状態となるようだ

図04 同じくSkyDriveフォルダーのプロパティダイアログを確認。メタデータおよびサムネイルだけを保持するため、ストレージ容量が少ないデバイスでも効率的に動作するとMehta氏は述べていた

一方のオフライン環境においては、ファイルやフォルダーのコンテキストメニューに<オフラインで使用する(オンラインでのみ使用する)>が加わり、事前にファイル本体をダウンロードする(およびメタデータのみに戻す)機能が加わった。ファイル単位で個別に管理するのは面倒だが、フォルダーに対して<オンラインでのみ使用する>を選択すれば、サブフォルダーにも適用されるため、この操作でPlaceholder機能によるメタデータのみ戻すことが可能である(図05~07)。

図05 コンテキストメニューに<オフラインで使用する>を用意し、オフライン環境でもSkyDrive.com上のファイルを使用可能にしている

図06 コンテキストメニューから<オフラインで使用する>を選択すれば、ファイルの実体がダウンロードされ、オフライン環境でも利用可能になる

図07 ファイルの実体をSkyDriveフォルダーにダウンロードした場合、エクスプローラーの下部に「オフラインで利用可能」のメッセージが現れる

個人的には「ディスククリーンアップ」を拡張し、ダウンロードしたデータをひとまとめにクリアできると便利だと思うが、そのような機能は現時点で用意されていない。このような仕様変更が加わったためか、デスクトップアプリ版SkyDriveアプリに用意されていた"必要なものだけを同期"する設定は、Windows 8.1プレビューの「PC設定」で見つけることはできなかった(図08)。

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図08 デスクトップアプリ版SkyDriveアプリをインストールしたWindows 8。同期フォルダーを選択できるが、同様の設定をWindows 8.1プレビューでは確認できなかった