映画『少年H』の初日舞台あいさつが10日、東京・TOHOシネマズ六本木で行われ、キャストの水谷豊、伊藤蘭、吉岡竜輝、花田優里音と降旗康男監督が出席した。
第35回モスクワ国際映画祭のGALA部門で特別作品賞を受賞した同作は、妹尾河童の自伝的同名小説(講談社刊)を実写化した作品。昭和初期、神戸で洋服の仕立屋を営み幸せに暮らす妹尾一家。やがて戦争が始まり、時代の激流の渦に巻き込まれながらも、家族は強くたくましく生き抜いていく――というストーリーで、映画は全国公開中。
少年Hの父親を演じた水谷は、「みなさんの思い出や記憶になってもらえたら」とあいさつし、母親を演じた伊藤も「戦争がテーマなので、この時期に観て頂くのは何かの意味があると思う」とアピール。約30年ぶりの共演で夫婦役を演じ、宣伝キャンペーンも2人揃って全国各地に赴いた水谷&伊藤夫妻は、総移動距離が地球半周分にあたる約21,855kmと発表され、水谷が「こんなことが無ければ一緒にどこかに行くことも無いしね」と話すと、伊藤も「普段はなかなか一緒に旅行も行けないから」と夫婦でのキャンペーンを楽しんだ様子だった。
一方、同作をきっかけに曽祖父と曾祖母に戦争の話を聞いたという、少年Hの妹・好子役の花田は「みなさんも昔はこんな戦争があったんだということをお話してくれたらうれしいです」としっかりした口調で語り、水谷らとの共演に「本当の家族みたいに仲良くて楽しかった。もっと一緒にいたい」と寂しげ。少年H役の吉岡からも「初日を迎えてうれしいけど、これで水谷さんたちとご一緒することが無くなるんだと思うと寂しい」と打ち明けられると、水谷&伊藤夫妻はそんな子どもたちに目を細めていた。
また、イベントでは水谷が「妹尾さんは4回も映画化を断ってたのに、今回は許可してくれた。感謝しております」と客席にいた原作者の妹尾を舞台上に呼び込むサプライズも。妹尾は「原作者冥利に尽きます。素晴らしい映画をありがとう」と感激し、「完全にあの時代を作ってくれた。81歳になった妹の好子も『お父ちゃん、お母ちゃんに会えた。話し方も一緒!』って言ってました」と同作の出来に太鼓判。続けて「お父ちゃんと同じ寸法だった。(身長が)それ以上大きかったらダメだった」と言われた水谷は、「この時ほど、小さく生まれて良かったと感謝したことはありません」と応えて観客の笑いを誘っていた。