つやつや輝くうどんの形状や喉越しのことを、「まるでシルクのよう」と表現することもある。しかし、実際にうどんの中に本物のシルクが入っていたとしたら? そんなウソのようなホントの話が京都にあるらしい……。
シルクの街と東京農大の利害が一致
そんな話題の「シルクうどん」が食べられるのは、京都府与謝野町にあるその名も道の駅「シルクのまち かや」。施設内の喫茶店「加恋(かれん)」の人気メニューだ。同駅の支配人である小田勝典さんに話を聞くと、「5、6年くらい前から出している人気メニューですよ」とのコメントが返ってきた。
与謝野町のある丹後半島は、1200年の歴史を誇る絹織物の生産地。「丹後ちりめん」のブランド名で、高級和装の世界に君臨している。しかし、その製造過程でできた絹の残糸が、産業廃棄物として悩みの種だったのだという。
ところは変わって東京農業大学。ここで取り組まれていたのが、「シルクを食用にできないか」という研究だった。絹の成分には、タンパク質とアミノ酸が含まれていることが分かっている。つまり、健康食品としての素質満点の逸材だったのだ。
しかし何といってもあの絹である。白い芋虫姿を想像すると、ちょっと食べることをためらってしまう。ならば、栄養成分だけを取り出せばいいのだが、その研究には大量のシルクが必要だった。ここにきて東京農大と絹の残糸に悩む丹後シルクの利害が一致。「是非これを使ってほしい」と、残糸を研究に提供したのだった。
アミノ酸たっぷりのシルクを麺に混ぜる
完成したのがシルクから抽出した乳白色の「シルクパウダー」。優れたアミノ構造を持っていて、グリシンやアラニンなどのアミノ酸の比率が高いことが特徴だ。「この成分が肝臓にいいと言われているんですよ」と小田さん。
健康食用としての用途はもちろん保湿、抗酸化、紫外線吸収機能もあるため、化粧品や入浴剤としても活用できる。しかも、拒否反応は100%起きないという。かなりの有望な「夢の粉」と言えるだろう。もちろん、国産品という安心感もある。
こういった経緯を踏まえて、お膝元の与謝野町で湧き上がったのが「丹後ちりめん100%のシルクパウダーでまちおこし」だった。このパウダーを駆使して、ご当地グルメを作るのは自然な流れだったというわけである。
しかしこのシルクパウダー、健康にはいいがアミノ酸成分なので、そのまま食べるとしょう油とコンブを足して甘くしたような味。うま味成分だけを食べているような感覚なので、おいしさを求めるのであれば一工夫が必要となる。
そこで、選ばれたのがうどんである。パウダーのため加工しやすく、麺に練り込むことも容易だ。与謝野町は今ではうどんや化粧品など、様々なシルクパウダー商品を開発して全国に発信中している。ネット通販でも手軽に購入できるので興味のある方は一度見てみてほしい。
文字通り、シルクのようなつややかさ
道の駅「シルクのまち かや」で食べられるシルクうどんは、お値段も400円とリーズナブル。シルク入り生うどんは、ほのかなアミノ酸の味がしてコンブだしのきいた関西風のつゆと実にバランスがいい。
「うどんそのものの味を楽しんでほしい」とトッピングはハイカラ(天かす)やネギ、かまぼことシンプル。乾麺ではなく、地元の製麺屋に特注した生麺だからツヤツヤでつるんとした食感が楽しめる。
ちなみに、シルクうどんを食べられる飲食店はココだけだそう。貴重な存在である。道の駅では他にも抹茶や黒糖味などのシルクあめ(380円)も人気商品だとか。「今後もいろいろなうどんにチャレンジしていきたいですね」と小田さん。美容と健康が気になる人は要チェックだ。
●information
道の駅「シルクのまち かや」
京都府与謝郡与謝野町字滝98