8月2日、日本テレビの番組『金曜ロードショー』で放送されたスタジオジブリのアニメーション作品『天空の城ラピュタ』に合わせてドワンゴがniconico内に「バルス祭りニコニコ会場」特設サイトを設置。Twitterでの「バルス」ツイートをユーザーに呼びかけた。

日本テレビプロデューサーの奥田誠治氏(左)とスタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏

当日はニコニコ生放送で実況番組を放送し、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏、日本テレビプロデューサーの奥田誠治氏、ドワンゴ会長で現在はジブリのプロデューサー見習いも務める川上量生氏らが出演。また番組後半には、シータを演じたよこざわけい子が電話出演し、収録時のエピソードなどを語った。

ドワンゴ会長・川上量生氏

まずは今回の「バルス祭り」の趣旨と、なぜニコニコで行われるのかという背景について説明しておく必要があるだろう。

『天空の城ラピュタ』はスタジオジブリ制作の宮崎駿監督作品。1986年に公開され、現在でも根強い人気を誇る傑作である。物語自体の面白さに加えて、ムスカなどネタとして愛されるキャラクターがいること、そして「バルス」をはじめとする名言が多いことから、ネットユーザーからも高い支持を受けている。

金曜ロードショーなどで放送されるたびに高い視聴率を取る『天空の城ラピュタ』だが、中でも物語終盤に登場する決め台詞「バルス」での盛り上がりは特別だ。2011年12月に放送された前回では、日本中のネットユーザーが2ちゃんねるやTwitter、ニコニコ生放送に一斉に「バルス」を書き込んだ結果、2ちゃんねる実況サーバーとニコニコ生放送のコメントサーバがダウンするという事態にまで発展した。大勢の人がリアルタイムに熱狂を共有するという意味では、『天空の城ラピュタ』における「バルス」はたしかに"お祭り"なのである。

番組スタート時からニコ生のコメントは大盛り上がりに

さて、そうなると今回のドワンゴの「バルス祭り」は、「ニコニコ生放送VS天空の城ラピュタ」という構図で行われると思われがちだが、実はそうではない。勝負するのはTwitterと天空の城ラピュタだ。今回、ニコニコ生放送はあくまでそれを観戦する場としてドワンゴが用意した番組なのだ。

なぜドワンゴが……という点については、単純にニコ動がこうしたお祭り騒ぎに乗るのが好きな体質ということもあるが(それが最大の理由だろう)、他にもドワンゴ会長・川上氏がスタジオジブリの見習いプロデューサーを務めており、ジブリとの関係が深いという背景もある。また、金曜ロードショーを放送する日本テレビについては、来年の「ニコニコ超会議3」のスポンサーになることが決定しており、こちらもドワンゴとは良好な関係を築いている。

天空の城ラピュタを見た回数は? というアンケートでは過半数が「数えきれない」と回答した

名言が飛び出すたびにコメントが盛り上がる

しかしこれ、冷静に考えてみるとわりとシャレにならない企画である。「あのシーンでバルスと書き込みましょう!」と呼びかけるということは、つまり「みんなで一斉にTwitterにアクセスしてサーバをダウンさせてやろうぜ」と呼びかけているということ。それってサイバー攻撃なんじゃ……と思わないでもない。

ただし、今回の企画については、Twitter社が放送日当日に「皆さんにTwitterを使って楽しんでほしい。Twitterのサーバーが耐えてくれるのを願っております」という公式コメントを発表しており、一応の公認は得た形といえそうだ。

ということで放送日当日、ドワンゴ本社の一室にスタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏、日本テレビプロデューサーの奥田誠治氏、ドワンゴ会長で現在はジブリのプロデューサー見習いも務める川上量生氏が集まり、ニコニコ生放送で「天空の城ラピュタ」を実況しながら"バルス祭り"の様子を見守った。

もちろんテレビ放送をそのまま流すわけではなく、あくまでニコ生で放送するのは"テレビを見ているゲストの様子"のみである。

「怒られちゃうよ(笑)」と言いながら、まだ公開前の高畑勲監督作品『かぐや姫』のPVを冒頭だけ流す鈴木プロデューサー

名物「ラピュタパン」も実際に登場

番組は、用意されたTVモニタで金曜ロードショーを見ながら、ゲストがジブリにまつわるエピソードや思い出話などを語るというリラックスしたスタイルで進行。特に鈴木プロデューサーからは、「ラピュタのロゴはゴジラをオマージュしたもの」「最初のスタッフロールで登場する飛行機は、本編に出すつもりだったけど出せなかったものを詰め込んだ」「宮崎監督はすぐに(主人公に)ヒロインを触らせる。そういう状況を作るのがうまい」「ドーラのモデルは宮さんの母親」「宮崎監督はポムじいさんに憧れている」といった数々の逸話が飛び出し、視聴者の興味を引いていた。

番組後半では、ヒロインのシータを演じた声優のよこざわけい子が電話で出演した。今回のバルス祭りについて聞かれたよこざわけい子は、「(バルス祭りのことは)知っていました。がんばって(バルスと)言おうと思います!」とコメント。また、作品の感想については「何十年も前なので、録り直したい(笑)。当時はキャスティングが決まってすぐ、宮崎監督に『声優の声は嫌いだから』と言われて、ナチュラルに演技できるようがんばりました」と収録当時を振り返った。

そして映画が始まってから約2時間20分、とうとうその時がやってきた。パズーとシータが手を重ね合わせ、声をそろえて「バルス」と叫ぶ場面である。ニコニコ生放送ではカウントダウンが始まり、ゼロになった瞬間大量の「バルス」コメントが書き込まれた。

バルスで画面が埋まる

"職人"と呼ばれるユーザーがコメントでイラストを描く

同時にTwitterもバルスツイートで溢れかえり、瞬間最多ツイート数は14万3,199/秒を記録。無事サーバダウンもなく、これまで世界一だった、2013年1月1日の「あけおめ」ツイート数(3万3,388/秒)を大幅に塗り替えて記録を更新した。

テレビを見ながらネットで実況する楽しみ方は、2ちゃんねるやTwitterではすでに定番となっている。今後はニコ生での公式実況番組も含め、"ネットの仲間と一緒にテレビを見る"スタイルがさらに定着しそうだ。